インタビュー「おれんじカフェにかける思い」―地域の集いの場となるまで―(第2回)

2019/04/16
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てんのうだいおれんじカフェの発起人であり、運営のリーダーを担っておられる田中信子さんへのインタビュー記事の第2回目です。
第1回目はこちら(↓)をクリックしてご確認ください。

インタビュー「おれんじカフェにかける思い」―地域の集いの場となるまで―(第1回)

 

1回目インタビューの要旨

厚生労働省より出された新オレンジプラン(認知症施策総合戦略)を受けて、ときは認知症カフェ(オレンジカフェ)を呼んでいると思った。もともと、地域貢献をしたいという気持ちがあった。認知症サポーター養成講座の講師役であるキャラバンメイトであったことから、平成27年(2015年)12月開催の第1回目のオレンジカフェは、認知症サポーター養成講座を企画した。エリアの全域に一軒一軒チラシを入れるなど周知活動を行った。どのくらい来るか予想がつかなかったが、蓋を開けてみると38人来られ、地域の人の関心の高さを実感した。月1回第4水曜と決めて、継続開催してきた。

 

市役所や地域包括支援センターの反応

「市も新オレンジプランを受けて、認知症カフェの実績をつくっていきたいと考えていたようです。平成28年(2016年)2月末に市の方から、市の委託事業としてカフェを実施して欲しいと依頼がありました。てんのうだいおれんじカフェでの参加者の声や反応が市役所に届いたのだと思います。それで、平成27(2015年)12月から翌3月までは私たちの自主事業としておれんじカフェを開催してきましたが、4月よりは市の委託事業という位置づけにもなりました。」

 

「一年経ってから聞いた話なのですが、地域包括支援センター(編集者注:我孫子市では高齢者なんでも相談室という名称で呼ばれている。)の室長会議で、セントケアは営利法人だから集客(お金儲け)のためにオレンジカフェをやっているんだろうと批判があったそうです。しかし、そのときも、別の室長が前々から私が地域のために何かをやりたいと言っていたと擁護してくれたと聞きました。絵空事ではない私の思いを理解してくださっていたのです。」

プログラムの構成と進化

「おれんじカフェを始めたばかりの頃は、17時から20時までの3時間のうち、18時半からの食事を挟み、その前と後で2部のプログラム構成としました。食事の後もプログラムを用意しなければ場がシーンとしてしまう状態でした。」

 

「市の委託事業となりましたので、補助金を出す関係で役所からもプログラムの提出が求められました。それで、認知症や介護や予防をテーマに、静と動(編集者注:講義を聞くなどの静と介護予防体操などの動)のバランスを考えながらプログラムを組みました。」

 

「最近は、食事の前の最初の90分はプログラムを組んでいますが、ご飯を食べたあとは、そのテーブルで参加者の皆さんが話し合う光景が見られるようになりました。横のつながりができたということですね。ですから、その時間は私たちからするとある意味ほったらかしなのですが、良い雰囲気の場が出来ているんです。」

 

日付 実施内容
4月24日 認知症の人の気持ち(講演)
5月22日 ハーバリューム(創作作り)
6月26日 食と口の勉強会
7月24日 ロコモシンドローム予防(体操)

注:てんのうだいオレンジカフェ(2019年度)の年間計画の中から1部(4月~7月)掲載しました。

人が人を呼び、輪が広がっている

「今度は○○さんを誘ってみましょうよと参加者から言ってくれます。人が人を呼び、輪が広がっていると思います。」

 

「参加のために特に予約を取っていません。オレンジカフェの帰りに来月のチラシを配ったり、市役所、地域包括支援センター、ボランティアセンターにチラシを置かせていただいたりしていますが、第1回目のときの開催の周知のように地域に手配りをすることはしていません。それでも、リピーターの人が増え、口コミで参加者が広がっていると思います。それは嬉しいことです。」

介護相談の場としての役割

1年目は認知症カフェ(オレンジカフェ)として介護相談という旗を立てていろいろ試行錯誤してみたのですが、相談はなかなかありませんでした。旗を立てることで、介護相談の押し売りのような印象を与え、かえって壁をつくることになっていたかもしれないと思います。ですので、あるときから看板を掲げることをせずに、相談を希望して訪ねてこられたら応えることにしようと方針を変えました。」

 

「つい先日のおれんじカフェでの話ですが、19時過ぎに飛び込んでこられた方がいました。ご家族を介護されている方で、話を聞いてもらいたいと言われました。相談を受けてくれる場と耳にして訪ねてこられたそうです。話を一通りお聞きしましたら、来月もまた来たいと言ってくださいました。介護相談をしてもらえる場になってきたと感じています。」

 

「自分の親が少し変だなと思ったときに誰に相談するかと言えば、まず身の回りでそういうことを知っている人に相談をし、どこの機関に行けば良いか探りを入れたりすると思います。直接、病院や地域包括支援センターに行くことができる人はそういないと思います。てんのうだいおれんじカフェは一番垣根の低い場所です。いつでも声をかけてください、来てくださいと思っています。認知症の方も、そうでない方も、また、元気な方も、つらい方も誰でも自由にいらっしゃいという場所ですね。」

地域の潜在ニーズへの対応―認知症カフェとしての深堀とそれを超えた機能―

「認知症という括りでやっているものの、この場でできたつながりは大事にしたいと思っており、ご縁のなかからこの場を使いたいという申し出があった際は受けてきました。」

 

「最近、一人暮らしの男性の参加が増えています。みんなでご飯を食べると楽しいと言われています。ご家族とお住まいでもご家族の帰りが遅くて、結局は一人で食事をお食べになり、そのままお休みになってしまわれる方からも同様に、一か月に一度みんなでわいわい食べられるのが楽しいと聞いています。」

 

「認知症のことをもっと分かってもらいたい、もっと啓蒙していきたい、深堀していきたいと思って進めてきましたが、もう1つ、(認知症という括りを超えて)来てくれた人々の心を潤していて、何をさておいても行きたいと思える場所になっているという手応えを感じています。石の上に3年と言いますが当たっていると思います。3年継続してきてようやく軌道に乗ってきたと思っています。」

今後の目標

「てんのうだいおれんじカフェの活動を中心にしながら、認知症サポーターを増やしていきたいと思っています。サポーターを組織化して、サポーターの活躍できる場をつくりたいと思います。」

 

「最初はセントケアのデイサービスの職員にカフェを手伝ってもらっていましたが、現在は認知症サポーター養成講座を受講した地域のボランティアの方々が受付や会場のセッティングや後片付けなどサポートしてくれています。また、おれんじカフェの参加者自身が(受け手であることに留まらず)お茶出しなどを進んで申し出て手伝ってくれたりしています。自分たちで自由に行ってくださっています。今後はオレンジカフェのグループ(参加者やボランティア)でもっと何か貢献できることはないか、もう一歩スキルアップできることはないかと考えていきたいです。」

 

「いずれはてんのうだいおれんじカフェのグループで組織化して、地域の人たちのためのパトロール隊や見守り隊のようなことが出来ないかと思ったりしています。また、デイサービスなどの介護施設でボランティアに来てもらうことが出来ないかと思います。仕事をしたいと思う人が出てきても良いですね。可能性は大きく広がっていると感じています。オレンジカフェをよりどころとしてくれる人を増やし、みんなで安心して暮らせるまちづくりにつなげていきたいです。体力の続く限りライフワークにしていきたいと思っています。」

(第2回終わり)

注:田中さんのインタビューは今回で完結です。下の写真に写っている看板は田中さんが作成されたそうです。

 

 

編集スタッフより

「地域貢献をしたいという思いにブレはない。一貫してきた。」と田中さんは言われました。この言葉の重みと確かさを感じています。思いを語るのみならず、力強く行動に移される方です。「おれんじカフェのことを知ってもらいたいし、広めたい。」と言われ、前回の記事もまわりに積極的に紹介されていました。口コミながらそのパワーでじわじわと読者を増やしています。このことを踏まえまして、認知症Caféstとしても田中さんのインタビュー記事の積極的なシェアを希望致します。まっすぐな思いが誰かに届き、地域づくりにつながることを願っております。

 

(インタビュー・文:星野 周也)

 

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