テレイグジスタンスロボットの未来に注目

2020/09/04
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こんにちは、編集スタッフのmimiです。

 

近年進化が目覚ましいロボット技術「テレイグジスタンス」
この技術が、日本のこの先100年の課題である少子高齢化による労働力不足の解消、働き方改革、共生社会の実現に多大な貢献をするのではないかと考えています。

テレイグジスタンスロボットとは何か

簡単に言うと、遠隔操作できるロボット手術ロボット“ダ・ヴィンチ”がその代表例ですが、従来のロボットはとても特殊な環境下でのみ利用可能なものでした。

しかしながら、ロボット技術、インターネット環境が普及・進化したことで、より身近な場所でテレイグジスタンスロボットを使うことができる環境が整ってきました。

 

テレイグジスタンスロボットの開発を手掛けるTelexistence(株)のCOO 彦坂雄一郎氏はこのように述べています。

「人間の身体能力の瞬間移動を可能にする技術」です。遠隔地にいるロボットが自分のアバター(分身)となり、まるで自分が現地にいるかのように、物を見たり、感じたり、動かしたりすることができます。

 

テレイグジスタンスは、1980年に東京大学名誉教授で弊社会長の舘暲(たち・すすむ)先生が考案したものです。私たちは世界を“目”で見ているようでいて、実際は“脳”で物事を見ています。ですから、脳内で世界を再構成するために必要なデータを与えることができれば、あたかも“自分で体験している”というような感覚、仮想現実での体験を作り出せると考えたんです。

出典:5Gが実現する次世代テクノロジー「テレイグジスタンス」とは? | BAE

テレイグジスタンスロボットが社会に与える影響

自分なりにですが、働き手/産業/サービスの受け手それぞれにとってどんなWinがあるのかを考えてみたところ、いわゆる三方よしな技術だと感じました。

三方よしな技術

■働き手にとってのWin:
障害者や環境(子育て中、介護中)に制限のある人の就労機会の増加(場所にとらわれない働き方の選択肢が広がる)、生きがいづくり
■産業にとってのWin:
人手不足の解消、持続可能なサービス提供
■サービスの受け手にとってのWin:
安定したサービスを受け続けられる、ニーズに合ったサービスを受けやすくなる、質の高いサービスを受ける機会を得やすくなる(手術ロボットなど)

ロボットを操る人は、世界各地のどこからでもアクセスできる

従来のリモートワークは、基本オンライン上で完結するため、PCで完結する頭脳労働や事務作業に限られていましたが、テレイグジスタンスロボットは、オンラインのものがオフラインに作用することができる~オンラインでつながった先の空間にある物質に働きかけることができる、というのが最大の特長です。

 

これにより、今までは“その空間に人が存在しないとできなかった”作業例えばカフェの店員、掃除、荷物の積み下ろしなどの作業~が“その空間に人が存在しなくてもできる”作業に変化します。ロボットを操る人は、世界各地のどこからでもアクセスでき、例えば沖縄で作業が完了したらすぐに数千キロ離れた北海道で働く、というようなことも可能になります。

 

次に、具体的なロボット事例を2例ご紹介します。

ロボット紹介1:テレイグジスタンスロボットでコンビニの商品陳列作業

コンビニ大手のファミリーマートが、今夏Telexistence(株)と共同でコンビニの商品陳列業務の実証実験を行っているそうです。

 

都心のコンビニ従業員は今や日本人のほうが少ない印象ですし、全国的に常に人手不足が叫ばれており、これまでのサービスを継続するには限界があります。セルフレジに続きテレイグジスタンス技術が、少しでも“その店舗に常に存在する必要のある人数”を減らし、人手不足の解消とサービス継続への鍵となるかもしれません。

参考:コンビニの商品陳列業務は遠隔作業ロボットで Telexistenceが小売店舗向けに「Model-T」を開発 今夏に都内のファミリーマートで実証実験 | ロボスタ

 

ロボット紹介2~誰もが制限なく社会参加できる「分身ロボット・OriHime」

オリィ研究所

子育てや単身赴任、入院など距離や身体的問題によって行きたいところに 行けない人のもう一つの身体、それが「OriHime」です。 「誰かの役に立つことをあきらめない」 「寝たきりで声を失っても会話できる」 「今の自分に合った働き方ができる」 OriHimeは、距離も障害も昨日までの常識も乗り越えるための分身ロボットです。

参考:分身ロボット「Orihime」|オリィ研究所

 

研究開発をおこなうオリィ研究所は、「孤独の解消」というテーマで人間サイズや手のひらサイズの分身ロボットの開発・実用化をおこなってきました。

人間サイズの分身ロボット

数年前より“あらゆる人たちに、社会参加、仲間たちと働く自由を。”というコンセプトで、
人間サイズの分身ロボットOriHime-Dがウエイターをつとめる「分身ロボットカフェDAWN」を実験的に開設し、2020年、「アバターギルド」という形で障がい者の就労支援の枠組みができました。

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)、SMA(脊髄性筋萎縮症)など、難病や肢体不自由などの障害で、ベッド上から動くことができないけれども体の一部の筋肉は動かせる、という方々が、視線入力やマウスポインタ等でPCから遠隔でロボットを操作し働いています。カフェ店員の他、企業の受付、販売員などとして全国各地で活躍中だそうです。

手のひらサイズのOriHimeロボット

そのほか、手のひらサイズのOriHimeロボットで

 

  • モスバーガーにおける「ゆっくりレジ」の実験導入
  • 川田テクノロジーズのロボットと協働による「テレバリスタプロジェクト」

 

など他企業との連携に活発に取り組んでおり、今後も注目の企業です。

まとめ

コロナ禍で働き方、社会の在り方が大幅に見直しを図られていますが、テレイグジスタンスロボットの実用化が進むことで、さらに働き方が変化し、複数の社会課題が解決できるかもしれない、そんな明るい予感を感じさせます。
10年、20年後の社会がどう変わるのか、とても楽しみになる注目の技術です。

(終)

 

 

 

 

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