認知症と保険① 認知症をキーワードとする保険が続々登場

2018/10/11
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10月は認知症と保険というテーマで3回にわたり記事を書いていきます。
本日は1回目。 (2回目は18日、3回目は25日の予定)

 

この10月は「認知症」をキーワードとする新しいタイプの保険が続々登場しています。

 

  1. リンククロス 笑顔をまもる認知症保険(損保ジャパン日本興亜ひまわり生命)
  2. 認知症あんしんプラン(東京海上日動火災保険株式会社)
  3. ひまわり認知症予防保険(太陽生命保険株式会社)

注:1~3はプレスリリースの日付順。1は2018年7月19日、2は同7月24日、3は同9月18日。いずれも10月販売開始。

 

1と3は生命保険、2は損害保険の分類になります。
新しいタイプの保険は、従来の認知症に関する保険とどう異なっているのでしょうか?

 

従来の保険との特徴の比較~生命保険~

 

まず、「1.リンククロス笑顔をまもる認知症保険」「3.ひまわり認知症予防保険」の特徴についてです。

 

1は認知症の診断がつかずとも、軽度認知障害(MCI)と診断確定すれば一時金が支給されます。
3は予防給付金という名称で、生存していれば定期的に3万円が支給されます。
予防給付金は認知症予防のための活動費という位置づけです。

 

そして、両方とも認知症予防のための情報提供・サービス紹介・検査等の付帯サービスがあります。
つまり、今回登場した1と3は予防のための費用を補償するという点に特徴があります。
そこが新しい点です。

 

詳細は下記リンクを参照してください。

 

そもそも、認知症に特化した保険が登場したのは2016年です。認知症と認定
された場合に一時金や年金を支払う
という内容のものでした。(予防のための
費用保障まではありません。)
なお、一時金や年金を支払う「従来」の認知症保険はさらに大きく3つのタイプに分かれます。

代表的な事例を紹介します。

2016年3月に他社に先駆け、業界初として認知症保険を投入したのが太陽生命保険です。
(先ほど言いましたように、太陽生命保険は今月、認知症予防のための保険を打ち出して
おり、認知症そして予防とそれぞれ先手を打っていることが分かります。)

 

太陽生命保険の認知症保険では、個人年金保険、入院保険、手術保険など
さまざまな保険のセットからなる総合型生命保険(「保険組曲ベスト」)を構成する組み合わせ可能な主契約の

中に、認知症治療保険(軽度介護保険が正式名称で、認知症治療保険はその愛称。)が組み込まれました

認知症と認定された場合(60歳~75歳)に最大300万円の一時金が支給されます。これがタイプ1です。
(タイプ1:総合型生命保険の組み合わせを構成する単体保険の1つとしての認知症保険)

 

太陽生命保険に続き、2016年4月に朝日生命保険が認知症保険を発売しました。太陽生命保険の認知症保険は
総合型生命保険の組み合わせの1つであるのに対して、朝日生命保険の場合は介護保障に特化
しています。

 

そして、介護保障には5つのラインナップ(サービスメニュー)があり、
2つが認知症年金タイプ、認知症一時金タイプです。認知症と認定された
場合に年金として支給か、一時金の支給かが選択できます。
介護保障のさまざまなメニューに認知症保険を追加して充実化を図ったものと言えます。

 

また、太陽生命保険の総合型と異なり、認知症タイプを単体で選ぶことができる点も特徴です。
一時金は最大1,000万円が支給されます。これがタイプ2です。
(タイプ2:介護保障に特化したラインナップの1つとしての認知症保険)

 

少額短期保険としての認知症保険もあります。2018年2月、セント・プラス少額短期保険が「認知症のささえ」を
発売開始しました。認知症に特化したミニ保険です。ミニ保険としては業界初です。認知症と認定された場合に
一時金が支払われます。80万、60万、20万の支払いの3つのコースがあります。

 

保険料は少額で月額163円から(60歳男性で20万円の支払いのコースの場合)です。保険期間は短期で1年ごとに
更新です。これがタイプ3です。
(タイプ3:少額短期保険としての認知症保険)

 

詳細は下記リンクを参照してください。

 

従来の保険との特徴の比~較ー損害保険~

 

冒頭、3つの保険のリストを挙げましたが、「2.認知症あんしんプラン」は損害保険です。これまで紹介して
きた生命保険は認知症に関わる治療費や認知症予防のための活動費を保障するものでした。今回、登場した損害
保険は認知症に関わるどんな損害を補償するのでしょうか?

 

認知症の方およびその家族を対象に、認知症の方の行方不明時の捜索費用や法律上の損害賠償責任(日常生活で
他人にケガをさせたり、他人の財物を壊したり、線路への立ち入りで電車を運行不能にさせてしまったこと等
による)を補償
します。

 

こちらは認知症に特化した損害保険の商品として業界初になりますが、同様の発想のものは先行して既にあります。
二例ご紹介します。

 

一例目。MS&ADインシュアランス グループの三井住友海上火災保険株式会社ならびにあいおいニッセイ同和損害
保険株式会社は個人賠償の特約の範囲を順次拡大してきました。2015年10月に、事故を起こした方が認知症などで
責任能力がない場合に、監督義務を負う別居の親族等も補償の対象に含めました。
さらに、2016年10月には、財物
損壊を伴わない、電車の運行不能等による賠償責任もカバーできる特約を販売開始しました。

 

二例目です。生命保険では少額短期保険の事例を挙げましたが、損害保険の分野でも少額短期保険を販売している
ところがあります。リボン少額短期保険会社のリボン認知症保険です。2017年8月に販売開始です。今月登場した
「2.認知症あんしんプラン」(東京海上日動火災保険株式会社)は個人賠償責任を1億円を限度に補償しますが、少額
短期保険のリボン認知症保険は1,000万円を限度としています。

 

詳細は下記リンクを参照してください。

 

認知症をキーワードとして、生命保険と損害保険のそれぞれの領域で、新しい動きを感じることができたのでは
ないかと思います。何に備え、何にお金を使うべきかが個人の問題としては問われることでしょう。

これは経済面での自助の領域と言ってよいでしょう。
事業者としては真に役に立つ商品開発ができるかが問われていると思います。
これらについて、第2回、第3回で検討を深めたいと思います。

 

参考文献

  • 週刊ダイヤモンド合併特大号 2017 4/29・5/6
  • 週刊ダイヤモンド合併特大号 2018 4/28・5/5
  • 週刊東洋経済 臨時増刊 生保・損保特集2018年版(2018年10月3日発行)

 

 

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