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認知症とともに暮らせる社会に向けて―認知症国会勉強会に参加して―

 

こんにちは。Cafést編集スタッフのSです。

認知症国会勉強会に参加

3月27日、認知症国会勉強会に参加しました。

 

衆議院議員の鈴木隼人氏が主催の勉強会です。鈴木氏の秘書が事務局を務める全国認知症予防ネットワーク(←リンクあり)に弊社も加盟しております。そのご縁で勉強会のご案内を受けています。
もともと、弊社側の担当は編集スタッフのMでしたが、Mの異動・地元への単身赴任(関連記事「生活環境が変わる季節」)に伴い、今回は4名が参加しました。

議事

講師
東京都健康長寿医療センター研究部長 粟田主一(あわたしゅいち)氏
テーマ
認知症と共に希望と尊厳をもって暮らせる長寿社会を目指して
時間
3月27日(水)16:30~18:00
45分の講義のあと、45分の意見交換を行いました。

注:会場は衆議院第2議員会館 地下1階 第1会議室でした。

講義内容のメモ

粟田先生の講義は老年精神医学雑誌第30巻 pp.238-244に掲載される論文(編集者注:2019年4月5日現在、抄録等の情報はまだオンライン化されておりません。論文は勉強会当日は紙で配布されました。)と、粟田先生がご所属の東京都健康長寿医療センターが東京都から受託して高島平団地(板橋区)で行った「認知症とともに暮らせる社会に向けた地域ケアモデル事業」に基づくものでした。

老年精神医学雑誌掲載論文から―題は「超高齢期の認知症の疫学と社会状況」―

 

  • 21世紀の前半に認知症高齢者数は増加の一途を辿るが、増加するのは85歳以上の認知症高齢者である。
  • 85歳以上の認知症高齢者は、(65歳以上の認知症高齢者のうち)2020年の段階では53%であるが、2065年には73%に達する。つまり、認知症高齢者の大半は85歳以上の超高齢期を生きる高齢者である。
  • 85歳以上の高齢者を対象とした認知症の要因―認知症のなりやすさ・なりにくさに関わる要因―の研究を概観してみると、他の年代と大きくは変わらない。
  • 他の年代と異なる点の1つは、80歳以降に診断された高血圧症は認知機能低下に対して保護的である。また、超高齢期(85歳以上)では糖尿病が認知症のリスク要因となる影響力は弱まる。
  • 85歳以上の超高齢者では、認知症の要因についての知見は、認知症の発症予防の観点からではなく、認知機能低下に対するレジリエンス(編集者注:レジリエンスは回復、元の状態に近づけると解釈するのが良いと思います。)の要因として理解することが現実的。

 

認知症とともに暮らせる社会に向けた地域ケアモデル事業の結果から―東京都受託研究事業(平成28年度~29年度)― (注1)(注2)

  • 高島平地区の70歳以上高齢者を対象とした生活実態調査から、認知機能の低下を認める人が、そうでない人と比べて、身体的・精神的な健康状態が悪く、社会的交流の頻度が少なく、年収100万円未満の人が多かった。つまり、身体面・精神面・社会面で複合的に課題が発生している。しかも、このこと―複合的に支援ニーズが存在すること―が認知機能の低下が認められる比較的初期の段階で生じている。
  • 認知症とともに暮らせる社会を創出するためにはコーディネーションとネットワーキングが必要。コーディネーションは本人の視点に立って、必要な社会支援を統合的に調整することであり、ネットワーキングは社会支援を相互に提供できる地域づくりである。
  • ネットワーキングを推進するために地域の拠点「高島平ココからステーション」(←フェイスブックページへのリンクあり)を設置した。この地域の拠点は、6か月の研究期間内で下記の機能―(1)居場所としての拠点、(2)相談に応需する機能、(3)差別や偏見を解消し、住民同士の互助をつくりだす機能、(4)地域社会のさまざまな組織・団体との連携を推進する機能、(5)人材を育成する機能―を実際に発揮し得ることを確認した。

 

注: <参考>注1の事業報告書(概要版)より「高島平ココからステーション」のパンフレットの画像を取得しました。文字が小さくて読みにくいかもしれないですが、ココからステーションについては、 「認知症があっても、障害があっても希望をもって暮らせるまちを目指して、みなさんと一緒に、安心や楽しさが集まる場所に育てて行きたいと思っています。」と記されております。

参加メンバーの感想

  1. 先日行われた“認知症国会勉強会”に参加して改めて感じたのは、認知症とは単なる病理学的な側面だけでなく、心身の不調、経済的な困窮、社会的な孤立などのさまざまな課題が密接に絡み合った複合的な課題であるということでした。特に社会的な孤立という面では、一昔前なら同居している家族が何気なくおこなっていた見守り、安否確認、金銭の管理、書類の管理といったことが実はとても重要であるものの、核家族化・独居が増えた今日ではそういう生活支援が受けられず、また介護保険のサービスからも漏れてしまっていることなどがわかりました。個人的に両親の介護をしていたときにもこのようなことを感じていたため、そのときの歯がゆさが研究報告を拝聴して確信に変わった、という気がしました。「1億総活躍社会」と言われていますが、「1億総活躍」ならば、生活支援のような目に見えないことを担っている人の役割にもフォーカスを当ててGDP換算したほうがいいのではないかと思いつつ、企業が(介護保険を超えて)このような生活支援に入り込むにはどうすればいいかについて、悶々と考えています。(マツ)
  2. フレイルの実態を聞く事が出来た良い機会となりました。フレイルは特に大都市の課題だけでは無く、全地域の課題ではないかと感じています。コーディネーションとネットワーキングについては、継続して行っていくための財源確保が難しいのではないかと思われました。どうしたら継続してできる仕組みとなるかについて、考えながら聞いておりました。(ムッシュ)
  3. 今回の勉強会では、認知症高齢者の現在の社会状況や生活実態を踏まえ、『希望と尊厳をもって暮らせる長寿社会をめざす』という内容でした。本人の視点に立って生活の継続に必要な社会支援を統合的に調整するコーディネーターの具体的な援助方法や成功事例の紹介を通じて、現在の課題に対してのアプローチ方法を学ぶことが出来ました。これらの取り組みは一つの事業所だけで進めて行くのではなく、医療、介護、役所、自治体、地域などの連携が今まで以上に求められていく事と思います。また、今後は課題解決に向けて財源の確保の問題や、実際の現場の現状との乖離に対してどう機能させていくかなども進めて行く事が重要だと感じました。(K)
  4. ネットワーキングの推進に資する地域の拠点づくりの観点では、認知症に関連するネットワークという立ち位置を超えて、子ども食堂など、地域のさまざまなコミュニティを束ねていくことで、真に地域に必要とされ、選ばれる場となるであろうと思います。児童、障害者、高齢者など多世代の居場所となれるような多機能性を兼ね備えることで、地域住民、一般市民からの納得感も増すであろうと思います。一方、認知症の方を支えるという意味では、粟田先生が「規範的統合」の理念を掲げられ、「予防を意識した集まりだと、認知機能低下のない方々が認知症の方への差別的な言動が見られることがある」と言われたことを心に留めたいと思います。同時に、認知症の本人との交流の場の中で、次第に偏見や差別が解消されるとも報告書(注1)で書かれている点が重要と思います。認知症の本人や家族などニーズを抱える当事者の方々の居場所を確保できているかを問うことを忘れてはなるまいと思います。(S)

<参考>

 

 

 

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