適度に日光を浴びようービタミンDと認知症との関連ー

 

 

こんにちは。
熱中症への警戒が日々呼びかけられ、発信される、暑さの厳しい時期となりました。

日光浴のメリット、恵み

日光浴のメリット、恵みとして、覚えておきたい点は皮膚に日光(その中でも特に紫外線)があたることでビタミンDが産み出されるという点です。

 

ビタミンと呼ばれる栄養素の多くは体の中でつくることができず、食物から摂取しなくてはならないのですが、例外的にビタミンDは皮膚の下にあるコレステロールが材料になり、それに紫外線が当たることで化学反応が起きてビタミンDが出来るのです。

 

ビタミンDの健康効果

骨の形成

ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収を2~5倍程度に増加させます。ビタミンDが不足すると、カルシウムが十分吸収されず、カルシウム不足に陥ります。

 

骨は血液中のカルシウムを取り込んで作られます(≒カルシウムは骨の原料です)。
その逆の動きもあって、血液内のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムを溶かし出して血液内のカルシウムの濃度を一定に保とうとします。
そんなことで、カルシウム不足は骨の強度を低下させ、骨粗鬆症の原因になります。

認知症との関連

ビタミンDの健康効果は骨に対してだけに限られません。
近年は認知症との関連も明らかにされてきています。

 

アルツハイマー病では、そうでない人と比べてビタミンDの血中濃度が低かったという研究結果や、65歳以上のアメリカ人高齢者1658名を6年間追跡調査したところ、ビタミンDが欠乏している場合に認知症の発症リスクが高まったという研究結果が報告されています。

(出典:今野裕之著『最新栄養医学でわかった!ボケない人の最強の食事術』, 2018年, 青春新書

がん予防効果も

がん予防効果を示唆する研究結果も日本から発信されています。

 

国立がん研究センターで、1990年(平成2年)と1993年(平成5年)に日本の9つの場所でスタートした研究の結果です。

 

研究への協力として血液の提供に加えて、アンケートにも回答をした男女約3万4千人の方々を対象に2009年(平成21年)まで追跡調査をしたところ、3,734人のがん罹患が確認されました。
がん罹患した人と、そうでない人を比較したところ、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが分かりました。

(出典:血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて|国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター  予防研究グループ

その他

このほかにも、ビタミンDの健康効果として、転倒予防効果や、「冬季うつ」と呼ばれる季節性の感情障害への効果(うつ症状の抑制)などが指摘されていました。

日光浴(紫外線)のデメリット

一方、日光(紫外線)を浴びることにはデメリットもあります。
紫外線を浴びすぎることは、シワ、シミなどの皮膚の老化のほか、皮膚の細胞のDNAの損傷(皮膚がんの原因)につながります。また、眼への悪影響(紫外線角膜炎、白内障など)も知られています。

どのくらい日光を浴びることが最適か?

健康へのプラスの影響もマイナスの影響もあるということなので、大げさな言い方になりますが、日光浴の是非はビタミンDを産み出すというプラス面の促進と、皮膚の細胞の損傷などのマイナス面回避のいずれをとるかという“はかりにかけている”ような状況なのです。

 

そんなことから「一体どのくらい日光を浴びることが最適なのか?」という疑問が出てくるわけですが、この点を検証している記事(後述)がありましたので、確認してみましょう。

ビタミンD生成に必要な日光浴の時間、皮膚に炎症が生じる日光浴の時間

その記事(後述)によれば、札幌、つくば、那覇の3地点で10㎍(マイクログラム)のビタミンD生成に必要な日光浴の時間と、皮膚に紅斑(=赤くなる日焼け)という炎症が生じる日光浴の時間を算出しました。

その結果です。

10㎍のビタミンD生成に必要な日光浴の時間

7月
(12時)
12月
(12時)
札幌 8分 139分
つくば 6分 41分
那覇 5分 14分

 

皮膚に炎症が生じる日光浴の時間

7月
(12時)
12月
(12時)
札幌 25分
つくば 20分 98分
那覇 16分 42分

注:札幌の12月は「―」となっています。300分以上という長い計算値が得られたということです。よほど長く日光に当たることがなければ皮膚に炎症は生じないという含意があると考えられます。

 

出典:高齢者の日光浴ーメリットとデメリット、どちらが大きい?【皮膚障害作用回避とビタミンD生成作用のいずれをとるか】(著者は鈴木隆雄氏)|日本医事新報社 2017/04/04(記事は会員限定)

(←この出典の記事より「10㎍のビタミンD生成に必要な日光浴の時間」、「皮膚に炎症が生じる日光浴の時間」の図表をカフェスト編集者が作成しました)

この結果から分かることー夏なら5~10分程度で良いー

1日に必要なビタミンDは10-25㎍ですので、この検証は1日に必要な日光浴の時間と言い換えてもよさそうです。

 

7月(≒夏)の結果に基づけば、札幌は8分、つくばは6分、那覇は5分で必要なビタミンDが得られるという結果でした。夏なら5~10分という短時間で良いのですね。

 

注意点としてはガラスは紫外線をあまり通さないので、窓越しの日光浴ではあまり効果は望めません。日陰でもよいので、短時間、外で日光浴をするのが適切だという結論になります。

終わりに

詳しい算出方法は分からないのですが、最適な日光浴の時間が算出され、数値化されているというのは興味深いですね。
夏の外での日光浴は短時間で良いということがよく伝わる数字であったと思います。

 

それでは、適度に日光を浴びましょう。(終)

 

(文:星野 周也)

 

 

<認知症Cafést内関連記事>

熱中症予防 ~暑さに負けないからだづくり~

<参考書籍>(amazonへのリンク)

今野裕之著『最新栄養医学でわかった!ボケない人の最強の食事術』, 2018年, 青春新書

<参考>

1. 骨を元気にする習慣ー日光浴をしよう!~骨の健康に欠かせないビタミンDの力|いいほね(IIhone.jp) 2017年9月15日

2. 夏なら10分の日光浴を(著者は中川恵一氏)|日本経済新聞(会員限定記事) 2018年5月2日

3. 紫外線環境保健マニュアル 2020(PDF文書)|環境省 2020年3月改訂版

4. 日光浴の知られざる効果!日光浴で病気を予防しよう|メディケア・リハビリ 2020年11月30日

5. 骨の話|独立行政法人国立病院機構 西埼玉中央病院

6. 日本人が知らない「ビタミンD」不足の怖さとは 適度に日光を浴びて脳の若さと心の健康を保つ(著者はマックス・ルガヴェア氏, 構成は笹幸恵氏)|東洋経済オンライン 2021/07/26

7. 血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて|国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター  予防研究グループ

8. 冬に欠かせないビタミンD|ブレインケアクリニック 2018/02/07

9. 日光浴はどのくらい必要?|公益財団法人 骨粗鬆症財団

10. 高齢者の日光浴ーメリットとデメリット、どちらが大きい?【皮膚障害作用回避とビタミンD生成作用のいずれをとるか】(著者は鈴木隆雄氏)|日本医事新報社 2017/04/04(記事は会員限定)