密着!「認知症と向き合う介護現場から」第2回

2018/08/09
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初出:2018年8月9日|最終更新:2020年4月14日

 

 

介護現場のリアルな肉声を届ける「認知症と向き合う介護現場から」第2回(全5回)。

 

第1回に続き、セントケアグループホーム鵠沼(以下、ホーム鵠沼)の所長(注:初出日時点での肩書)井藤さんの介護や認知症ケアに対する考えを取り上げていきます。

 

 

今回のインタビューで浮かび上がってきたキーワードは尊厳です。

 

Q.介護の仕事のイメージをお聞きします。

※( )内は取材者による補足です。

 

「最初はなんて仕事を選んでしまったのだろうと思いました。今でこそお客様の尊厳を守ると口癖のように言いながら仕事をしていますが、当時は自分の尊厳がない仕事と感じていました。我慢ばかりですし。」

 

「先輩でかっこいい仕事をされる方がいました。認知症の方への接し方がすごく素敵な方でした。仕事を教える際も、教えてやるという態度ではなく、悪いけど手伝ってくれと言われて、自然に(やり方を)見せてくれました。介護の仕事をしている人は凄い人間力があって、倫理観が高いと感じました。」

 

「そういう中で介護職に対する意識が変わりました。これは毎日が勉強だし、私がいかに人として色んな事ができていなかったかという事を思い知らされました。そのうち、介護の仕事ってこんなに素敵な仕事だよ、認知症の方と関わることはこんなに素晴らしいことだよというのをみんなに知って欲しいと思えるようになりました。」

 

Q.介護や認知症ケアについて大事にしていることは何ですか?

 

「どうしても介護は自分たちがお世話をしているという気になったり、お客様に指示をしてしまったり、ああしてください、こうしてくださいと先回りしてしまったりします。でも、あくまでも主体はお客様で決定するのもお客様で、その決定が難しいときに、決定をするお手伝いをするのが私たち。(私たちが)決めたことをやっていただくのではなく。」

 

Q.そういう考えに至った経緯について教えてください。

目上の方に対する言葉づかい

「介護の仕事を始めて、最初の頃に、若いスタッフがお客様に偉そうな言葉をかけているのを見ました。『~して』とか『そんなことを言わないの』とか。そこに違和感がありました。目上の方に対してそういう言葉づかいはないんじゃないかと。介護とは関係なく、普通に人として。私にはあれはできないと思いました。」

お客様から教わったこと

「脳こうそくの後遺症で片まひの方がいらっしゃいました。その方が夜勤中、毎日転倒をしてしまうのです。私は、部屋にセンサーをつけて、センサーが(反応して)鳴って、介護スタッフが訪ねるというのが好きではありませんでした。」( 取材者による注:介護現場では、転倒リスクがあり歩行時に見守りが必要とされた方のお部屋に、ご本人がベッドから起きたことを感知するセンサーを設置する対応をすることがあります。)

 

「ご本人にスタッフを呼ぶ能力が残っているのであれば、用があるから来てほしいと言ってもらうのが良いと思いました。そういう能力をなくしてほしくなかったので、呼んで頂くようにしました。これを鳴らしてくださいと、鈴を渡しました。」

 

「でも、そのお客様は鳴らさないんですよね。鳴らさないでお一人で立たれて、倒れていて。当時、そのお客様はおむつをあててもいました。『万が一のときにも汚れないようになっているから大丈夫』と伝えていました。言ってはいけないことだったんですけどね。『呼んですぐに来なくてもベッドで待っていて下さい』と言っていました。そしたらその方が『だってかっこ悪いじゃんか』とおっしゃったんですね。」

 

「私たち毎日勉強させていただいているんですよ。ありがとうございますと言っているんですけど、ご本人は情けないと思っていて、『だってかっこ悪いじゃんか』と思わせてしまっていました。それをなんとかかっこ悪いと感じていただかないようにするためにはどうすればいいかとスタッフたちと考えるようになりました。」

編集スタッフのコメント

相手の尊厳に配慮し、いろいろ考えて関わっていたものの、十分ではなかったと気づかされた経験は介護現場で働いている人なら覚えがあることではないでしょうか?

 

次回に続きます。乞うご期待!

 

↑ ↑ ホーム鵠沼で見かけたかわいいクマのぬいぐるみです!

 

 

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