UDトークを使ってみた!―音声文字化アプリでドナルド・キーンの文章を書き起こす―

2020/07/09
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こんにちは。認知症Cafést編集スタッフのSです。

UDトークというアプリを使ってみた!

以前のカフェストの記事「スマホアプリでQOL低下の防止」で、
マツが紹介してくれているUDトークというアプリを最近、使ってみました。

 

UDトークは、会話の内容を文字化してくれたり、入力した内容を読み上げてくれたりします。
マツの記事「スマホアプリでQOL低下の防止」では、UDトークの利用場面として、聴力が弱い方とコミュニケーションを取る場面が挙げられています。健常者がアプリに向かって話せば、聴力が弱い方のアプリには書き起こされた文字が届くということですね。

stayhome期間中、部屋の片づけが進んだ

今回のstayhome期間中、自分の部屋の片づけが進みました。
会社に出ていると、家のことを後回しにしてしまう悪い癖がありましたので、リモートワーク(在宅勤務)では、隙間時間を見つけて、家のことができるメリットを感じました。

 

片づけをしなくてはと思って、ずっと心に引っかかっていましたので、大分スッキリしました。

もともと、断捨離が得意ではない

もともと、断捨離が得意ではなく、部屋が片づいていないことの大きな要因でありました。

 

「思い切って捨てればきっと楽になるだろう」と思いながらも、思い切れずに保留状態のまま部屋に積み重なっていくものたち。

 

その代表選手が本や雑誌です。

本との別れの手続き

本棚の整理をしながら、久方ぶりに、再会を果たし、随分と手に取っていなかったことだし、整理対象にしようと決めても、いざ捨てるとなると名残惜しく思います。

 

そこで編み出したのが、出会った証や学んだ証を残すべく、読書メーターというサイトに感想を投稿したり、大事と思った箇所をワード文書に書き写したりしてから、捨てるという方法でした。
それが言わば別れの手続きでした。

UDトーク使用の動機―話したことがそのまま文字になるのなら、どんなにか楽なことだろう―

上記の手続きのうち、大事と思った箇所を書き写すのが骨の折れる作業です。
本の該当のページを押さえながら、該当の箇所を見て覚えて、パソコン上の文書に書いて、本とパソコンの画面を見比べて、書き写し間違いがないかを確認してというのは大変です。

 

そこで、話したことがそのまま文字になるのなら、どんなにか楽なことだろうと思いまして、UDトークを使ってみることにしました。

東京人

今回思い切って、断捨離してみようと思ったのが、こちらの雑誌になります。

『東京人』2013年9月号です。

 

そして、中をパラパラめくりながらざっと内容を見て、そのまま捨ててしまうのはもったいないと思われ、言葉を書き写しておこうと思った記事のタイトルがこちらです。

 

記憶に刻まれたいくつかの風景。(下の写真もご参照ください。)

作者はドナルド・キーンさん。

ドナルド・キーンさん

ドナルド・キーンさんは1922年米国生まれの日本文学研究者、翻訳者で、昨年(2019年)、東京都内の病院で死去されました。
2012年には日本国籍を取得されています。

 

1940年にニューヨークの書店で見つけた『源氏物語』の訳書が日本文学の出会いだったと言います。そして、研究者、翻訳者として古代から現代に至る日本文学を広く世界に紹介してきました。

 

『東京人』2013年9月号の記事は、そんなドナルド・キーンさんが90歳を超えたときに、ご自身の記憶に刻まれた「東京の玄関口」について書かれたエッセイ(以下、ドナルド・キーン『東京人』エッセイと略する)なのですから、プレミアムと感じずにはいられません。

音声文字化の正確さについて

どのくらいの正確さで音声を文字にしてくれるのでしょうか。

 

ドナルド・キーン『東京人』エッセイでは、
2012年に日本の国籍を取り、入国の手続きが簡単になったと述べた後に、記憶に刻まれた出入国の風景が書かれています。

 

 しかし、私の脳裏には往時の羽田空港の情景が刻まれています。昔は人が飛行機に乗る時は見送りに行くのが普通でした。自決二カ月前の三島由紀夫さんもいつもどおり羽田まで来て、無言の別れを告げていかれました。

 今となっては信じられませんが、当時は見送りの人も、旅立つ人と一緒に飛行機の中まで入れたのです。両手に一杯お土産をたずさえて。

 

では、この文章を読み上げたとき、UDトーク上では、どう文字化されているでしょうか?

 

「往時」が「王子」になり、「自決二カ月前」が「議決に1か月前」になり、
「無言の別れを告げて」が「無言の訳を続けて」になっておりますが、その他は、ほぼ正確に文字化されています。(私が正しく発声して読めていたのかという問題も当然あります)

 

また、話すと、ほぼそのタイミングでスマホ上で文字が表示される(音声の文字への変換は瞬時に行ってくれる)ので、「文字化を待つ」という工程がなく、快適です。

会話ログを送れば、「書き起こす」ことができる

文字化されたデータは、UDトーク上では、会話ログと呼ばれていて、画面操作で、これをメールに送ることができます。(注:下の写真を参照。メニュー画面の一番上に「会話ログをメールで送信する」という項目があります。)

 

 

パソコン上でそのメールを開けば、csvファイル及びテキストファイル―windowsであればメモ帳というアプリで開く―上に、文字化されたデータ(注:csvは時間の情報も含んでいる)が載っていることが分かります。
そうであれば、あとはパソコン上で編集ができますから、「書き起こした」ことと同じになるわけです。

終わりに

ドナルド・キーンさんの味のある文章を「書き起こす」ことができた

おかげさまで、無事、ドナルド・キーンさんの味のある文章を「書き起こす」ことができました。

一部、シェアさせていただきます。

 

 私にとって東京最初の玄関口は、昭和二十年の厚木基地でした。

 終戦直後、中国にいた私は十二月に初めて日本を訪れます。飛行機がいよいよ日本に近づいた時、最初に驚いたのは緑の多さでした。それまで数カ月を過ごした中国では、まったく木のない土地が多かったからです。

 さらに驚いたのは、基地から都心に近づくほど、家や建物が少なくなったことです。私は焼け野原となった銀座を覚えていますが、破壊された東京都心を記憶する人々が今、どれほど残っているでしょうか。

 

私たちの職場は銀座の近くにありますので、焼け野原となった銀座をご自身の目で見て、覚えておられると言われると、ドナルド・キーンさんの記憶の中の昔の話であるのに、今の自分の目の前のことや、短期記憶の中の、つい先日ランチを食べに行った職場近辺の風景とつながってくるような感覚になり、えも言われぬ余韻が心に残りました。

音声を文字化するという選択肢

パソコンにがんがん打ち込むことに慣れてしまっていますので、現状、「音声を文字化する」方法で、時間が削減されたとは思わなかったですが、手が疲れるということからは解放され、負担軽減の効果はありました。打ち込むことが長時間続き、億劫になってくることはしばしば経験してきたことです。

 

ですので、音声を文字化するという選択肢が得られたことは大きいことです。

音声で介護現場の業務の記録を行う

介護現場の業務の記録を音声で行う、音声入力システムの(介護現場への)導入支援の業務にも関わらせていただいております。
私自身が介護現場で働いていたとき、紙への手書き入力も、タブレットやモバイル端末への手打ち入力も経験してきましたが、音声で記録を行った経験はありません。
記録の方法に幾つか選択肢があることは介護現場にとっても有用と思いますので、働く人たちに使い勝手等を聞きながら、進めていきたいです。

 

 

 

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