こんにちは、認知症Cafést編集スタッフのSです。
橋田寿賀子さんに取材した切り抜き記事
脚本家の橋田寿賀子さんが4月に亡くなりました。
橋田寿賀子さんに取材した新聞記事を切り抜いてずっと持っておりましたので、その記事に関して少し書きたいと思います。
注:私が持っていた切り抜き記事の一部を撮影しました。
この切り抜き記事は朝日新聞2018年1月12日29面の記事です。
デジタル版もあります。
(家族って:9)自立し合う親子、互いのため 脚本家・橋田寿賀子さん(有料会員記事)|朝日新聞デジタル 2018年1月12日
さらに、この記事は動画にもなっていて、そこでは橋田さんの生の声を聞くこともできます。
動画:橋田寿賀子さんが語る「家族の形」|朝日新聞社 2018/01/12(YouTube)
嫁姑問題
この記事や動画でまず興味深いと思うのが、ご自身の結婚生活で「お姑さん(の存在)がすごく新鮮だった」というご経験から、創作意欲をお持ちになられて、嫁姑問題を題材に「となりの芝生」(1976年)というホームドラマを書かれたという点です。
私がおかずを作ると、義母は「こんな水くさいもの食べさせて」と怒る。「塩分控えめにしないといけないんで」と言うと、家族に「口答えするんだで、今度の嫁は」って。弁解すると口答えになっちゃうのがショックでしたね。でも、この出会いがなければ、『となりの芝生』も『おしん』も生まれなかったかもしれない
『おしん』
『おしん』(1983年4月から放映が始まったNHKの連続テレビ小説)も生まれなかったかもとは…。
『おしん』は日本だけでなく、世界60か国でヒットしたと言います。
私は生まれていましたけれど、まだ小さかったので『おしん』の記憶はありません。
それゆえ、世界でヒットしたという状況は「史実」のように感じられますが、社会現象・文化現象として大変興味深いことです。
20世紀初頭の日本の貧しい田舎で育つおしんを、多くの人が愛した。おしんはさまざまな悲劇に見舞われながらも生き延び、スーパーマーケット・チェーンの経営者として成功する。
出典:ドラマ「おしん」が世界を魅了、そのわけは 文化や言葉にも影響|BBCニュース(2021年6月5日)
『おしん』については、橋田さんは上記の朝日新聞デジタル記事で、次のように言われています。
おしんは昭和天皇と同い年。その世代の女を通して昭和を描きたかった。義母も同い年で、「自分はおしんだ」と思ってたから、助かりました。義母にはすごく理屈があるんですよ。世代の違いで価値観が違うだけで、どっちも正しい。だから、正しい者同士の話が食い違っていくのを描きたかった
『おしん』の嫁いびり
『おしん』がテレビ放映された当時、佐賀ではちょっとした騒ぎになったそうです。
ヒロインが佐賀にある夫の実家に身を寄せた際に、姑(しゅうとめ)から嫁いびりを受けるという内容だったので、当時の副知事が「これでは佐賀に嫁が来なくなる」とNHKに抗議したのだとか。
義理の親を介護して模範嫁と表彰された時代
“昭和”の嫁姑問題に関して、カフェストのテーマである“介護”からも共有してみたいことがあります。
かつて多くの自治体で、嫁として長年義父母を介護した女性を表彰する制度を設けていたそうです。義理の親を介護して模範嫁と表彰された時代がありました。
高知県で行われていた家族介護者表彰制度についてこちらの記事では次のように書かれています。
表彰は70年にスタート。資格は、30歳以上なら5年以上、30歳未満なら1年以上、「寝たきり老人」の介護をしている嫁と孫嫁で、「常に強固な意志と信念を持って明るく誠実な生活を営み、人格円満で寝たきり老人の介護に心身共につくしている模範的な嫁」とされた。86年から対象を「模範嫁」から「優良介護家族」に変え、93年まで続いたという。
出典:義母の介護41年で「模範嫁」に 自治体が表彰した時代(著者は田中聡子氏)|朝日新聞デジタル 2020年5月6日
記事にある年数を年号に変換すれば、70年は昭和45年、86年は昭和61年、93年は平成5年になります。
2000年(平成12年)に介護保険がスタートしますから、昭和の後半から平成の前半にかけた介護保険前夜の時期と言えますでしょうか。
終わりに
昭和の後半から平成の前半にかけたこの時期に、私も生まれ落ち、小学、中学、高校と過ごしました。
実家では小学生のときに、父方の祖父母と同居するようになり、長男(父)の嫁である母が義父母の身の回りの世話をする姿を見て育ちました。
そのことが今現在、介護の仕事に関わっていることとつながってはいます。
令和の時代に介護をめぐり家族のありかたはどう変容していくでしょうか…。
(終)
<参考>
1. <橋田寿賀子さん死去>「おしん」嫁いびりで騒ぎに テレビ放映時の佐賀県(著者は花木芙美氏)|佐賀新聞LIVE 20210406
2. おしんの「嫁いびり」舞台でも 橋田寿賀子さんを悼む声(著者は松岡大将氏、大村久氏)|朝日新聞デジタル(有料会員記事)2021年4月6日
3. 第1回1984年授賞語|「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞
4. (介護とわたしたち)社会に染み付いた「嫁の役割」 家族社会学者・春日井典子さんに聞く(聞き手は田中聡子氏)|朝日新聞デジタル2020年4月7日
5. 物語・介護保険 第6話「ヨメ」たちの反乱(月刊・介護保険情報2004年9月号)|ゆき.えにしネット(大熊由紀子氏のサイト)
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