認知症の人がヤマト運輸の配送の仕事を行うのは「COOL CHOICE」

2020/10/31
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こんにちは。認知症Cafést編集スタッフのSです。

ヒーリングフード協会のイベントに参加 

大学のときに入っていたゼミのメンバーが、現在一般社団法人ヒーリングフード協会の代表理事を務めています。

先日お誘いを受けて、920日、学士会館へ行き、この協会が主催するイベント「子供たちの未来をつくるエコ・フード・フォーラム」に参加してきました。講演を聞き、美味しいランチを頂いてきました。

エコ・フード・フォーラムの趣旨

その人と私が入っていたゼミは環境問題を考えるゼミでしたが、そこでの問題意識はこのフォーラムの趣旨に連なっています。

 

健康で美しい地球のもとで、自然の恵みをたっぷり受けて生命力あふれる食事を感謝して美味しくいただく食卓を、自分たちも楽しむ一方で、未来の子供たちにもちゃんと継承していきたいと思いませんか?

 

エコ・フード・フォーラムは、そんなエコグルメな大人が集い、環境問題について考え、行動の輪を広げていくきっかけにつなげる食事つきの会合です。

 

「環境問題を考える」や「自分たちも楽しむ」という視点が「エコグルメ」という言葉に集約されていますね。

海洋プラスチック問題

 

この日のテーマは海洋プラスチック問題でした。(注:このフォーラムでは「プラスティック」と表現されておりました。当サイトでは若干簡略化して「プラスチック」と書きます。)

 

7月からプラスチック製レジ袋が有料化しましたね。
レジ袋をはじめとするプラスチック製品を無駄に使い捨てていないかを見直すきっかけにしてもらうのが狙いであったと聞きます。
背景にあるのは環境問題の深刻化で、朝日新聞デジタルの記事では、次のように書かれています。

海洋プラスチックごみの問題も深刻です。適切に処理されなかったプラスチックごみは、世界で年800万トンが海に流れ込んでいると推計されています。プラスチックは自然の中で分解されにくく、海の生き物が誤ってのみこむ、体に絡まるなど、生態系に悪影響を及ぼします。50年には海のプラスチックごみが魚の重量を上回るという試算もあります。

出典:レジ袋有料化から考える ゴミ袋の売れ行きが伸びる矛盾(著者は水戸部六美、中島嘉克、 根岸拓朗の3氏)|朝日新聞デジタル 2020年9月13日

講演を聞いてのメモ①、②

フォラームでのスピーカーであった、環境省の飯野暁氏の講演「暮らしの中の海洋プラスチック問題」を聞いてのメモを3点記します。

メモ① 海のゴミの約8割は川・街からやってきている

「街から…」と言われるとショックですよね。実感がわかないですね。
ポイ捨てや屋外で放置されたプラスチックゴミが雨や風によって排水溝や川に流れて、最終的に海に行き着いているということです。

 

関連URL(YouTube)

海のゴミの約8割は、川・街からやってくるって知ってますか?|海さくらチャンネル 2020/04/18

ポイ捨てごみはどこへ行く?~海を漂うプラスチック~|CityOfYokohama 2019/05/07

メモ② 『大阪・ブルーオーシャン・ビジョン』

日本からの政策の動きと思い、心に残った点です。

 

2019年6月に大阪で行われた20か国・地域首脳会議(G20)において、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す『大阪・ブルーオーシャン・ビジョン』が掲げられました。

 

そして、2019年12月、スペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)で、『大阪・ブルーオーシャン・ビジョン』のラウンドテーブルを実施し、このビジョンを共有する国・地域の範囲を拡大しました。

 

飯野氏の「気候変動を扱う会議の場とは言え、海洋プラスチック問題を取り上げてもいいではないか?」という発言に担当の役人としての気概を感じました。その発言を聞いて、環境問題に関心のある一個人の立場からすれば、一人ひとりの暮らしをどう変えれば温室効果ガスが減り、海洋プラスチックゴミを減らすことができるかは、当然いずれも知りたいことだと思いました。

講演を聞いてのメモ③

メモ③ 「COOL CHOICE」

そして、今回の飯野氏の講演で一番びびっときたのが「COOL CHOICE」の話です。

 

「COOL CHOICE」は、環境省のサイトの関連ページによれば、2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標達成のため、脱炭素社会づくりに貢献する製品への買換え・サービスの利用・ライフスタイルの選択など、地球温暖化対策に資する『賢い選択』をしていこうという取組のことです。

 

クールビズという言葉がありますが、「COOL CHOICE」という言葉もあるのですね。
「COOL CHOICE」の具体的なキャンペンとして、「5つ星家電買い替えキャンペーン」、「できるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン」、「エコ住キャンペーン」、「エコカーキャンペーン」がそのページでは掲げられています。

「できるだけ1回で受け取りませんか」と認知症の人に配送の仕事を担ってもらう取り組み

なぜびびっときたかと言いますと、「COOL COICE」の中に「できるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン」があります。
宅配便の再配達という無駄を削減するためのキャンペーンですが、これと、福岡県大牟田市で、認知症の人にヤマト運輸の配送の仕事を担ってもらう取り組みが結びつきました。

福岡県大牟田市の取り組み

大牟田市のその取り組みは、認知症の人を<守る対象>(支援の対象)としてのみ捉えるのではなく、ときには地域のためにはたらき、貢献する<まちの一員>として捉えていこうという考えに基づいています。

 

それを受けて、大牟田市のヤマト運輸では、昨年から配送の仕事を、介護事業所を利用する認知症の人に委託を始めたのですが、これはさまざまな狙いを有しており、不在配送の再配達という無駄や、宅配業者、配達員にかかる負担の削減も1つの狙いになっています。

 

宅配業者の悩みのひとつは、日中に荷物を配送した際に不在で、何度か配送をしなくてはならないことです。この委託では、荷物をあらかじめ、地域の介護事業所に届け、そこから先は、介護事業所のスタッフと認知症の人がペアになり、徒歩で荷物を届けます。仕事は、有償のボランティアとして、謝礼も支払われます。認知症の人本人にとっては、他の人のために役立つことがしたいという思いを叶えることができます。また、介護事業所としても、利用されている方や事業所のことを、地域の人に知ってもらい、顔馴染みの関係をつくることができます。宅配業者としても人手確保が課題となる中で、互いにメリットのある活動となっているのです。

参考:守る対象からまちの一員へ 大牟田氏(福岡県)(著者は徳田雄人氏)|認知症共創ハブ 2020.09.04

再び「できるだけ1回で受け取りませんか」ー地球環境への負荷を削減するー

宅配便の再配達のトラックから排出されるCO2の量は年間でおよそ42万トン(2015年度国交省調査)と推計されております。
できるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン」は地球環境への負荷を削減する取り組みになります。

終わりに

海洋プラスチック問題から、「環境問題」を接点に、気候変動の問題につながり、気候変動の問題に対するアプローチである「(温室効果ガスの削減のための)COOL CHOICE」を接点に、認知症の人にヤマト運輸の配送の仕事を担ってもらうことへつながりました。それは認知症の人に役割を担ってもらう活動であり、配達員、トラックドライバーが不足しているという社会課題へのアプローチでもありました。
介護事業所の職員としても、認知症の人に役割を担ってもらうこと、そして、そのことを通して地域と接点でき、地域に役立つことができるというのはやりがいのあることではないかと思います。

 

海洋プラスチックごみや温室効果ガスの削減は、取り除けるなら取り除いた方が良いという話でしょう。宅配便の再配達という無駄も取り除けるなら取り除いた方がよいことでしょう。
これらの着想にならって言うならば、工夫をすれば地域に貢献することができるにもかかわらず、認知症の人に役割がなく、何もすることがなくなってしまっている状態もまた、(取り除いた方が良い)社会的に無駄なことと言えるのではないでしょうか。

(終)

 

 

 

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