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認知症|発生機序~さまざまな仮説~  

a female doctor or surgeon is analysing the digitally generated scans of a human brain

 

認知症の原因やその症状に対する治療薬など、今も多くの研究が進行していますが、今回はその発生機序にフォーカスして、現在論じられている、さまざまな仮説についてご紹介します。

 

「アミロイド」仮説

現在、多くの研究者の中で広く受け入れられているのが、この「アミロイド」仮説
アミロイドβ蛋白(Aβ)の前駆体蛋白(APP: amyloid precursor protein)からの分解によって生じるAβが、何らかの要因で脳内に沈着、この過程でタウ蛋白の蓄積、そして神経障害を引き起こし、最終的には神経伝達物質の異常や神経細胞死に至り、認知機能障害やBPSDといった症に影響してくる、という発症機序の仮説です。
また、APPをコードする遺伝子変異を伴った家族性アルツハイマー病(AD)があることも知られています。

「アセチルコリン」仮説

アルツハイマー型認知症では、アセチルコリン系ニューロンに強い変性が認められ、この中核症状にはアセチルコリン系障害が関与すると考えられることから、ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬が臨床使用され、アルツハイマー型認知症の中核症状に対する効果が得られています。
しかしながら、例えば、「対象者の脳内に、アセチルコリンに反応する神経細胞が必ずしも十分量残存していない場合」、また「アセチルコリン作動性ニューロンのみでなく、皮質や海馬の標的部位にも障害がある場合」、さらには、「アセチルコリン作動系以外にも、ドーパミンやセロトニン、グルタミン酸など、さまざまな神経伝達物質の障害もみられる場合」、その他、さまざまなタイプの認知症が併発する「混合型認知症である場合」などなど、発生原因の特定についてはケースバイケースで、その治療効果には個人差も大きいと考えられます。

「NMDA受容体」仮説

アルツハイマー型認知症における記憶障害には、グルタミン酸作動性神経系も関与するといわれています。アルツハイマー型認知症ではシナプス間隙のグルタミン酸濃度が持続的に上昇、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA(N-methyl-D-aspartic acid)受容体が持続的に活性化されているため、シナプティックノイズ(持続的な電気シグナル)が発生し、記憶を形成する神経伝達シグナルが阻害されることで、記憶や学習機能が障害されるとされています。
また、NMDA受容体はカルシウムチャンネルと連動しているため、高濃度のグルタミン酸による過剰な興奮が生じると、カルシウムイオンが大量に流入、必要以上に酵素が活性化され、細胞毒素を誘発して細胞死が起こるとも考えられています。
それらを背景として、NMDA受容体を阻害することにより、アルツハイマー型認知症における①記憶・学習機能障害、及び、②神経細胞障害を抑制する、という目的でNMDA受容体遮断薬が開発されました。

 

 

現在、さまざまな治療薬、また発生機序についての研究がなされています。こうした数々の研究が、実際の介護現場や在宅ケアにおいても、何らか有効な手立てとして活用される日が来る将来を、今後も期待していきたいですね。

 

 

 

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