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密着!「認知症と向き合う介護現場から」第4回

初出:2018年8月23日|最終更新:2020年6月8日

 

 

セントケアホーム鵠沼(以下、ホーム鵠沼)の所長(注:初出日時点での肩書)
井藤知美さんへのインタビュー記事の第4回目(全5回)です。

 

 

今回のキーワードは共感的な関わりです。

 

 

ホーム鵠沼の所長の井藤さん(左)と計画作成担当者の兼平さん(右)
注:肩書は初出日時点のものになります。

 

 

介護現場では、認知機能が低下して物忘れが進み、同じことを繰り返し言われるお客様とお話をすることがあります。
井藤さんが紹介されたのは「夕ご飯を食べていない」と繰り返して言うお客様の事例です。
井藤さんと、井藤さんが信頼を寄せる計画作成担当者の兼平さんの語りを見てみましょう。

「夕ご飯を食べていない」と繰り返すお客様の事例

井藤さんの語り① 理解が足りないスタッフだと説得をしてしまう

「つい先日だと、1時間前に夕ご飯を食べられたのに、『どうしよう、夕ご飯を食べていないのよ、あなた食べた?』と言われて。そこを、認知症への理解が足りないスタッフだと『食べましたよ』と説得をしようとしてしまうんですよね。『ほらみて。今日のメニューはこれとこれとこれで、さっき食べたじゃないっ』と言ってしまうんです。」

 

「だけどご本人の中ではそこがスポッと抜けている(覚えていない)わけですから、『食べていないのにこの人(スタッフ)は何を言っているんだ』ときょとんとされてしまいます。」

井藤さんの語り② 食べていないところに共感

「だから、食べていないところに共感して、『そうか、私も食べていないんですよ』という共感から入り、『明日の朝ごはんは早めに作ってもらいましょうね』とできるだけ未来につなげたり、別の話をしたりして。ごまかすというわけではなくて、ちょっとずつ話をずらして、どこかで糸口をつかんだら、そこから話をすりかえたりします。先日は前やっていたお仕事の話にすりかわっていきました。」

井藤さんの語り③ 何かが満たされていないのでは?

「おなかが空いたから『夕ご飯を食べていない』と言っているわけではないと私は思っています。何かが満たされていないのが食につながっているんですよね。その満たされていないものは何かなと考えます。必要とされている自分であったり、輝いている自分であったりの話をすることで、幸せな気持ちになられて、寂しさが解消されて、話を聞いてもらえたと感じていただけると、食べ物のことはちょっと忘れられたりするんですよね。」

兼平さんの語り

「(夕ご飯を食べていないと言われるのは)時間的なこともあると思います。遅くなればお部屋の方に戻られますので。」

 

「夜だけではないんです。朝も昼も食べていないと言われるんですけど、ただ、朝や昼は(手持ち無沙汰の)時間が短いですし、いろいろとやることが日中はあります。でも、どうしても夜ごはんは(午後の)6時半から7時の間に終わってしまいますので、やっぱり寝るには早すぎるし、どうしても落ち着かなくなられて、フロアとお部屋を行ったり来たりしている間に、『あれっまだこんな時間だけど、私まだ、ごはん食べてないわよね』ということになるんだと思います。」

Q.共感を持って関わっているのですね?

井藤さんの語り

「はい。でも、それ(繰り返し同じことを言う)がずっと続くわけではないんですよね。それが何年も続くわけではなくて、出てくる症状は次から次へと変わっていくので、スタッフもむしろ今のこの期間を楽しめたらいいなと思います。今日はどの話題で乗り切るかみたいな感じで考えてもらえたら…。(そう考えることは)ほんとうはよくないことかもしれないんですけど、でも、認知症の方々との日々をスタッフも楽しんでくれたらいいなって。」

 

「そういうのを見てくれたスタッフが、ああいう対応をするんだなって感じてくれたら良いですね。でも、ベテランさんがやったことは新人が同じことをやって通用するかと言ってもそうではないんです。スタッフには、いろんなことを試して自分の引き出しを増やしてほしいなと思います。」

編集スタッフのコメント

同じことを繰り返し言う方に対して、ごまかすのではなく、共感的に関わり、しかもそのプロセスを日々楽しむと言えるのは素敵なことですね。

 

いよいよ次回が最終回になります。

 

 

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