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落合恵子さんの『泣きかたをわすれていた』を読む

 

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのSです。

 

落合恵子さんの小説『泣きかたを忘れていた』を読みました。前半では認知症の母親の介護について描かれています。

 

 

 

 

落合恵子さんは1945年生まれ。「フェミニストのあなたがなぜ?」「介護を女の仕事だと固定化する社会に対して、あなた、異議ありだったんじゃない?」と友人に問われ、「そうよ。女を福祉の含み資産にすることに対しては、いまだって異議あり、よ」と回答する主人公の冬子。古くなった介護をめぐる考え方に対して、団塊の世代(1947-1949年)やその前後の世代はどんな新しい介護の姿を見せてくれるのでしょうか?

 

一方、時代が変わっても変わることのない、介護者が身につけるべき、介護における基本的な姿勢を次の描写から読み取ることができると思います。ご本人ができることはご本人にしてもらうという自立支援の考えです。

 

 

 細く透き通った母の指が、グラスを掴めずに宙をさまよっている。細刻みに震える指がそれぞれの関節を曲げたまま、グラスに近づいたと思うとまた遠ざかった。
 掴むことができないで、母が苛立っている。わたしがグラスを持って母の口のところに持っていくことはできたが、そうしなかった。どんな小さなことでも、母が独りでできることを残しておきたかった。小さいことに努めることが、母を認知症から連れ戻す唯一の道のように思えるのだ。

 

 

この文章の前後や背後から伝わってくる、ご本人の尊厳を保持しながら関わる姿勢も、時代によって変わることのない、介護者の基本的な姿勢と思います。価値観の変化とともに、介護関係の変化も見られるかもしれません。そのなかで、それぞれの人が大切な人たちの間でよりよい選択にたどり着けることを願いますし、その姿を自分も追いかけ、伝えていきたいです。

 

本の情報は出版社のページを参照してください。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026718/

 

 

 

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