夜間覚醒など睡眠での問題を抱える認知症の人への対応について
2019/08/29
睡眠は健康な生活を送る為には不可欠な活動です。
しかし、高齢になると眠りは浅くなり、さらに認知症になってしまうと夜に起きてしまったり、昼と夜が逆転してしまったり、睡眠での問題を抱えることがあります。
そして、夜間覚醒や昼夜逆転は介護負担の増大につながります。
今回は、睡眠での問題における原因のうち次の2つに光を当てて、対策について検討をしたいと思います。
①体内時計の乱れ
②精神的な不安
①体内時計の乱れ
認知症では、睡眠や覚醒の機能に関わっている神経細胞が変質して、働きが弱まっていくと言われており、それに伴い、体内時計の乱れが生じやすくなります。
介護現場で見られること
・夜中に「今から仕事に行く」、「朝だから出かける」と言って、外出の準備をする。
・夜中でもテレビやラジオを大きな音でつけっぱなしにしている。
・日中眠ったりウトウトする時間が増える。
認知症の人で問題となる睡眠の特徴
日経メディカルの記事(「認知症の睡眠障害で介護者に伝えたい8箇条とは」2019/8/8付)では、1週間以上にわたる24時間連続の睡眠記録をもとに、認知症の人で問題となる睡眠の特徴が挙げられています。
・中途覚醒や早朝覚醒が頻回である。
・日々の睡眠時間帯が極めて不規則であり、どの時間帯に眠るかが予測がつかない。
・夜間に長い中途覚醒がみられる一方、日中には頻回に午睡を取るなど睡眠と覚醒が不規則に分断されている。
・1日を通じた総睡眠時間は年齢相応や平均以上である(従って、総睡眠量としては正常)。
対策
・日光を浴びて、日中の覚醒を促す。
(日の光が入る窓際で日向ぼっこするのも効果的!)
・日中の活動を増やし、夜に眠れるようにする。
(じっくり眠る時間を夜間に寄せていく!)
・昼寝は少なめに。
(加齢とともに睡眠時間は短縮しますが、夜間にじっくり眠って睡眠時間を確保することに努めたうえで、昼寝の時間も足し合わせて1日の総睡眠量を確保!)
・昼寝、夜間就寝とも規則的に!
・就寝環境を整え、安眠を促す。
・夕方以降で就寝2~3時間前までの入浴・半身浴は睡眠促進効果がある。
・夕方以降はアルコール、カフェイン、喫煙を控える。
・医療機関等と連携し、痛み、かゆみ、頻尿など安眠を阻害する症状への対処を進める。
この記事(←リンクあり)ではさらに、アメリカの政府機関である食品医薬品局(FDA)からの薬についての勧告の内容も紹介されています。
認知症患者の睡眠障害や行動障害に対する抗精神病薬の効果は極めて限定的で、むしろ生命予後を悪化させる危険性が高く、長期使用は慎むべきである
従って、薬に頼るというよりもまずはケアで対応していくと考えることが原則になります。
②精神的な不安
認知症では状況に対する理解力や判断力が弱まることに伴い、不安をかかえ、睡眠の問題につながることがあります。
介護現場で見られること
・精神的に不安になり、落ち着かない。
・大声で家族などの名前を呼ぶ。
・部屋を暗くすると不安になったり、暗闇を怖がったりする。
対策
・本人の気持ちに寄り添う。
・本人様の話をさえぎったり否定したりせず、しっかり聞く。
・どうすれば本人が穏やかに夜を過ごせるようになるかを見つけ出す。
「どうすれば本人が穏やかに夜を過ごせるかを見つけ出す」については、暗いのが怖いと言われるなら電気はつけたままにする、独りが嫌だと言われるなら同じ部屋で就寝する、夜に出かけると言われるなら外の景色を見てもらうなど、いろいろな工夫の余地はあります。
しかし、介護者のライフスタイルとのバランスは問題になります。家族など介護者が無理をしてしまうことは誰も望んでおりません。
困ったときは、ケアマネジャーさんやご利用になられているサービスのスタッフさんに、思い切って相談してみてください。
(文責K&S)