認知症とは

認知症について

認知症とは、さまざまな要因により、脳の知的機能が全般的かつ持続的に低下し、判断力低下など、日常生活に支障が出ている状態のことです。
主な原因疾患として挙げられるものは、アルツハイマー病や脳血管障害などです。この2つの原因疾患が全体の約80%を占めています。
また、認知症を疑う際、目立つ症状に「もの忘れ」が挙げられますが、もの忘れには「加齢」によるもの忘れと「認知症」によるもの忘れがあります。

加齢によるもの忘れ

加齢によるもの忘れは、出来事の一部は忘れてしまいますが、ヒントがあれば思い出すことができるような状態です。
(例)昨日の夕食を食べたことは覚えているが、何を食べたのかが思い出せない

認知症によるもの忘れ

認知症によるもの忘れは、出来事全体を忘れてしまうため、ヒントがあっても思い出すことができず、記憶がつながらないような状態です。
(例)昨日の夕食を食べたこと自体を忘れてしまっている

認知症の種類と症状

どの認知症にも共通して発現しうる症状として、認知機能が低下したことで直接発現する「中核症状」に加え、環境や周囲との関わりの中で、感情的な反応や行動上の反応が症状として発現する「行動・心理症状(BPSD)」(「周辺症状」ともいう)があります。
※BPSD = Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia

中核症状

  • 記憶障害(物事を覚えられなくなったり、思い出せなくなったりする)
  • 見当識障害(時間や場所、やがて人との関係が分からなくなる)
  • 理解、判断力の障害(考えるスピードが遅くなる。二つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる。
    些細な変化、いつもと違う出来事で混乱をきたしやすくなる、など)
  • 実行機能障害(計画や段取りを立てて行動できなくなる)
  • 感情表現の変化(見当識障害、理解・判断の障害のため、周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができず、その場の状況が読めなくなり、ときに思いがけない感情の反応を示すことがある)

行動・心理症状(BPSD)

  • 徘徊
  • せん妄(落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやくなど)
  • 不潔行為(風呂に入らない、排泄物をもてあそぶなど)
  • 暴力、暴言
  • 妄想(物を盗まれたなど、事実でないことを思い込む)
  • 幻覚、幻視(見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりするなど)
  • 抑うつ(気分が落ち込み、無気力になる)
  • 人格変化(穏やかだった人が短気になるなど)
  • 睡眠障害      ・・・など

≪主な認知症の種類≫

  1. アルツハイマー型認知症
    アルツハイマー病の病因はまだ不明ですが、脳にアミロイドベータというたんぱく質がたまり、正常な神経細胞が壊れ、脳萎縮が起こることが原因の一つと考えられています。
    日本では認知症を引き起こす疾患のうち、最も割合が高く、その6割以上がアルツハイマー病だといわれています。
    主な症状として、中核症状、行動・心理症状(BPSD)などが挙げられます。
  2. 脳血管性認知症
    脳血管性認知症は脳の血管の障害で起こります。
    脳の血管障害の原因疾患としては、脳梗塞、脳血栓症、脳塞栓症、脳出血、くも膜下出血などが挙げられます。これら疾患の危険因子として、運動不足、肥満、食塩の摂取、飲酒、喫煙の習慣、高血圧症、高脂血症、糖尿病や心疾患など、中年期からの生活習慣が大きく関わっていると考えられています。
    日本ではアルツハイマー型認知症に次いで多く、全体の約2割を占めています。
    症状は、脳血管障害が起こるたびに段階的に進行し、障害を受けた部位によっても異なりますが、主に下記のような症状がみられます。

    • まだら認知症(全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶は保たれている)
    • 感情失禁(喜怒哀楽の感情がコントロールできなくなる)
    • 麻痺などの身体症状
  3. レビー小体型認知症
    レビー小体型認知症はアルツハイマー病とパーキンソン病の特徴を併せもつ疾患で、レビー小体という特殊なたんぱく質が脳にたまり、脳の神経細胞が破壊されることが原因と考えられています。
    特徴的な症状としては下記のようなものが挙げられます。

    • 認知機能の激しい変動(とてもはっきりしている時とぼんやりしている時がある)
    • なまなましい幻視(実際には存在しないものが見える)
    • 筋肉のこわばり(パーキンソン症状)
  4. 前頭側頭型認知症
    前頭側頭型認知症の病因はまだ不明ですが、脳の前頭葉や側頭葉に神経細胞の減少がみられ、タウ蛋白やTDP-43、FUSなどの異常なたんぱく質が蓄積することが発症に関わっているのではないかといわれています。他の認知症と異なり、指定難病に認定されています。
    特徴的な症状として、感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなるといった症状があらわれます。
     

    日本では、上記4種類の認知症が、認知症全体のおよそ9割を占めています。
    それぞれの認知症によって症状や特徴なども異なるため、医師やケアマネジャーに相談しながら、その方にあったケアを行うことが大切です。

MCI(軽度認知障害)について

MCIとは認知障害が出現しているが、日常生活には支障をきたしていない状態のことをいいます。ご本人やご家族からもの忘れ等の訴えがあるが、認知症の診断基準を満たさず、日常生活にも影響を及ぼさず、十分に自立した状態です。
高齢化による心身機能の変化は、その人の生活習慣、生活環境や社会的背景など、さまざまな因子に影響されて機能低下が起こるもので、個人差が非常に大きくなります。

また、高齢者は多くの疾患や症状を併せ持っているため、さまざまな身体機能の変化が起こり、これらが進行、悪化すると認知障害があらわれてくると考えられます。

認知症の予防と治療

定期的な運動、社会との交流、健康的な食生活、生活習慣病の予防などが、認知症予防につながると考えられています。
また、認知症を引き起こす病気には、早めに治療することで認知症症状の改善が可能なもの(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症など)であったり、また一時的な症状である場合もあります。そのため、早めに受診をして原因となっている病気を突き止めることが大切です。

また、アルツハイマー型認知症は薬で進行を遅らせることが可能な場合があり、早い段階から使い始めることが効果的だといわれています。

※東京都では、「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」を作成しています。
詳しくは下記パンフレットをご覧ください。

「知って安心 認知症 認知症の人にやさしいまち 東京を目指して」P.5-6

<参照文献>
厚生労働省 「認知症の基礎~正しい理解のために~」
厚生労働省 政策レポート 「認知症を理解する」
厚生労働省老健局 「厚生労働省の認知症施策等の概要について」
東京都老人総合研究所参事研究員 本間 昭 「認知症予防・支援マニュアル(改訂版)」