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密着!「認知症と向き合う介護現場から」第5回

初出:2018年8月30日|最終更新:2020年9月3日

 

 

一か月にわたり、セントケアグループホーム鵠沼(以下、ホーム鵠沼)
の所長(注:初出日時点での肩書)の井藤知美さんへのインタビューを連載してきました。

今回(第5回)がいよいよ最終回となります。

 

 

キーワードは地域との関わりです。

 

Q.地域についての考えをお聞かせください。

 

「スタッフにはここが人が集まる場所にしようって発信を続けています。気軽に相談したい、あの人に会いたいと思って来てもらえる場所にしようと。」

 

「そういう場所にするためにやはりここにいるお客様に幸せだと思ってもらえて、スタッフもここでの仕事に生きがいを感じられて…。それが出来たときに自然に人が集まってくると思います。」

 

「皆さん必要とされたいと思っているんです。自分の存在意義と言いますか、人として人から認められたいと。
誰かの役に立っていると思えると自分の存在意義を感じることができるのと同じです。
お客様たちはもともと地域の方々です。お客様には、(ご自分が)地域に必要とされているということを感じていただきですし、スタッフにもそう感じてほしいです。そして、ホーム鵠沼が地域から必要とされているんだと感じてもらいたい。そのために、(ホームが)置き去りにされたり、忘れ去られないようにしたいと思います。」

 

Q.地域についてそう考えるようになったきっかけについて教えてください。

 

「『地域に出て行かなければ』と思ったのは、会社の研修で話を聞いたきたことがきっかけでした。はじめは、『地域包括?』、『うわーっ』と思うわけですよ。地域に発信と言うけれど、どうすればいいのだろうと思って。在宅のサービスであればそれがやりやすいと思うのですが、グループホームは、その中で完結しようと思えば完結できてしまいますので。」

 

「その狭い世界しか知らなかった私はどうやって地域へ出ていけばいいのかと思ってしまったのですが、だんだんとグループホームが生き残っていくために、地域から必要だと思っていただかなくてはと考えるようになりました。自分たちが認知症ケアのプロの集団だという意識をきちんと持って、認知症の方々と一緒に過ごせるまちづくりを、自分たちから発信していかなくてはと思うようになりました。」

 

「藤沢市はそういう意識が高いと思います。会社が組んでくれて、先進事例があるということで『あおいけあ(注:藤沢市の高齢者向け介護福祉サービス。小規模多機能型居宅介護・デイサービス・グループホームを展開している)の見学へ行きました。
地域に溶け込む感じはこれだなと思いました。」

Q.「あおいけあ」の見学で学んできた地域に溶け込む感じについて教えてください。

 

「通りがかりの小学生とかが普通にふらりと寄って中にいて、『あれっ、この子なんでいるの?』みたいなことがあって。どの方が利用者さんでどの方がスタッフかも分からない。スタッフでも利用者でもないけど、なんだかいる方もいらして。」

 

「(視察に行った際)ご利用者のみなさん、(建物の)中にはいらっしゃらなかったんですけど、畑にじゃがいもを取りに行っていると聞きました。そのじゃがいもを取って、そのじゃがいもでコロッケをつくって、収益をあげて、そのお金でみんなで温泉に行くんだと言ってました。だから、温泉に行くために今じゃがいもを取りに行っているのですね。それを聞いて、何か生きるってこういうことだなって思ったんですよね。」

 

「昔、駄菓子屋だったという利用者さんが『あおいけあ』でも駄菓子屋をやられていました。(認知機能の低下により)計算はできなくなられているそうですが、(代わりに)買いに来た子供たちが自分たちで計算していました。
こうして、自然と人が集まる仕組みがつくられていて、そういうのがすごくいいなと思ったのです。」

Q.良い実践の事例から刺激を受けたのですね?

 

「はい。認知症の方への関わりにはちょっとしたコツというか、そういうのがあって、ちょっとの助けがあれば、自宅で生活ができる方、地域にたくさんいらっしゃると思うんです。あの人認知症かなって、もしかして道に迷っておられるのかなって、そういう方がきっといらっしゃると思います。
そのような方に介護職の人でないと関われないのではなくて、介護職ではなく、街に住んでいる普通の小学生とかがお手伝いできるようなまちになっていかなければならないと思います。私たちからも、そのまちづくりにつながる取り組みをしてければと思っています。」

編集スタッフのコメント

数年前から交通事業者が「声かけ・サポート運動」を実施していて、駅構内でポスターを見かけます。
そこでは、「『お手伝いしましょうか』お声かけ自体がサポートです」、「『大丈夫ですか』お困りの方にはひと言を」、「お困りの外国人には『May I help you?』のひと声を」と例が示されています。
認知症の方にどう声をかければよいでしょうか。困っているけれど、どういうことで困っているかがご自分で整理できず、うまく伝えることもできないと聞くと、難しく感じられるかもしれませんが、井藤さんが言われるようにちょっとしたコツ、ちょっとした一歩と思います。
認知症と向き合う介護現場からそういうノウハウを発信できたら良いと思います。

 

 

<参考>

記事の中で出てくる、井藤さんが見学に行かれた「あおいけあ」のホームページです。
株式会社あおいけあ

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