認知症の“根本”治療薬は未だ確立されていないものの、現在多くの研究者が
- タウ蓄積に対する治療薬
- 発症前の抗アミロイドβ治療薬
など、発症機序の上流にアプローチし根本治療を目指す薬物開発を進めています。
その他、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなど)やNMDA受容体遮断薬(メマンチンなど)など、認知症発症機序の下流へのアプローチ、つまり、認知症の進行を遅延したり、症状を抑制したりなどの効果が期待される薬物もあり、現在日本でも認知症の治療薬として使用が承認されています。
もちろん、認知症の治療は薬物治療にのみに依存するものではありませんし、治療薬の副作用が出る人もいるため、一概にはいえませんが、これらが認知症の中核症状の進行抑制や、行動・心理症状(BPSD)の改善につながるケースもあるそうです。
さまざまな治療薬が治験中、成功例が待たれるところですが、認知症の根本治療薬が未だない中、今わたしたちができる対策としては、認知症の兆候をいかに早期の段階で発見し、症状の改善、あるいは進行の遅延につなげられるかが、非常に重要なポイントになってきます。
中には、治療可能な認知症(頭蓋内疾患(正常圧水頭症、硬膜下血腫など)、身体疾患(低・高血糖、肝性脳症、尿毒症など)、欠乏性疾患(ビタミン欠乏症など)、内分泌性疾患(甲状腺機能低下症など)、薬物、感染、その他(うつなど))もあるため、自分自身の変化やご家族の変化など、少しでも気になったら、かかりつけ医・専門医などを受診し、「早期受診・早期発見」を心掛けていくことが大切ですね。
<参照>
- 「認知症研究の今後の課題 Current Issues in Dementia Research in Japan」日本認知症学会 理事長 ・ 東京都医学総合研究所 認知症プロジェクト 参事研究員 秋山 治彦
- 日本内科学会雑誌第103巻第8号 Ⅲ.認知症 2.新しい認知症治療薬の位置づけ (菱川 望、阿部 康二)
- 東京大学 医学部付属病院 老年病科「高齢者教室」『認知症の初期症状と予防法』講演内容