“息子介護”インタビュー「在宅で親の介護をしてみて感じたこと」(第2回)

2021/02/24
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在宅で親の介護をし、看取りもされた西山千秋さんへの“息子介護”インタビューの第2回です。

 

西山さんは父親も母親も脳梗塞で失語の状態でした。
「もう一度話して欲しい」と考え、専門職に働きかけています。
第2回ではその点を中心にお伝えします。
ストレス解消法についてのお話も興味深く、合わせてお伝えします。

 

第1回の記事はこちらです。

“息子介護”インタビュー「在宅で親の介護をしてみて感じたこと」(第1回)

 

西山千秋さん
現職:一般財団法人オレンジクロスの事務局長
(カフェスト編集スタッフが2019年7月4日撮影)

 

西山さんの在宅介護の略歴

2011年 父親を介護(介護期間は1か月半)
在宅(10日間)で看取る
2015年 母親の在宅介護を開始
2018年 母親を在宅で看取る

 

介護状況の補足(第1回の記事も踏まえて)

・父親も母親も脳梗塞が介護の原因疾患
・父親は90歳、母親は92歳で亡くなる
・父親のとき(病院に約1か月入院→その後、家で看取りをするという方針の下、退院→その後、10日間で亡くなる)は、ターミナルケアの時期で、介護の期間の目途が立っていたため、ほとんど西山さんが介護を担う
・母親のときは、脳梗塞による入院先で母親が弱っていくと感じて、在宅介護を決意し、ケアマネジャーをやっている妻の友達に依頼して、在宅介護の担当ケアマネジャーを引き受けてもらう
・在宅介護の前半は、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどを利用して、サービス利用のない日は、西山さんを中心に、家族・親族で介護を行う
・在宅介護の後半は看護小規模多機能型居宅介護(略称「看多機」)を利用
・看多機では、水曜は、訪問サービスを利用(看多機の職員が家に来る)、月・火・木・金・土は、通いのサービスを利用(看多機に母親が通う)、加えて、土曜か、金曜・土曜は看多機のショートステイを利用(看多機に母親が泊まる)し、サービス利用のない日(日曜)は西山さんが原則、介護をする

 

 

以下、西山さんによる“息子介護”体験談です。

自分で最適と思う“ケアプラン”を考え、提案する

要望は伝える

ケアマネジャーには、「親が失語なので、言語聴覚士(ST)をチームに加えて欲しい」、「車椅子だけれど、立てるようになって欲しい」など要望を伝えていました。
「こうして欲しい」と言わないとなかなか伝わらないというのが実感です。

ケア会議を主催

(母が看多機を利用する前は)ドクター、ナース、訪問介護、リハビリ(PT or OT)、言語聴覚士(ST)、歯科医師、歯科衛生士、福祉用具、デイサービス、ショートステイ、ケアマネジャーと、11の職種やサービスが母親に関わっていました。

 

多職種、多サービスが関わっており、ケアマネジャーが、これらのすべての人に同じ方針を共有させるのは難しいのではないかと感じました。
なので、私がケア会議を主催したこともありました。

母に関わるすべてのサービスの人に口腔ケアを行ってほしい

「話せるようになるかもしれないから口腔ケアを行ってほしい」と言っていました。
母の介護の担当になり、母のところにサービス提供に来た人は、ナースであれ、介護職であれ、口腔ケアや、口のまわりのマッサージをして欲しいと思い、伝えていました。

 

同じ目標の下で、多職種の人に関わってもらいたいと思っていたので、そこはケアマネージャー任せばかりにはせず、自分がケア会議を開いたりしたのです。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)には言語聴覚士(ST)を自費で派遣させた

母が看多機を利用していたときは、自費で、言語聴覚士(ST)に月1回、看多機に行ってもらいました。
言語聴覚士には母へのケアとともに、看多機の職員への指導をお願いしていました
注:制度上、看多機を利用しているときに、看多機の外部のサービスを追加で利用する場合は、そのサービスは介護保険外の扱いとなり、自費での利用となります。

 

もう一度、話してもらいたかったものですから。ダメだったんですが…。

 

でも、亡くなってから、看多機の職員が家に来て、「歌を歌っていましたよ」と教えてくれました。
その場面はビデオにも撮ってあって、確かに母が歌っていましたね。発語をしていました。

ストレス解消法

飲む/書く

介護をしていたときは疲れましたから、飲む量が増えました。

 

日々起こったことを日記に書いていましたが、それでいくらかスッキリできました。書くことはストレス解消法の1つでした。

同じ立場の人と話す(ピアカンファレンス)

高校のクラブの同級生2人に先輩を加えた飲み会も立ち上げました。
このメンバーは、ちょうど今、親の介護をしているという点で同じ立場でした。

 

月1回会って、話していました。情報交換の場になりましたね。
仕事の話や、趣味の話はせずに、介護の話しかしないというルールを設けて行いました。そうしないと単なる飲み会になってしまいますから(笑)。

 

私の親が亡くなった後も飲み会は、しばらく継続しました。介護を継続しているメンバーもいましたので、愚痴を言い合える場として続けました。
認知症の人と家族の会で行っていること、つまり、同じ立場の人で集まり、状況を共有しあうことと同じですね。
それはピアカンファレンスという言い方もされていますが、意味があると思います。

改めて、親の介護を振り返って
ー両親が元気なうちにしておいた方が良かったと思うことー

親が脳梗塞で、失語状態でした。特に母は3年間失語の状態でした。ですから、いろいろ聞こうと思っても聞くことができませんでした

 

意外と親の考えは知らないものです。
母が元気なときに、葬儀に呼んでほしくない人について話していたのは聞いていました。
しかし、延命治療を希望するのかや、在宅介護を希望するのかについて、はっきりと聞いていたわけではありません。

 

親が元気なときにいろいろ聞いておくことが必要だというのは、私が親と話すことができない立場を経験してみて、強く感じたことです。

 

 

 

(画像はIstockから購入)

編集スタッフより

西山さんが目指された介護は、積極的に機能の回復、機能の維持を目指すというもので、自立支援の介護と思います。

 

母に関わるすべてのサービスの人に口腔ケアを行ってもらいたいというのは、口腔ケアを食事の後の場面に限定するのではなく、他の関わりのときでも機会を見つけて、話しかけたり、口の周りのマッサージ(注:唾液腺マッサージのことと思います)をしたりして、発語という機能に向けて働きかけ続けることを望むということでしょう。

 

それは、決して無理なお願いということではなく、介護の仕事をしていて、自立支援の介護の理念を共有し、口腔ケアの重要性を理解している専門職であれば、自然に聞き入れることができる考え方のはずだと思います。

 

そういう積極的な介護の目標を多職種、多サービスの間できちんと共有できているだろうか?
そして、家族と思いをともにできているだろうか?
介護事業会社に属する立場としては、介護で働く私たちに対して、重要な検討課題が投げかけられていると思います。

注:西山さんへのインタビュー記事は今回で完結です。

 

(インタビュー・文:星野 周也)

 

 

 

 

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