注:画像はpeatixの当該イベントのページより一部を画像化(プリントスクリーン)したものです。
昨夜、こちらのオンラインセミナーを受講しました。
NPO法人「となりのかいご」の代表理事、川内潤さんのお話を聞きました。
川内潤さんの経歴
このイベントページに掲載されている川内さんの経歴は以下の通りです。
1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。2014年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。
NPO法人「となりのかいご」
川内さんが代表理事を務めるNPO法人「となりのかいご」は、介護に一生懸命だからこそ虐待してしまうプロセスを断ち切るため、介護支援コンサルティング、研修事業
を、大企業、中小企業、行政団体の社員に提供している団体です。
セミナーのタイトルとテーマ
セミナーのタイトルは、上の画像内に示されていますが、
「コロナで、高齢の親と離れていても仕事を辞めずに介護をする方法」です。
「介護と仕事の両立」がテーマでした。
川内さんは、この両立支援の領域で企業から声がかかって、企業内のセミナー、企業内での個別相談の実績を積んでいる(現在進行形で)ということです。「介護と仕事の両立支援」が広く社会的なニーズとして存在しているということではないでしょうか。
人に話す、相談することの大切さ
今回のセミナーで川内さんは、介護と仕事の両立のため、言い換えれば、仕事を辞めずに介護をしていくために、人に話す、相談することの大切さを口酸っぱく強調されていました。
人に話す、相談することのポイント
参加者に配布された資料の中での
- 「私が相談していいのかな」という人こそ早めに相談したほうがいい
- 早めに相談すれば、介護体制をつくる いい準備ができる
これらの言葉にポイントは集約されています。
介護についての相談先の実態
介護についての相談先の実態について川内さんが紹介されていた調査結果に注目しました。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング会社が、2013年1月に厚生労働省から受託して行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」の結果です。
注:後の参考にて関連ページへのリンクを貼っておきます。
調査方法
調査対象
・40歳代~50歳代の就労者(正社員) |
→男性1,000人、女性1,000人 計2,000人 |
・40歳代~50歳代の介護をきっかけに離職した者(離職前は正社員) |
→男性・女性 計1,000人 (有効回答は994人) |
介護についての相談先の質問に対する回答者
・就労者(正社員)のうち、現在介護を担っていると回答した251名(男性144名、女性107名)
・介護をきっかけに離職した994名
介護についての相談先の結果(複数回答)
注1(表中の「*1」) MSWは病院の医療ソーシャルワーカーのことです。
注2 離職者の回答は離職する前の状況について尋ねたものです。
注3 このグラフはカフェスト編集スタッフが作成しました。
コメント
勤務先に相談する人が少ないのではないか?
この表を見て少しショックであったのは、勤務先に相談している人が少ないという点です。職場の理解がなければ介護と仕事の両立は難しいのではないでしょうか。
ただ、2013年1月時点の結果ですので、
現在、同様の調査があれば、勤務先に相談している人が増えていることを期待したいと思います。
就労者と離職者の違い
セミナーでは上記の介護についての相談先についての調査結果が紹介されましたが、関心を持ちまして、もとの調査と結果に当たってみたところ、さらに、最も助けてもらった人についても質問しておりましたので、その結果をこちらに記したいと思います。
相談先についての質問は複数回答でしたが、最も助けてもらった人については単数回答です。
■就労者251名(現在介護をしている):最も助けてもらった人
1位 | ケアマネージャー | 31.1% |
2位 | 家族・親族 | 23.9% |
3位 | いない | 17.1% |
■離職者994名(介護をきっかけに退職):最も助けてもらった人
1位 | 家族・親族 | 30.1% |
2位 | ケアマネージャー | 18.0% |
3位 | いない | 17.1% |
介護についての相談先や、最も助けてもらった人の回答から、仮説として見えてくることは、
・ケアマネージャーを頼れるかどうか
(あるいは)
・この人は信頼できると思えるケアマネージャーに出会えるかどうか
これらが、「介護をしながらの就労継続」と、「介護による離職」とを分ける要因となっている可能性です。
地域包括支援センターに相談してみよう
今回のセミナーでは、川内さんは、さきほどの介護についての相談先の結果をもとに、
ケアマネや地域包括支援センターにもっと相談をしようという立場でお話をされていました。
地域包括支援センターへの相談に関して、「行うことリスト」も示されました。
〇探す
「地域包括支援センター(及び)親が住んでいる町名」(2語で検索)で検索
〇相談する
訪問の必要なし!まずは昼休みに電話でOK
〇地域の情報も調べる
⾃分での情報収集も大切
このように具体的に示してくださったのは、とても分かりやすく思います。
また、参加者との質疑応答の中で、「ケアマネジャーから提案されたプランについて疑問があったり、ご自分の方針に沿っていないと感じたりした場合は、地域包括支援センターにも相談してみてください」という趣旨の見解を述べられていたことは印象に残りました。
そうすれば、疑問が解決したり、代替案が得られたりする可能性が増すと思います。
終わりに
参加者に配布された資料の中での、地域包括支援センターについての説明ー地域の高齢者を主に対象とした保健福祉に関する総合的な相談窓口ーとともに、「地域包括支援センターに相談してみよう」という川内さんのメッセージをカフェストの読者の皆様にお届けします。
そして、「勤務先にも相談してみよう」というメッセージを追加してみたく思っています。
(終)
(文:星野 周也)
NPO法人「となりのかいご」のサイト
川内さんの書籍
『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずに済む方法』(ポプラ社) 2018/3/14
<その他参考>
平成24年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書(平成24年度厚生労働省委託調査)|厚生労働省のサイト
(このうち、労働者調査と、概要版の2つの資料を参考にしました)