認知症|MCI (軽度認知障害) の研究

 

アメリカのメイヨー・クリニックで行われた研究では、70歳以上の534名を約5年間追跡調査したところ、153名(全体の28.7%)がMCIを経て認知症を発症するとの結果が得られました。
その5年間の追跡結果では、MCIと診断された人の37.6%は健康な認知状態(CN:Cognitive Normal)に戻り、そのうち65%は再びMCIとなりその状態を保つか、または、いずれかの段階で認知症に進行するとも報告されています。

 

さらに、認知症になるリスク因子を細分化・分析したところ、健康な認知状態(CN)よりもMCI状態である方が認知症の発症リスクは高まるという、これまで他研究でも示唆されてきたことと同様の結果が得られており、今後も依然として、臨床現場でMCIが重要な指標となるということも同時に言及されています。

 

 

一方で、やはり注目したいのは、認知症を発症せずにMCI状態を保ち続ける人々、またCN状態を保ち続けられる人々も、一部存在するということ。本研究においてはこれらの人々の追跡状況は分かりませんが、今後、対象者の追跡調査・解析がさらに進められ、介護現場におけるレクレーションやプログラム、個人向けの認知症予防プログラムなどへも、こうした研究成果が活用されていくことが大いに期待されます。

 

さらに、この研究の考察では、MCIのサブタイプ(*)によっても、認知症発症リスクが異なってくる可能性についても言及されており、今後臨床現場でのMCIのより細かな状態把握や、MCI-screenの充実と一般への普及、また、認知機能の細かな状態に合わせたプログラムの蓄積なども同時に進められることによって、認知症の早期発見や発症リスクのさらなる低減につながっていくのではと感じました。

 

MCI-screenについては、日本でも簡単に行える「あたまの健康チェック®>」などもあり、個人でも受けられますので、気になる方は是非一度、受けてみてはいかがでしょうか。 今回は、引き続き注目していきたい「MCI(軽度認知障害)」の研究についてお伝えしました。

 

* 現在よく用いられているMCIの基準は、Petersenらによって定義され、4つのタイプに分類されています。

 

 

認知症|治療薬のいま

 

認知症の“根本”治療薬は未だ確立されていないものの、現在多くの研究者が

 

  • タウ蓄積に対する治療薬
  • 発症前の抗アミロイドβ治療薬

 

など、発症機序の上流にアプローチし根本治療を目指す薬物開発を進めています。

 

その他、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなど)やNMDA受容体遮断薬(メマンチンなど)など、認知症発症機序の下流へのアプローチ、つまり、認知症の進行を遅延したり、症状を抑制したりなどの効果が期待される薬物もあり、現在日本でも認知症の治療薬として使用が承認されています

 

もちろん、認知症の治療は薬物治療にのみに依存するものではありませんし、治療薬の副作用が出る人もいるため、一概にはいえませんが、これらが認知症の中核症状の進行抑制や、行動・心理症状(BPSD)の改善につながるケースもあるそうです。

 

 

 

 

さまざまな治療薬が治験中、成功例が待たれるところですが、認知症の根本治療薬が未だない中、今わたしたちができる対策としては、認知症の兆候をいかに早期の段階で発見し、症状の改善、あるいは進行の遅延につなげられるかが、非常に重要なポイントになってきます。

 

中には、治療可能な認知症(頭蓋内疾患(正常圧水頭症、硬膜下血腫など)、身体疾患(低・高血糖、肝性脳症、尿毒症など)、欠乏性疾患(ビタミン欠乏症など)、内分泌性疾患(甲状腺機能低下症など)、薬物、感染、その他(うつなど))もあるため、自分自身の変化やご家族の変化など、少しでも気になったら、かかりつけ医・専門医などを受診し、「早期受診・早期発見」を心掛けていくことが大切ですね。

 

 

 

 

シリーズ「介護のプロが語る認知症ケア」第3回 ~認知症ケアにまつわるエピソード~

 

シリーズ「介護のプロが語る認知症ケア」第2回では、認知症ケア推進課ができたきっかけについてお伝えしました。
今回は、認知症ケア推進課の中村さんが経験された、印象的なエピソードをご紹介したいと思います。

 

【認知症ケアについて、印象的なエピソードはありますか?】

 

認知症や介護が必要になった状態でも住み慣れた地域で生活し続けるためには、家族の存在が大きいと考えさせられたエピソードがあります。

 

あるご家族の言葉が、改めて「家族支援」を考えるきっかけになりました。

 

デイサービスで家族会を開催した際、セントケア・グループで行っているケア手法を「ご自宅でも一緒に取り組みましょう」と紹介しました。
そのとき参加されたご家族は、一様に難しい顔をされました。
理由を尋ねてみると、「今はテレビでもインターネットでもいろいろな情報が得られる。頭では『こうしなきゃいけない』ということは分かっているが、実際に目の前で家族がそうなったら、イライラしてしまい上手く接することが出来ない」とのことでした。

 

家族会では、ご参加いただいたご家族同士で介護のあるある話をされ、最後には「毎日大変だけど、この家族会があるから、また明日笑って頑張ろうって思えるんだ」とおっしゃっていただきました。ご家族の想いを伺い、お客様だけでなく、ご家族にとって何が必要かを改めて考えさせられました。

 

 

 

また、「こういう経験をしているのは自分一人じゃなかった」「こんなに眠れていないのは自分だけじゃないのね」と、泣きながら話されたご家族がいらっしゃいました。「家族同士の繋がりが、1ヶ月に1回や、定期的にあることによって心が楽になる。これが家族のケアだよ」と参加されていた方が言ってくださいました。

このとき、「お客様のケアだけが私たち介護職の仕事じゃない。お客様が住み慣れた地域で生活を続けるためには、ご家族の力が必要!!もっとご家族の想いに耳を傾け、ご家族ケアを学んでいきたい」という想いに至りました。

 

今回、中村さんのお話を通して、介護や認知症ケアの中でのご家族ケアの大切さ、そして、中村さんはじめ、認知症推進課の皆さんのケアへの想いがよく伝わってきました。お一人お一人の介護度や症状も異なる中、それぞれの悩みを抱えていらっしゃるご家族同士の「つながり」、また、少しでも共有できる「場」があるということも、ご家族にとって心強く、力になるのだと、改めて気付かされました。

 

次回のシリーズ第4回では、そんな認知症ケア推進課のこれからの展望や想いについて、さらにお話を伺いたいと思います。

 

家族をつなぎ、見守る「コミュニケーションロボット」

 

離れて暮らすご家族がどう過ごしているか、心配ですよね。
そんなとき、離れていても気軽にコミュニケーションがとれたり、生活の様子をお知らせしてくれるロボットがあれば、安心感につながります。 また、ご本人の寂しい思い、不安な思いを少しでも軽減してくれるかもしれません。
今回は、そんな見守り機能を搭載したロボット&各種センサをご紹介します。

BOCCO (ボッコ)

 

BOCCOとスマホのアプリが連動し、離れて暮らすご家族と簡単なメッセージのやりとりをすることが出来ます。
また、BOCCOが各センサと連動し、さまざまな検知情報をスマホにお知らせします。

 

Photo by ユカイ工学 株式会社

 

 

■各種センサ

人感センサ

人感センサはカメラでの見守りとは異なり、人の“動き”を感知するので、トイレやお風呂の脱衣所などのプライバシーエリアでの見守りにも適しています。
また、家族や介助人がいない時間帯の無用な外出や徘徊などの見守りにも活用できます。

部屋センサ

部屋の温度・湿度をもとに熱中症の警戒度をモニタし、警戒度が高くなるとBOCCOを通じてスマホに通知。 また、部屋の照度も検知するため、部屋の照明ON/OFFなどでご本人の活動も確認できます。これらの温度・湿度・照度の現在値と履歴は、グラフとしてセンサ詳細画面で確認ができます。

鍵センサ

サムターン鍵の開閉を検知し、スマホにお知らせ。「あれ、鍵閉めたっけ?」の不安がなくなります。

振動センサ

ドアに設置することで、ドアの開閉を検知してスマホにお知らせ。ご家族が今日も家から出て活動していることを知ることができます。

(各センサは別売りで購入可能)

後記

「自分を見守ってくれている、気にかけてくれている」という安心感は、多くの人にとって心地良いものではないでしょうか?また、こんなかわいらしいロボットが見守ってくれるなら、使っている側にも愛着が湧いて、日々の生活に楽しみができそうです。 どこか懐かしく、かわいらしい見た目のBOCCO。あなたのご家族をしっかりと見守ります。

 

 

 

シリーズ「ユマニチュード」第3回 ~ケアの基本柱『触れる』『立つ』~

 

シリーズ「ユマニチュード」第2回では、基本の4本柱のうち、『見る』『話す』についてご紹介しました。 今回は、残りの2つ『触れる』『立つ』についてご紹介していきます。

 

③ 触れる

  • 手のひらをつかって、包み込むように、優しく、ゆっくり触れていきます。
  • 肌と肌の触れ合うスキンシップは、親密感や絆を深め、相手との間に安心感を抱くことができます。
  • 逆に、突然腕をつかんだり、無言で触ったり、という動作は意図していなくても相手に恐怖感を呼び起こします。

 

④ 立つ

  • 立つことは人として生きることにつながる”という理念のもと、「1日20分は立つこと」を提唱しています。
  • 寝たきりの人の見る世界、座って見る世界、立ったときに見る世界は、同じ空間にいたとしても、見えるもの、聞こえるものがまったく異なります。
  • 体にとっても筋肉の維持向上や、呼吸器等の内臓の働きを活発化するなど、立位をとることには、とても良い効果があると考えられています。
  • もちろん、本人の身体機能の評価と正確なケアを行うことが求められますが、本人の持つ能力を最大限引き出すことが、「人として生きる」上で、とても大切なことです。

 

 

 

 

ユマニチュードの基本をシリーズ3回でお伝えしてきましたが、どのようなケア手法でも実践する上で大切なのは、その手法の考え方、方法を正しく知ること。

ユマニチュードの実践には専門の講座が開かれているそうですので、ご興味を持たれた方は、ぜひ調べてみてはいかがでしょうか。

 

 

<参照元>

 

 

まるで布団で寝ている感覚!超低床フロアーベッド

 

ベッド上でのオムツ交換や体位変換を行うのに、介護用ベッドはとても便利です。

また、介護者の腰痛防止のためには、出来るだけ腰の高さで介護を行うことが大切です。
しかしながら、介護現場においては、夜間帯のベッドからの転落事故も少なくありません。ベッドの高さが高ければ高いほど、転落した際の骨折のリスクも高まります
高齢者の方は、今のようにベッドで睡眠を取る習慣がなく、昔は布団で寝ていた方も多かったのではないでしょうか?そんなベッドの良いところと、布団の良いところを兼ね備えた介護用ベッドのご紹介をします。

 

超低床フロアーベッド

photo by フランスベッド株式会社(製品:フロアーベッドFL-1402)

 

 

超低床だから、ベッドの高さに不安のある方にも安心。万が一の転落時も衝撃を緩和できます。
日中の乗降りや介護の際、また、車椅子への移乗を行う時は高い位置で。おやすみになられる時や、ベッドへの上がり下がりが大変だという時は低い位置で。
高さ61cm〜11cmまで調節可能なので、様々な状況にあわせてお使いいただけます。ベッドを下げる際には、高さ18cmで一旦停止しますので安全確認後、足下にあるスイッチで操作することにより足の挟まりなどの思わぬ事故を防ぎます

 

 

介護の際には、介護をする人の負担を軽減することと、介護を受ける方の不安感を軽減することがとても大切です。
このような福祉用具の活用で、無理のない介護を行うことが出来るのではないでしょうか?

 

 

排泄ケアの「あったらいいな」を叶える!排泄予測デバイス

 

排泄のタイミングが分かったら良いのに・・・
高齢者の排泄ケアをする際、こんな風に思ったことはありませんか?
もし、排泄のタイミングが分かれば、適切なタイミングでトイレ誘導やオムツ交換を行うことができます。
今回はそんな介護者の思いを叶えてくれる排泄予知デバイスをご紹介します。

 

 

Photo by トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

 

DFree

 

DFreeを恥骨の上端から20mmの位置に装着することで、超音波で膀胱をセンシングし、排尿のタイミングを計ります。

(※個人のお客様への販売は2018年以降)

 

■機能

 

  1. 各種通知機能でお知らせ
    排尿前後のタイミングはもちろん、センサーの通信状況や本体の電池残量など、お手持ちのスマートデバイスにお知らせします。
  2. 排尿のタイミングを確認できる
    グラフで表示されるので、個々の排泄パターンや排泄傾向が簡単に確認できます。
  3. アクションを記録できる
    排尿時間はもちろん、オムツやパッド交換の記録を簡単につけることができます。

 

 

DFreeは介護者の負担を軽減してくれるだけではなく、高齢者の方のQOL向上にも役立ちます。
例えば、これまで、失禁を心配して外出することができなかった方が、DFreeを使用することで外出ができるようになり、よりイキイキとした生活を送れるようになったというケースもあるそうです。
排泄のタイミングをお知らせしてくれるDFree。
排泄ケアの効率化や高齢の方の不快感軽減・自立支援、オムツ使用量削減など、様々な効果が期待されますね!

 

 

<引用元>

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
↑ 詳しい製品情報はこちらのHPをご覧ください。

 

シリーズ「介護のプロが語る認知症ケア」第2回 ~認知症ケア推進課誕生のきっかけ~

 

シリーズ「介護のプロが語る認知症ケア」第1回では、認知症ケア推進課の取り組みについてお伝えしました。
今回は、認知症ケア推進課ができたきっかけについてご紹介したいと思います。

 

 

【認知症ケア推進課ができたきっかけは何ですか?】

 

昨年度まで、セントケア・グループ内では、認知症ケアの手法に関して、研修を統一して実施していましたが、サービスの現場で起こるさまざまな課題を共有していく体制が十分ではありませんでした。
そのため、現場スタッフの経験値や個々のスキルでケアを行っているケースもあり、「このような場面では、どのようにケアすればいいのだろう?」「どこに相談したらいいでしょうか?」といった声が上がっていました。

 

そこで、目の前のお客様が「何に困っているのか」を把握し、「ケアの見立て」をしていく力を現場が持てるようにする仕組みづくりと、それらを相談できる場所が必要だと感じていました。

 

(いつもニコニコ笑顔の中村さん、特に今回は真剣なまなざしでお話して下さいました。)

 

 

またこれまでも、施設サービスの中での、認知症ケアの取り組みに注力してきましたが、今後ますます進むであろう「介護の在宅化」という流れの中で、「個」の対応力と「チームケア」の視点を強化し、施設サービスで培ったノウハウを基に認知症ケアを深めることで、課題を解決していくことが重要だと感じるに至りました。

 

それがきっかけとなり、セントケア・グループにおける認知症ケア実践手法、見立て力、チーム力を向上する仕組みづくりや、様々な現場課題に対して相談支援にあたることを目的に、2017年4月に「認知症ケア推進課」ができました。

 

 

現場におけるケアの見立て力をさらに育てるため、お客様自身のお困り事にしっかりと向き合い、現場で培ってきたケア手法の集約・共有・発信を好循環させ、それらをサービスとしてお客様へ還元できるよう、日々邁進している様子が伝わってきました。
次回のシリーズ第3回では、中村さんが体験したエピソードも交え、日々の認知症ケアで実感していらっしゃることをお伝えしたいと思います。

 

シリーズ「ユマニチュード」第2回 ~ケアの基本柱『見る』『話しかける』~

 

シリーズ「ユマニチュード」第1回では、ユマニチュードの由来と理念をお伝えしました。 それでは、具体的にはどのようなことを行うのでしょう?150もの技術から成るユマニチュードですが、基本の柱は4つです。2回に分けてお伝えします。

 

ユマニチュードの基本は、『見る』『話す』『触れる』『立つ』の4本柱からなっています。

 

① 見る

  • 目の高さを同じか相手より下にし、目線をしっかり合わせます。認知症の方は視野が狭くなっており、横から話しかけられても認識が困難です。正面から話しかけ、まず相手に自分のことを認識してもらいましょう。
  • 逆に、目を合わせないことは、相手にとって「自分は存在しない」という無力感を感じさせます。目を合わせる機会をなるべく多く作ることで、「自分はここにいてよい存在なのだ」という、人間としての尊厳を取り戻す第一歩になります。

 

② 話す

  • たとえ相手から返事がなくても、優しい声のトーンで、相手が気持ち良い言葉かけをしていきます。
  • ケアをするときもいきなり始めるのではなく、「今日はいい天気ですね」「すてきなお洋服を準備したので着替えましょう」など、ポジティブな言葉を使い説明をしながらケアすることで、ケアをされる側の「自分を大事にしてくれている」という安心感につながります。

 

 

 

人としての尊厳や、自分が大事にされていると感じられること。 なるほど、「人と人とのコミュニケーション」の中で、普段忘れがちですが一番大切なこととして、改めて考えさせられますね。

 

次回のシリーズ「ユマニチュード」第3回では、基本の柱、残る2つについてお伝えしたいと思います。

 

 

<参照元>