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近い将来、東京は“介護バブル”になる?withコロナでどうなる?

 

作曲家の筒美京平さんが昨年10月、亡くなりました。
作曲したシングル曲の国内での総売り上げ枚数は7560万枚を超えていて、国内最多記録です。

筒美京平さんの作曲リスト

とは言え、筒美さんのお名前がきちんと頭に入っていたわけではないのですが、

 

「ブルー・ライト・ヨコハマ」(歌手はいしだあゆみ)
「木綿のハンカチーフ」(歌手は太田裕美)
「ギンギラギンにさりげなく」(歌手は近藤真彦)
「仮面舞踏会」(歌手は少年隊)

 

など作曲されたリストを見ると、よく知っている曲ばかりです。
音楽もすぐに思い浮かびますね。

サザエさん

「お魚くわえたどら猫 追っかけて」で始まるサザエさんのオープニング曲も筒美さんが作曲されたということで、驚きました。これほどまでに筒美さんの作曲した音楽が自分たちの暮らしの中に及んでいたのかと。

「木綿のハンカチーフ」とその時代

そして、曲には作られた時代の社会状況が反映されています。
『地域介護経営 介護ビジョン』2020.MAY No.203(令和2年4月発行)で、『介護の未来はどうなる?』という特集が組まれています。

 

 

「木綿のハンカチーフ」(1975年)の曲を素材に、その時代をふりかえり、考察している文章があったので、ご紹介したいと思います。

 

あの歌は都市集中型社会のムードを象徴していると思います。地方で付き合っていた恋人同士の歌なのですが、男性は“東”へと行ってしまう。これは暗に“東京で就職した”ことを示しています。やがて男性は都会の生活が楽しくなり、地元に戻ってこなくなる。それで故郷に残った女性が『涙を拭くハンカチーフをください』という歌。当時、みんながこの歌に共感した。なぜなら、この歌が流行ったころ、日本は『すべてが東京に向かって流れる』時代だったからです

 

 

この文章は京都大学の広井良典教授に取材した記事(題:未来の社会は「ケア」が原動力になる)の中で書かれています。

 

なるほど、昔、学校で習ったとおり、高度成長期(1950~1970年代ごろ)に、地方の農村出身の若者の多く(いわゆる団塊の世代)が、東京へ移動しました。

 

この曲の作詞を担当した松本隆さんは、とある記事の中で、ディレクターから「松本くんの歌はずっと東京で生まれ育った人の内容だから、地方の人にはうけない」と言われ、そのディレクターが九州の人で炭鉱町で生まれ育った人だったことから、ディレクターをモデルに詞を書いたと言っています。

近い将来、東京は“介護バブル”になる?

地方の若者の多くが東京へ移動したことの帰結として、

 

『高度成長期に東京へ流入してきた大量の若者が、一斉に歳をとりはじめる』現象が始まる

 

10年後には、東京のメイン産業が介護になるかもしれません

 

と広井教授は言われています。
広井教授の説明を受けて、その記事では近い将来、団塊世代の存在を背景に、東京で一時的に“介護バブル”のような現象が起きる可能性はあるとまで書かれています。

AIによる未来シナリオ予測ー“都市分散型”と“地方分散型”ー

もともとは、10年後というスパンではなく、2050年に、日本は持続可能かという問いを立てて、広井教授が関わる研究チーム(日立京大ラボ)がAIに投げかけてシミュレーションした結果に基づく記事で、より先を見据えた議論が本題ではあります。

 

AI を用いたシミュレーションにより2018年から2052年までの 35 年間で約 2 万通りの未来シナリオ予測を行ったそうです。
そして、それに基づく解析により、

 

・2050年に向けて日本社会が持続するためには“都市集中型”と“地方分散型”という2つのシナリオのグループに分かれる

・この2つの選択肢のうち、持続可能性が高いのは“地方分散型”である

 

という結果が得られたということです。

withコロナでどうなる?

さて、今、“都市集中型”と“地方分散型”というキーワードを手にしました。
高度成長期に、若者の多くが東京へ移動したという人口の流れについても確認しました。

 

 

短期的には、東京で高齢化が進み、介護事業も東京や都市部に集中する流れは避けられないのかもしれません。

 

しかし、今、足元では、東京都からの人口流出が続いていると言われています。2020年の7月以降、5か月間、東京からの転出者が転入者を超過しています。それはもちろん、新型コロナウィルス感染拡大やテレワークの普及が原因と考えられます。

 

AI を用いたシミュレーションは2017年に行われました。そこではさすがに、このコロナの状況を含めて検討することはできていないのではないでしょうか。

 

ある記事では、コロナ禍が東京一極集中に変化をもたらしつつあると書かれています。
コロナ禍は確かに人々の意識や行動を変えていると思います。
“地方分散型”という言い方がまだぼんやりとしていると感じられることもあるため、“地方分散型”に向かっているとは言いにくいです。しかし、“都市集中型”や“東京一極集中”という難攻不落にも見えた価値が、人々の間で色あせて見え始めていると感じています。

 

(文:星野 周也)

 

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