94歳の母を介護するフジテレビ・須田アナウンサーの記事を読んで(2)

2019/05/08
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こんにちは、Cafést編集スタッフのSです。

前回はマツの視点で、今回は私(S)の視点で

前回、マツの視点で、94歳の母を介護する須田アナウンサーの記事に関する感想を書いてもらいました。

94歳の母を介護するフジテレビ・須田アナウンサーの記事を読んで(1)

 

須田アナウンサーの記事はこちらです。

「いまがいいとは思わない」94歳の母を介護するフジテレビ・須田アナウンサー 施設か自宅か葛藤の日々 | 出典 FNN PRIME

 

今回は、私(S)の視点で書いてみたいと思います。

介護施設利用の契機としての転倒と骨折―須田アナウンサーのお母様の場合―

須田さんのお母様が介護施設を利用する契機となったのは家での転倒とそれによる骨折と思います。

いまから7年ほど前、ガスコンロをつけっぱなしにするなど軽い認知症の症状が母親に出始めた。その後、父親の心臓の持病が悪化し入退院を繰り返すようになるなかで、今度は母親が自宅で転倒し脚の付け根を骨折、自力で歩くことが難しくなっていった。

 

母親はその後、夜中に自力でトイレにいこうとして、転倒。大きな音におどろき、2階で暮らしていた弟夫婦は飛び起きて助けに行った。そのようなことが何度かあるなかで、弟夫婦と娘は心配で安眠できなくなっていった。

 

そのようななかで在宅介護の限界を感じて、施設に預けることが決まったと書かれています。

介護施設利用の契機としての転倒と骨折―Sの祖母の場合―

今、私の母方の祖母は有料老人ホームを利用しています。
私の両親と家で暮らしておりましたが、ある日、家で転倒しました。そのときは祖母は自力で立ち上がり、母のところまで来て、「転んで立ち上がれずにいたけど、あなたに伝えたくてやっとの思いで来た」と言ったそうです。

 

金曜日の夕方でしたので、母は月曜日に病院に連れていくようだなと思いながら、様子を見ていたのですが、日曜日になったら祖母が全く身動きがとれなくなってしまったため、救急車を呼びました。
医者からは腰椎圧迫骨折と言われそのまま入院となりました。

 

その病院で3週間入院し、次の病院に転院となりましたが、転院先でも3週間で退院と言われていたので、母は老人ホーム探しを始め、今のホームにお願いすることになりました。

 

母からは自分ができるうちは在宅介護でと聞かされていましたので、ここは考えが変わったときでした。そして、ここでの切り替えは早く、息子の私から見て潔いと感じられました。

高齢者が骨折で入院した後の在宅生活を家族で支えられるか?

私の祖母の場合もそうですけれど、骨折で入院した後は、ADL(日常生活動作)のレベルが瞬間的に落ち込んだりして、支援の方法が入院前とは急に変わるわけです。
これを家族で対応するのは難しいだろうと思いますね。

 

私はかつて介護職として老人ホームで勤務しておりました。
身内でない高齢者が入院前後で状況が変わってホームに戻って来ても、同僚もいて、対応の仕方について相談できますし、客観的に見ることができたと思います。また、技術面での対応力や応用力は介護の仕事をしてきた者として応分に備わっていたと思います。そして、ここは身内ではないからこそですが、過去のその人の状態や情報にあまり左右されることなく、目の前の状態に合わせて対応をしていくことができたと思います。

 

しかし、仕事ではなくプライベートで、相談できる人もいないなかで、状況が変わった家族を介護するのはとてもできる気がしません。

高齢者が骨折で入院した後の在宅復帰が可能な条件とは?

東京都福祉保健局のホームページで高齢者が骨折したときの対応のナビがありますが、
(こちらです→知って安心 暮らしの中の医療情報ナビ

 

退院後は、家族で相談して、おばあさんが動きやすいように家を改修し、退院後は介護サービスなどを上手に利用しながら、みんなで頑張ろう…など書かれています。

 

在宅介護を継続するにも改修するかしないか、在宅サービスを利用するかしないかなど決断を下さなければならないわけです。
これらの決断を重ね、家族も生活のパタンをこのように変化させたならば、このように高齢者の在宅生活を支えられるという事例を実際に目にしたり、耳にする状況がそれなりの頻度でまわりに起こることがなければ、同様の事態が自分に起こったときに「できる」とは思えないのではないかと思います。

須田さんは悩んでいる?母は受け入れている?

須田さんは「これがベストだとは思っていない」と悩んでいると書かれています。

 

母はどうでしょう。
須田さんと同じで、「これがベストだとは思っていない」ようですが、須田さんの記事で感じるほどの深刻さはないと感じます。

 

母は今、熱心に祖母のもとへ通っています。
はじめのうちは、毎日ホームに通っていましたが、「数日に度でも大丈夫」と思うようになり、現在は数日に度の訪問と変化をとげています。

 

祖母が喜んでくれることもあると思いますし、祖母のADLのレベルが改善されていることもあると思います。
亡くなった祖父が残してくれたお金で祖母のホームの費用がまかなえるということもあるだろうと思いますが、祖母のもとへ通うことは母の張り合いや生きがいとなっているように見えます。

介護職としてはどうこの記事を読むか?

ホームをたずねたとき、須田さんの目に飛び込んでくるのは、なにをするでもなく、だれと話すでもなく、ただ、リビングの大きなテーブルにひとり突っ伏す母親の姿なのだ。

 

この状況に対して須田さんがどう思われたかは厳密には記されていないですが、「残念な状況」として記事では描かれているように思います。

 

ホームで働く介護職の立場ならば、ホームに訪問する家族に、ホームを利用する高齢者のこのような姿を見せたくないと素朴には思います。

 

ただし、いつまでも高齢者本人が自立的にアクティブであるということはないかもしれません。そこはご家族にも丁寧に伝えてご理解していただく必要があるかもしれません。
そのうえで、ナイーブな言い方にはなりますが、ホームに温かい空気や時間が流れ、そのような雰囲気が高齢者を包んでいるならば、家族の感じ方も変わるのではないかと思ったりします。
いずれにせよ、加齢を重ねて、以前とは様子が変わっていく高齢者を見つめる家族の感じ方に鈍感であってはならないと思っています。

 

 

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