認知症支援のイメージカラーのオレンジはなんと柿の色

2020/09/30
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こんにちは。認知症Cafést Online編集スタッフのSです。
本日で9月も終わりです。

9月は世界アルツハイマー月間

9月は私たちのコラム「世界アルツハイマーデーに向けて」でも紹介したとおり、世界アルツハイマー月間でした。

世界アルツハイマーデーの日である21日を中心に、各地でオレンジ色にライトアップされた

認知症支援のイメージカラーであるオレンジ色で、21日を中心に各地でライトアップされました。

 

21日は世界アルツハイマーデーで、この日、公益財団法人認知症の人と家族の会のYouTubeチャンネルでは、日本全国をZoom(ビデオ会議システム)で結んで、各地のライトアップした建物を生中継(ライブ)で、伝えていました。

注:認知症の人と家族の会のYouTubeチャンネルから、9/21の全国各地のライトアップの生中継の動画のページをスクリーンショットしました。この画像をクリックすると動画のページに飛びます。

なぜ、認知症支援のイメージカラーはオレンジ色なのか?

では、なぜ、認知症支援や啓発のイメージカラーはオレンジ色なのでしょうか?

ネットで検索すると、元ネタあるいは原典の資料にたどり着くことはできなかったものの、なぜ、オレンジ色なのかについての情報を記しているページは幾つもあり、同じ内容でした。

 

一例を挙げると、町永俊雄さん(ジャーナリスト)は、認知症フォーラム.comのサイト内のコラム「オレンジ色を灯せ 〜世界アルツハイマーデーに寄せて〜」(2018.10.02)の中で次のように書いておられます。

 

なんで、オレンジ色なのかって。そういえばオレンジリングもそうだ。私も知らない。で、調べました。
それはかの陶工柿右衛門の赤絵磁器からきておる。あの夕暮れの柿の深くて豊かな柿色を苦心の末再現した柿右衛門の赤絵は大いに世界を驚かせ、日本の磁器が世界に輸出されることになったんだって。知ってた?
「ボーッと生きてるんじゃねえよ」

 

「ボーっと生きてるんじゃねえよ」が効いてますね(笑)

認知症支援のイメージカラーはなんと柿の色

江戸時代に活躍した陶工、酒井田柿右衛門が作った赤絵磁器は、夕暮れの柿の深くて豊かな柿色を、磁器の上に実現させたいと考え、苦心の末成功させたということなのだそうです。
そして、この磁器は海外に輸出されて高い評価を受けたのだとのこと。

 

このように認知症支援・啓発が、日本から世界に広く知れ渡ることを願い、柿の色(≒オレンジ色)にされたのだと。
ということで、認知症支援のイメージカラーのオレンジはなんと柿の色ということでした。

酸っぱい VS 渋い、甘い

オレンジというと酸っぱい味覚のイメージが広がりますが、柿と聞いたら、急にその味覚のイメージが渋くなったり、甘くなったりしますね。

 

脱線になりますが、昔、こちらのコラム「河内晩柑とベリー類」で、グレープフルーツに似た苦みのある河内晩柑(かわちばんかん)のジュースで、中高年の方の認知機能の一部である記憶力を維持する効果が見られたことを紹介しました。

 

河内晩柑は柑橘類(かんきつるい)ですね。
なので、渋かったり、甘かったりというよりも、酸っぱい方が認知機能の維持には効果があるのかなと思ったりするのですが(笑)…。

酒井田柿右衛門のエピソードは実話なのか?

話を戻しまして、夕日に映えた柿の色を見て、その色を磁器の上に実現させたいと思ったいうエピソードは実話なのかが気になってネット検索を続けました。

国語の教科書で、この内容で伝記物語として描かれていたのは本当である

このエピソード自体が実話かどうかは分からなかったのですが、歌舞伎の演目になっていたり、国語の教科書で取り上げられていたりというのは本当のことのようでした。
国語の教科書や読み物のなかで、失敗を繰り返しても諦めず、苦労の末「夕日に照らされ輝く柿の実の色」を焼物に再現した発明家の成功物語(←出典はこちらのページとして描かれていたようです。
歌舞伎は、『名工柿右衛門』として、片岡仁左衛門の名演で大正元年(1912年)初演以来繰り返し上演され人気を博しました。また、大正11年(1922年)から終戦(1945年)まで小学五年生が、友納友次郎著の『陶工柿右衛門』という読本を学びました。(←出典は同じくこちらのページです)

酒井田柿右衛門が編み出した磁器が欧州の王侯貴族の間で重宝されたことも本当である

佐賀の有田での磁器である有田焼(注:江戸時代には伊万里焼もしくは肥前焼と呼ばれた)の17世紀初頭(1616年)からの400年の歴史の中で、次のことは事実のようです。

 

・1646年頃、初代の酒井田柿右衛門(現在の十五代まで続いている)が磁器への赤絵付けに成功したこと

・1650年代末にオランダ東インド会社により欧州に輸出されたこと

17世紀後半の欧州各地の王侯貴族の間で、柿右衛門様式磁器が流行したこと

・17~18世紀の欧州で、遥か遠い異国である東洋から運ばれてきた磁器が、「白き黄金」と呼ばれるほど貴重なものであったこと

 

いやあ、酒井田柿右衛門が赤絵付けに成功させた磁器が、欧州の王侯貴族の間で重宝されるとはなんともドラマティックですね。実話かどうか分からない、夕日に映えた柿の色をヒントに赤絵付けにたどり着いたというエピソードよりもはるかに壮大に感じられます。初代の酒井田柿右衛門が想像することもできなかった展開であることでしょう。

 

こういう壮大な展開への期待が、現代の認知症支援・啓発というテーマにおいて、柿の色を由来とするオレンジ色に込められているということなのですね。

最後に

確かにボーっと生きてきたかもしれない

認知症支援のイメージカラーのオレンジ色の由来をたどることから、有田焼や酒井田柿右衛門の歴史に入り込むこととなり、「江戸時代は鎖国をしていた」とか、「(鎖国の中)長崎の出島でオランダ、中国、朝鮮と貿易を続けた」とか、昔、歴史で習ったことが蘇ってきました。

 

貿易が制限されていたなかで、酒井田柿右衛門が佐賀の地で成功させた赤絵付けの磁器が長崎から欧州に渡り、愛好されたということになりますね。
酒井田柿右衛門にまつわる以上のお話はこの数日で知った雑学ですが、それと小中学生の頃に習った知識が結びついて、脳が活性化してきております。
確かにボーっと生きてきたかもしれないと思います(笑)。

佐賀の有田へ行きたくなった

有田焼についてネットでいろいろ見ていたら、佐賀の有田へ行きたくなりました。

 

9月21日の世界アルツハイマーデーの日は、東京都民の私は、東京の赤坂を散策しておりました。
国による「Go To トラベル事業」が始まっておりましたが、東京都在住の者の旅行は除外されておりまして、都民は東京を散策するしかなかったのです。
ただ、10月1日以降は、東京都民も対象にしてもらえるようですね。

 

このタイミングで筆の勢いで、佐賀の有田まで行ってしまうのかは未定ですけど(笑)、「Go to トラベル」したいですね。

(終)

注:写真は筆者が東京・赤坂の日枝神社にて9月21日に撮影

 

<参考>

1. 世界アルツハイマーデー及び月間(令和2(2020)年度)|厚生労働省のサイト

2. 認知症支援のイメージカラーはなぜオレンジ色?|おすそわけマーケットプレイス ツクツク!! 2018.05.08

3. 海外の認知症施策紹介 Vol.5 世界アルツハイマー月間(著者は太田一実氏, 作成日付は不明)|湘南健康大学 湘南から「日本の未来をデザインする」 認知症情報発信サイト

4. なぜ認知症支援のイメージカラーはオレンジなのでしょうか(著者は杉浦みさえ氏)|Amebaブログ Big Tree ~キラキラしたケアマネでいられるために~ 2020.09.12

5. 秋の味覚「柿」。どうして甘かったり渋かったりするの?|日々是活き行きー暮らし歳時記 2019年10月31日

6. 柿右衛門窯にある「柿」を語れれば、焼き物ツウに。(著者は南雲朋美氏)|DIVEintoDEEPERJapan 2016.02.12

7. 初代柿右衛門の伝記物語(Hatena Blogのid jafmama氏)|本棚・陶磁と文学 aficionado’s bookshelf 2019.04.10

8. 有田焼(ありたやき)とは|有田観光協会 ありたさんぽ

9. 有田焼創業400年事業について|ARITA EPISODE2

10. 1646年ー赤絵付けの成功|ARITA EPISODE2

11. 1650年ー欧州への輸出の始まり|ARITA EPISODE2

12. 柿右衛門とその歴史<江戸前期>|柿右衛門文化財団・日本

13. 【公式】柿右衛門窯

14. 旅行者向けGo to トラベル事業公式サイト

 

 

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