認知症では短期記憶が失われるというけれど―祖母は瞬間を必死に書き留めている―

 

こんにちは。認知症Cafést Online編集スタッフのSです。

短期記憶が失われやすい

認知症では短期記憶が失われやすいと言われています。
昔のことは覚えているけれど、最近のことや直前のことを覚えていられないという特徴が見られます。

祖母も直前のことをまるで思い出せない

有料老人ホームに入居している祖母も直前のことに対する記憶力が著しく低下していると感じます。

 

例えば、祖母に母と会いに行った際、介護スタッフの方に付き添われて浴室から部屋へ戻ってきた祖母にお風呂のことを尋ねても、直前のことであるにも関わらず、まるで思い出せないということがあります。

 

用事を思いついてある階から別の階に行ったけれども何をしにきたか思い出せないということは誰しもあることでしょうが、祖母に起こっていることはそういう比ではおよそないのです。

 

短期記憶が弱まっていなければ、仮に用事を思い出せなくてもある階からこちらの階に来たということや、何らかの用事があってこちらの階に来たということは思い出せるのではないかと思います。

 

浴室のある階からエレベーターに乗り別の階に行くということは、90代も後半の祖母にとっては場面の大きな変換どころか、異国や別世界への旅路なのかもしれないと思ってしまいます。

祖母は母に全幅の信頼を寄せている

お風呂のことを尋ねる母と私に、祖母はとても驚きながら「私、入ってきたの?」と聞き返します。

 

自分で確認をしたいと考えてのことと思いますが、祖母は自分の髪を触ったりします。それにより入浴という事実の判定の手掛かりが得られるかと思いきや、依然として直前に入浴をしてきたことがピンと来ない様子です。

 

でも、入浴に行ってきたところであるという母の言葉を疑うことはありません。つまり、入浴という事実の判定は他人である母によってなされているのですが、「そんなことはない」と反論をすることも嫌がることもありません。

 

そういうやりとりを見ていると、祖母は母に全幅の信頼を寄せていると思います。

 

大げさな言い方にはなりますが、自分でありありと事実と思えないことに対して、「それがあなたの事実」と他人から言われて、無条件で受け入れられることは信頼なくして成り立たないだろうと思います。

でも、祖母は瞬間を必死に書き留めていた

祖母は「今日は〇〇(注:娘である母の名前)が来た」など、日記と呼ぶにはやや心もとないくらいの短文を大学ノートに書いています。

 

プライバシーの保護の考えには反するかもしれないですが(笑)、このミニ日記は娘である母に筒抜けになってしまっており、間接的に私の耳にも入ってきます。

 

あるとき、祖母が有料老人ホームのスタッフへの苦情のようなことを書いていたと母から聞きました。

 

「ひどい人 悪い人 〇〇さん 女 ひどい人 ひどい人 〇月〇日 朝 五時です」

 

どうやらまだ眠たいのに朝早く起こされてしまったことが悔しかったようでした。

 

〇〇さんはスタッフの名前です。人の名前を覚えることも難しいであろう祖母が、その場で名前を聞くか、名札を見るかして必死に書き留めたのだと思います。

 

直前のお風呂も思い出せない祖母の短期記憶の水準からすれば、その瞬間に記録することをしなかったら、名指しで苦情を言うことも、つらい思いをしたと伝えることもできなかったのではないかと思います。

 

これは執念なのか何なのか。
このようにして、物忘れが激しくなってもその瞬間の気持ちを、時間差があるにもかかわらず、日中に訪ねてきた家族に伝えられるというのは、なんという現在の心身の能力に見合った巧みな状況適応であろうかと感嘆致します。

介護職として有料老人ホームで勤務していた経験を踏まえて

私は祖母を守るべき立場の孫であるにもかかわらず、有料老人ホームで介護職として勤務していた経験もあり、かつ、子に比べれば孫の立場の気楽さもあり、祖母の側に立ちつつも、「介護の現場のあるある」として話を聞いてしまいます。

 

パジャマから普段着への着替えは、夜勤者がその時間(朝の5時)くらいに行うのではないかと思います。一方、現場検証もヒアリングも行っていないですが、さすがに、そのタイミングで朝食の食堂に連れて行くことはしていないだろうとも思います。

 

夜勤者は少ない人数で入居者のモーニングケア(起床介助)を行います。5時くらいにお着替えは済ませておくものの、あとは寝てもよし、テレビを見るのもよし、手仕事をしていてもよしと部屋で自由にお過ごしいただくと考えるのではなかろうかと思います。朝食の時間になれば忙しくなりますので、そこから逆算して「何時に~を済ませておく」という思考になります。そのうえでご本人の感情に対して波風を立てないようにと考えるならば時くらいにトイレで起きられたタイミングでお着替えをさせていただくというのが自然な流れでしょうが、いつもいつもはそういう自然な流れにはならないであろうと思います。

決して苦情だけではなかった

祖母が書いていたのは決して苦情だけではありませんでした。

 

「目くすりさしに来てくれる人 男性です この人はやさしい、いい人です」

「〇〇さん、やさしい人 女の人です 〇日 来て話した人」

 

このような記録は救いです。

ほとけさま

母に全幅の信頼を寄せていて、母が側にいれば穏やかであるということも救いであります。「ありがとう」、「ありがとう」と愛情や感謝の念に満ちたほとけさまになられます。

 

私が有料老人ホームで勤務していたときもいらっしゃいました。
直前まで怒っていたり、すねていたとしても、信頼を寄せるご家族やお友達がいらっしゃれば、恩赦や放免や福音が巻き起こってしまう入居者の方がいらっしゃいました。

さいごに

母に聞いたところ、「この人はいい人」、「この人は悪い人」という祖母によるスタッフの観察記録、とりわけ苦情のようなものは最近は見られなくなったとのことです。

 

認知症では出来事や細かい事実を忘れても感情は残ると言われています。
それは今回紹介した祖母のミニ日記からも確認できました。

 

周囲は改めて本人の感情に配慮した関わりが求められていることを肝に銘じる必要があります。

 

そして、「出来事を忘れても」という部分について、祖母の事例は良い反例となるでしょう。

 

すぐ忘れてしまうとしても、その瞬間を書き留めることができるならば、まわりの人に出来事として共有され、記憶されるのだと思います。

 

 

 

夜間覚醒など睡眠での問題を抱える認知症の人への対応について

 

睡眠は健康な生活を送る為には不可欠な活動です。
しかし、高齢になると眠りは浅くなり、さらに認知症になってしまうと夜に起きてしまったり、昼と夜が逆転してしまったり、睡眠での問題を抱えることがあります。

 

そして、夜間覚醒や昼夜逆転は介護負担の増大につながります。

 

今回は、睡眠での問題における原因のうち次の2つに光を当てて、対策について検討をしたいと思います。

 

①体内時計の乱れ

②精神的な不安

①体内時計の乱れ

認知症では、睡眠や覚醒の機能に関わっている神経細胞が変質して、働きが弱まっていくと言われており、それに伴い、体内時計の乱れが生じやすくなります。

介護現場で見られること

 

・夜中に「今から仕事に行く」、「朝だから出かける」と言って、外出の準備をする。

・夜中でもテレビやラジオを大きな音でつけっぱなしにしている。

・日中眠ったりウトウトする時間が増える。

 

認知症の人で問題となる睡眠の特徴

日経メディカルの記事(「認知症の睡眠障害で介護者に伝えたい8箇条とは」2019/8/8付)では、1週間以上にわたる24時間連続の睡眠記録をもとに、認知症の人で問題となる睡眠の特徴が挙げられています。

 

・中途覚醒や早朝覚醒が頻回である。

・日々の睡眠時間帯が極めて不規則であり、どの時間帯に眠るかが予測がつかない。

・夜間に長い中途覚醒がみられる一方、日中には頻回に午睡を取るなど睡眠と覚醒が不規則に分断されている。

1日を通じた総睡眠時間は年齢相応や平均以上である(従って、総睡眠量としては正常)。

 

対策

 

・日光を浴びて、日中の覚醒を促す。
(日の光が入る窓際で日向ぼっこするのも効果的!)

・日中の活動を増やし、夜に眠れるようにする。
(じっくり眠る時間を夜間に寄せていく!)

・昼寝は少なめに。
(加齢とともに睡眠時間は短縮しますが、夜間にじっくり眠って睡眠時間を確保することに努めたうえで、昼寝の時間も足し合わせて1日の総睡眠量を確保!)

・昼寝、夜間就寝とも規則的に!

・就寝環境を整え、安眠を促す。

・夕方以降で就寝2~3時間前までの入浴・半身浴は睡眠促進効果がある。

・夕方以降はアルコール、カフェイン、喫煙を控える。

・医療機関等と連携し、痛み、かゆみ、頻尿など安眠を阻害する症状への対処を進める。

 

 

 

この記事(←リンクあり)ではさらに、アメリカの政府機関である食品医薬品局(FDA)からの薬についての勧告の内容も紹介されています。

認知症患者の睡眠障害や行動障害に対する抗精神病薬の効果は極めて限定的で、むしろ生命予後を悪化させる危険性が高く、長期使用は慎むべきである

 

従って、薬に頼るというよりもまずはケアで対応していくと考えることが原則になります。

②精神的な不安

認知症では状況に対する理解力や判断力が弱まることに伴い、不安をかかえ、睡眠の問題につながることがあります。

介護現場で見られること

 

・精神的に不安になり、落ち着かない。

・大声で家族などの名前を呼ぶ。

・部屋を暗くすると不安になったり、暗闇を怖がったりする。

 

 

対策

 

・本人の気持ちに寄り添う。

・本人様の話をさえぎったり否定したりせず、しっかり聞く。

・どうすれば本人が穏やかに夜を過ごせるようになるかを見つけ出す。

 

 

 

「どうすれば本人が穏やかに夜を過ごせるかを見つけ出す」については、暗いのが怖いと言われるなら電気はつけたままにする、独りが嫌だと言われるなら同じ部屋で就寝する、夜に出かけると言われるなら外の景色を見てもらうなど、いろいろな工夫の余地はあります。

 

しかし、介護者のライフスタイルとのバランスは問題になります。家族など介護者が無理をしてしまうことは誰も望んでおりません。
困ったときは、ケアマネジャーさんやご利用になられているサービスのスタッフさんに、思い切って相談してみてください。
(文責K&S)

 

 

 

10個の質問に答えるだけ「老化度テスト」

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのUです。

「感情老化」度テスト

掲題は「脳が老化」する前に知っておきたいこと (青春新書インテリジェンス)の中にあった質問です。

 

東洋経済オンライン記事の40代から増える「もの忘れ」を軽視できない理由でも取り上げられております。(男性ホルモンから見た「感情老化」度テストとして紹介されています。)

私も40代後半になり該当箇所が増えてきたのが気になります。

男性ホルモン

また、何かをしよう!という意欲は年齢とともに衰えた気がします。

 

物事に積極的に取り組もうとする意欲を左右するものの1つに、男性ホルモンがあるそうです。
男性は40代から男性ホルモンが目立って減り始めるそうです。

 

男性ホルモンを増やすと言われている食材「タマネギ、ニンニク、ニラ、アボカド、山芋、納豆、オクラ、鮭、カキ」などが良いそうなので取り入れていきたいと思います。

 

 

☆☆イベント情報☆☆ てんのうだいおれんじカフェ(8/28、我孫子)

 

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのマツです。
地域での認知症関連のイベント情報をご案内します。

 

千葉県我孫子で開催される『てんのうだいおれんじカフェ』のご案内です。「みんなで地域を支え合える住みよいまち作り」がこのオレンジカフェのコンセプトです。毎月第4水曜日に開催しています。

 

 

 

てんのうだい おれんじカフェ

 

開催日
令和元年8月28日(水) 17時~20時
プログラム:17時15分~18時30分
バイキング会食:18時30分~
場所
セントケア我孫子デイサービス(千葉県我孫子市天王台4-5-1 シャトー天王台1F)
内容
バイキング会食&音楽演奏(キーボード)
演奏
大久保 正子 氏
料金
実費(軽食・飲み物代500円)
持ち物
上履き

 

暑い日こそバイキング会食!
皆さんでワイワイガヤガヤ楽しく食べて、おしゃべりしましょう!!
スイーツも用意しております。

 

どなたでもお気軽にお立ち寄りください!
お好きな時間に、お一人でも、グループでもお気軽にご参加ください。
(18時半~食事会)

問い合わせ先

田中直通/090-3427-7466
セントケア我孫子デイサービス/04-7181-7580

 

 

 

 

認知症の方がいない?!技能実習生とミャンマーの高齢化

 

こんにちは、認知症Cafést編集スタッフのmimiです。

ミャンマーからの技能実習生の受け入れ

日本で介護分野での外国人技能実習生の受入が始まりまして、弊社セントケアでもミャンマーからの技能実習生に来て頂くことになっています。

 

先日、入国後講習機関で受講中の技能実習生にお会いしてきました。とても明るく意欲的な方々に元気を頂くとともに、両国の高齢化状況の違いを感じましたのでツイートします。

ミャンマーと日本の人口ピラミッド

ミャンマーの人口ピラミッド

ミャンマーの人口ピラミッドを見ると・・・

出典:PopulationPyramid.net(ミャンマー)

 

なんと、2019年時点の高齢化率は6.1%、そして90歳以上は0%!

日本の高齢化率が28.2%なので、その差は歴然です。

日本の人口ピラミッド

ちなみに日本はこれです。

出典:PopulationPyramid.net(日本)

海を越えて学ぶ実習生のチャレンジ精神―認知症の方に初めて接する―

ミャンマー国内では、60歳区切りが一般的だそうで、高齢者というと60代なんですね。

 

講習機関の先生によると、技能実習生の方々は認知症の方に実際にお会いしたことがないそうで、(動画などで学んできているけれども)受入先の介護施設で初めて接するそうです。

 

海を越えて、異なる言語・文化の土地で介護を学ぶ実習生のチャレンジ精神・・・本当に頭が下がります。

ミャンマーも今後高齢化が進む

とはいえ、ミャンマーの人口推計では2030年に8.67%、2050年に13.32%と、着々と高齢化が進みます。

 

今、技能実習生の方々が日本で学んだ介護技術が、高齢化に向かう30年後のミャンマー社会をよりよいものにする礎になるかと思うと、受入させて頂く私たちも身が引き締まる思いを抱くとともに、この上ない幸いです。

 

 

☆☆イベント情報☆☆ やさか町オレンジカフェ(8/16)

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのSです。

地域での認知症関連のイベント情報

今回は『やさか町オレンジカフェ』のご案内です。
このカフェは認知症の人や介護をするご家族の居場所となるとともに、医療・介護の専門職と、お茶を飲みながらお悩み事などのご相談に応じます。

 

 

 

やさか町オレンジカフェ

 

開催日
8月16日(金) 13時30分~15時30分
場所
セントケア八坂東 小規模多機能
静岡県静岡市清水区八坂東二丁目7-1
内容
『回想法(夏)』と懇談
料金
無料(飲み物付き)
どなたでもお気軽にお立ち寄りください!

問い合わせ先

セントケア八坂東(TEL: 054-371-5960)

 

 

【イベント報告】イオンスタイル検見川浜での「あたまの健康チェック」体験会

 

こんにちは、本日は認知症Cafést Online編集スタッフのKがお届けします!

イオンスタイル検見川浜での「あたまの健康チェック」体験会

先日、イオンスタイル検見川浜「あたまの健康セミナー&あたまの健康測定会」のイベントを開催いたしました。イオンスタイル検見川浜店様と美浜地区のあんしんケアセンター様(真砂・磯辺)の協力で「あたまの健康チェック」の体験会やあんしんケアセンターのご紹介をさせていただきました。

※千葉市では地域包括支援センターの名称をあんしんケアセンターと呼んでおります。

 

当日は、多くの方が来場してくださり、軽度認知障害(MCI)の話や予防活動、困ったときの相談窓口などのセミナーに参加頂きました。

受検者の反応

セミナー後には希望された方にあたまの健康チェックを受けていただき、多くの方が現在の認知機能の状態を知ったうえで、予防活動の重要性を知れて良かったとおっしゃられていました。

 

今後も、イベント等でこういった活動を行ってまいりますので、ご興味、関心のある方は是非ご参加いただければと思います。

 

認知症Caféstのイベント情報などでも発信していきますので、お見逃しなく♪