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米国発アルツハイマー病予防法のリコード法と食事① 概論

Hand placing petri dish on medical diagram. Artwok is copyright free and was published in 1844 in Systematischer Bilder-Atlas zum Conversations-Lexikon, Ikonographische Encyklopaedie der Wissenschaften und Kuenste.

 

 

リコード法はアメリカで開発されたアルツハイマー病予防のプログラムです。
食事はリコード法の要でもあります。

 

本記事ではリコード法が勧める食事や食生活についてご紹介します。

 

本年、日本語訳が上梓(原典は昨年上梓)された、『アルツハイマー病 真実と終焉“認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』の著者のデール・ブレデセン氏(アルツハイマー病などの神経変性疾患についての研究者で、臨床医でもある。)がリコード法(注1)の開発者です。

 

注1:認知機能の低下(COgnitive DEcline)の回復(REverse)にちなみ、リコード法(ReCODE)と呼ばれています。

 

 

 

1. ケトフレックス12/3(トウェルブスリー)

 

ブレデセン氏が掲げる食生活の方針は「ケトフレックス12/3」です。

 

 

1-①「ケトフレックス12/3」のケト(ケトーシス)

 

ケトーシスとは炭水化物ではなく脂肪を分解して、燃焼(エネルギーを生み出す)している状態です。

 

体の一番のエネルギー源は炭水化物ですが、炭水化物が不足したときには、肝臓が脂肪を分解し、ケトン体を産生します。
ケトン体は肝臓からその他の臓器(心臓や筋肉や腎臓や脳など)に運ばれ、細胞内でエネルギー源となります。

 

ケトーシス(脂肪の分解)を促進する(炭水化物ではなく脂肪をエネルギー源とする)ためには、「低炭水化物食、すなわち、糖類、パン、ジャガイモ、白米、ソフトドリンク、アルコール、キャンディー、ケーキ、加工食品などの炭水化物食品の摂取を最小限にすることが必要」だとブレデセン氏は言っています。

 

 

1-②「ケトフレックス12/3」のフレックス(緩やかな菜食主義)

 

フレックスは、緩やかな菜食主義(flexitarian diet)です。

 

ブレデセン氏は「深緑から鮮やかな黄色やオレンジなど、できるだけ彩り鮮やかな野菜」を勧めています。また、ブレデセン氏の上述の翻訳本を監修した医師の白澤卓二氏は、レインボーフーズという言い方をして、カラフル野菜の健康効果を指摘しています。具体的には、食材を赤、黄、緑、白、紫、茶、黒のグループに分けて、毎日
の食事にバランスよくとり入れる
ことを勧めています。

 

 

1-③「ケトフレックス12/3」の12/3(トウェルブスリー)

 

12/3は空腹時間を示しています。

夕食から次の日の朝食まで12時間空けることと、夕食から就寝まで3時間空けることをプレセデン氏は勧めて
います。白澤氏は「プチ断食」という言い方もしていますが、絶食はケトーシス状態を引き出します。

 

2. 脳のエネルギー源は?

 

ブレデセン氏は炭水化物をエネルギー源として使用することと脂肪をエネルギー源として利用する(ケトーシス)ことのスイッチの柔軟な切り替えが重要と述べています。

 

低炭水化物食や絶食はエネルギー源の切り替えを促すということではないかと考えられます。

 

脳のエネルギー源は何かに関して、日本初のリコード法認定医(ブレデセン氏が創立したリコード法の普及団体
“MPI Cognition”に登録された医師)の今野裕之氏は、脳をハイブリッド車(ガソリンと電気の2つのエネルギー
源がある)にたとえ、脳がブドウ糖(炭水化物が分解されて得られる)のみならず、ケトン体(脂肪が分解して
得られる)をエネルギー源とできる
と説明しています。

 

そして、アルツハイマー病では、2つのエネルギー源のうち、ブドウ糖が使えない状態になっており、体内で
ケトン体が生成されることで脳のエネルギー不足が解消され、認知機能も改善すると言っています。

 

ケトン体を産生しやすい脂肪が知られています。中鎖脂肪酸(で構成された油)です。脂肪酸は油の主成分で、
炭素の数が多いものを長鎖脂肪酸、(長鎖脂肪酸と比べて少なく)6個から12個のものを中鎖脂肪酸と言います。
中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸に比べ、効率よく(4~5倍速く)分解され、ケトン体を産生しやすいという特徴があります。
中鎖脂肪酸はココナッツオイルや母乳に含まれています。「認知症にはココナッツオイルがいい」と言われる
のは、このためです(注2)

 

注2:今野氏は、ココナッツオイルの摂取に関する注意点として、「1日にとる量は大さじ2杯程度」(ただし、最初は胃腸の様子を見ながら少しずつ増やしていく)、「炭水化物を一緒にとらない」(たんぱく質はO.K.)、「起床後など絶食の時間が長いときが効果的」と述べています。

 

 

概論としては以上です。キーワードは「ケトフレックス12/3」です。その関連で中鎖脂肪酸やココナッツオイル
についてもお伝えしました。次回の記事では日本での導入について考えるべきことのお話をします。

 

(文:星野 周也)

 

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<参考図書>

  • デール・ブレデセン著、白澤卓二監修、山口茜訳(2018)『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム株式会社)
    (編集者注:山口茜の「茜」のくさかんむりは正確には6画のくさかんむりです。)
  • 白澤卓二(2018)『Dr.白澤のアルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる』(株式会社主婦の友社)
  • 今野裕之(2018)『最新栄養医学でわかった!ボケない人の最強の食事術』(青春出版社)

 

 

 

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