【特集】尾張旭市での「あたまの健康チェック®」の利活用と7年間のデータから見えてきたこと①

2020/10/30
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こんにちは、「あたまの健康チェック®」の普及担当スタッフのムッシュです。

(2019年2月22日の「今日は猫の日…」というコラム記事以来の登場です)

「あたまの健康チェック®」は全国の自治体で利活用されている

簡易認知機能検査サービスの「あたまの健康チェック®」は、幸いなことに北海道から沖縄まで全国の約60の自治体にて、認知症予防・介護予防の事業で利活用されています。

今回は、2013年度より全国自治体で初めて「あたまの健康チェック®」(以下、®を外して「あたまの健康チェック」と記す場合もあります)を採用した愛知県尾張旭市の取り組みを紹介します。
そして、約7年間のデータから見えてきたことも紹介します。

愛知県尾張旭市の取り組みー『あたまの元気まる事業』ー

対象者

尾張旭氏の『あたまの元気まる事業』は、市内在住で40歳以上かつ要介護認定を受けていない方を対象としています。

 

取り組みの概要

・市の福祉部健康課が中心となり、あたまの健康チェックを実施
(週3日の予約制の体制で、出張チェックも行っている)

・結果はご家族や関係者に情報の提供をしたうえで、保健指導や健康増進事業につなげている

・医師会、歯科医師会、薬剤師会と連携し、地域全体で一次予防の取り組みをしている

 

補足:一次予防、二次予防、三次予防

一次予防という言葉が出てきましたので、補足をしておきます。

 

健康づくりに関する議論で、一次予防、二次予防、三次予防と対比的に使われます。
下表でご確認ください。

一次予防 生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること
二次予防 健康診査等による早期発見・早期治療
三次予防 疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること

 

一次予防は健康との関係では積極的な考え方ですね。
発症した後の対応(三次予防)ではなくて、発症する前からのアプローチ(一次予防)ですから。
また、健康に良いとされていることに日頃から取り組んでいくことを促す(一次予防)というのは、検査を受けて早期発見に努める(二次予防)こと以上に、前向きで、積極的と言えるでしょう。

補足を踏まえてー『あたまの元気まる事業』の位置づけー

尾張旭市の『あたまの元気まる事業』は、40歳以上で要介護認定を受けていない方に、簡易認知機能サービスの「あたまの健康チェック」を受けてもらい、受検した人をはじめとする地域全体の健康増進活動に結びつけていくということで、積極的な取り組み(一次予防)と言えます。

 

7年間のデータから見えてきたこと

この7年間で4383回(今年7月末時点)の受検がなされました。
データが蓄積されて見えてきたことがありますので、紹介したいと思います。

受検時の年齢と認知機能指数(MPI)との関係

まずは、4383回の受検データについて、下のグラフをご確認ください。
受検時の年齢(40~90歳)を横軸、そして、認知機能指数(MPI)を縦軸にしてグラフ上に分布させたものです。グラフ上の各点(プロット)が1回分のデータです。このグラフ上に4383個の点があると思ってください。

 

グラフ①  受検時の年齢と認知機能指数(MPI)の関係

グラフから読み取れること

年齢が増えるごとに、認知機能指数(MPI)の得点の分布が下にずれていくことが分かります。
年齢ごとに認知機能指数(MPI)の平均値が下がっていくというデータなのだと思います。

 

また、軽度認知障害であるMCIの疑いありと判定される割合(MPIの得点が49.8以下)が年齢とともに増えていくことが分かります。

補足:認知機能指数(MPI)について

・簡易認知機能検査サービス「あたまの健康チェック®」の受検により算定される対象者の認知機能を示す指数
・0-100の数値で表記される

 

表1 MPIスコアと判定の対応

MPIスコア 判定
50.2≦MPI≦100 問題なし
49.8<MPI<50.2 ボーダーライン
0≦MPI≦49.8 MCIの疑いあり

参考:FAQ(ページの下の方にMPIスコアに関するQ&Aがあります)|簡易認知機能スケール あたまの健康チェック®のサイト

 

年齢区分ごとに「MCIの疑いあり」と判定される割合の違い

グラフに、年齢区分ごとの「MCIの疑いあり」と判定される人の割合の情報を追加してみました。

 

グラフ②  年齢区分ごとに「MCIの疑いあり」と判定される割合の違い

注:このグラフでMCI判別割合とは、受検の結果、MPIスコアが49.8以下で、「MCIの疑いあり」と判定された人の割合です。

 

このグラフ②を表にもしてみました。

↓↓ ↓↓

表2 年齢区分ごとのMCI判別割合(MPIスコアが49.8以下の人の割合)

年齢区分 MCI判別割合
40~64歳 2.1%
65~74歳 7.8%
75~90歳 50.4%

 

グラフ・表から読み取れること

40~64歳に比べて、65~74歳(前期高齢者)、75~90歳(後期高齢者)において、「MCIの疑いあり」と判定される人の割合は増えます。
特に75~90歳では半数の人が「MCIの疑いあり」と判定されるという結果でした。

終わりに

あたまの健康チェックは単純化して言えば、10個の単語をその場で覚えてもらうという検査です。加齢とともに短期記憶の力が弱まるというのは広く知られていることと思います。
今回紹介した、約4400回分の受検のデータで、視覚的に示すことが出来ています。

 

今回はここまでになります。
尾張旭市では、さらに、分析を進めて、認知機能が維持・改善したりする人の特徴や、MCIの疑いありと判定される人の特徴についても報告をしております。
それは改めてお伝えします。

(終)

 

 

 

 

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