認知症ケアを取り上げた「プロフェッショナル仕事の流儀」を見て

2019/09/06
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こんにちは。認知症Cafést編集スタッフのマツです。

 

先日NHK総合TVで放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」では、認知症ケアのスペシャリスト3人が取り上げられていました。

 

  • 同じ目線で当事者にとことん寄り添う大谷るみ子さん
  • 当事者の普通の暮らしを追及する和田行男さん
  • 当事者の願いを全力で叶える加藤忠相さん

 

3者3様のやり方で当事者に向き合う姿は、どれも従来の介護というイメージを払拭するものでした。
今回はこの番組について、私なりの雑観をお伝えします。

介護者のスタンス

番組を見る限り、内容としては誰もが実践できる介護のスキルやメソッドというより、ほかにはまねできない職人芸……良い意味での属人性のようなものを感じました。
しかし、3人には共通するいくつかのスタンスや姿勢のようなものが感じられました。介護者の多くがこのスタンスを取り入れることで、上記3名と同じとまでは言わずとも、かなり高いレベルで当事者に満足していただける介護業界になるはずです。

 

  • 自分と同じ人格を持った個人として、対等な立場で当事者と接する(=劣った人という見方をしない)
  • できないことだけに目を向けるのではなく、できることにも目を向ける(=当事者ができないことだけをサポートし、できることは当事者自身にしてもらう)
  • その人なりの役割を作る
  • 一人ひとりに時間を使い、その人のリズムやテンポに合わせる
  • 当事者の言葉だけでなく、その裏側にある思いや心にまで目を向ける

 

筆者は全盲ですが、介護と同様に福祉として援助を受けることが多い立場として感じるのは、このようなスタンスで接することができる人は本当に少数であるということです。
そして今、筆者がこのように一般企業で働き充実した毎日を送れているのは、弊社のメンバーの多くがこのようなスタンスを持って筆者に接してくれているからにほかなりません(照れくさいので直接には言っていませんが……)。

 

一例をお伝えすると、筆者はオフィスのフロア内の移動には不便さを感じていないので、他のメンバーに誘導してもらうことはありません。ただ、知らない場所に出かけるときや外に昼食に行くときには、たいてい誰かが「一緒に行こうか」と声をかけてくれます。
また、業務内容はITエンジニアの端くれとして介護現場のIT化に携わっていますが、私にしかできない業務もあり、幾分かは当てにしてもらえていると感じています(勿論、悪い意味での属人化にならないように気を付けています)。

 

一方、多くの方が福祉というフィルタを通した瞬間に、相手は自分より弱い立場の人で、何でもかんでもしてあげないといけないと思ってしまいます。
はっきり書きますが、役割のない人生なんてつまらないですし、自分抜きで頭ごなしになんでも勝手に決めないでほしいのです。それは、寿命を全うするまで、絶対にそうです。

社会の中で普通に暮らす

また番組では、社会に出て普通に生活するということも大きなテーマだったと感じました。

 

以前の記事で取り上げた注文を間違える料理店や暗闇のエンターテイメントダイアログ・イン・ザ・ダークもそうですが、高齢者や障碍者(以降、まとめて当事者と書きます)が福祉という枠を超えた意味で社会に出て、普通に健常者のすぐそばにいること自体に、とても大きな意味があります。当事者が普通にそばにいることで、誰もが当事者が特別な存在ではないことを、自然に認識するようになるからです。

 

知らないことや分からないことに対して、人は誰でも怖さを感じ、距離を置きたくなるものです。逆に知ってしまえば怖さを感じることもなく、近寄ることに抵抗もなくなります。当事者が何か困っていたら、自然と声をかけられるようにもなるはずです。

まとめ

今回の番組では介護のプロとして、3名の方を取り上げました。この3名が実践されている取り組み自体は本当に素晴らしく、良くも悪くも他者が並び立てるようなものではないのかもしれません。
しかし、この3名のような方々に引っ張られるようにして、介護の現状は必ず変わっていくはずです。そのためには

 

  • 介護する側のスタンスを変えること
  • 介護される側が恐れずに、可能な限り外に出ること

 

この2点が、社会を変える重要なポイントになるだろうと感じました。

余談:ダイアログ・ウイズ・タイムのご紹介

前述のようなスタンスにいきなり変わるというのは、やはりとても大変です。しかし、その手助けになりそうなイベントが、この夏に開催されました。

 

ダイアログ・ウイズ・タイムは、豊かに年を重ねてきた70代以上の方と実際に対話することで、ネガティブにとらえられがちな老いについて見つめ直せるイベントです。
このようなイベントがもっと頻繁に開催されることで、我々は高齢者をもっと身近に感じ、一人の人間として尊敬し、対等な関係性を築けるはずです。前述したスタンスを変えるためには非常に有効な手立てだと感じています。

※現在、常設に向けてクラウドファンディングを実施中とのこと(9/20まで)。

 

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