技能実習生が運んでくれた新しい風

 

こんにちは、編集スタッフの mimi です!

 

先日ご紹介したミャンマーからの技能実習生たちが、弊社内千葉、神奈川、東京のグループホームの一部で実際に働き始めました。
2か月かけて全員にお会いしている最中ですが、お客様にもスタッフさんにも素晴らしい影響があるようです。

笑顔の力がすばらしい!

彼女たちはとにかく、常にニコニコしていて、見ているだけで元気になります!

お客様もつられてニコニコしたり、ゆったりと会話される姿が見られ、いつも以上に和やかな雰囲気ができていました。

とても意欲的!

ある施設では、お客様の顔写真と名前を一覧にして実習生さんにお渡ししたら、一晩で覚えてきたそう。日本人でも難しいことに、自ら意欲的に取り組まれます。 

日本語の習得、マナー、介護技術、日本での生活・・・公私ともに覚えることが沢山あるのに前向きに吸収していく姿が、日本人スタッフにもよい刺激となっています。

 

国際交流~多様性への理解力が高まる

ある施設では、こちらが日本語や日本文化を教えるだけではなく、逆にミャンマー語を教えてもらう、ミャンマーの食など文化を教えてもらう、ということを積極的にされていました

「教えてあげる/教えてもらう」という一方的な上下関係ではなく、一緒に働く仲間として。文化言語の違いを超えて人類の多様性を受け入れる、とても貴重な機会になっています。

 

ある一つの多様性を受け入れるという経験で、人間の器が大きくなり、異なる多様性~認知症を罹患したお客様のことを受け入れる素地ができるという好循環を生み出します。

今スタッフ一人一人が経験していることが、これからの日本をより温かく豊かなものにしてくれると感じました。

 

まとめ

技能実習生の受け入れ前は、初めての経験にソワソワしていた(私含む)日本人スタッフたち。実際に来てくれてからは、彼女たちの生き方に感動し、感謝し、共に楽しく働いています。

介護現場に、新しい素敵な風が吹いています。

 

 

 

 

☆☆イベント情報☆☆ オレンジカフェ(10/24、春日部)

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのSです。
ここでは地域での認知症関連のイベント情報をご案内します。

 

今回は埼玉県春日部でのオレンジカフェ(認知症カフェ)のご案内です。オレンジカフェは認知症の人やその家族、地域の人や専門職など誰もが気軽に参加でき、相談や情報交換ができる場です。

 

 

オレンジカフェ(認知症カフェ)

 

開催日
10月24日(木) 14時~15時30分
場所
小規模多機能 ふくしのまち春日部
埼玉県春日部市金崎982-1(地図
料金
無料

申込は不要です。時間内であればいつでも参加可です。
どなたでもお気軽にお立ち寄りください!

問い合わせ先

春日部市第8地域包括支援センター(TEL:048-746-5190)

 

 

2年前に自らが認知症と公表した長谷川和夫さんの今―共生、予防、体験入居、信仰―

 

こんにちは、認知症Cafést編集スタッフの星野 周也が本日のコラムを担当します。

 

認知症診療の第一人者であり、精神科医の長谷川和夫さんが、自らが認知症であると公表したのは201710月のことです。それから2年を経た長谷川和夫さんの今を伝えるインタビュー記事が読売新聞、朝日新聞からそれぞれ出ました。

記事へのリンク

 

共生について

読売でも朝日でも取り上げられていますが、長谷川さんが自宅近くの道路で転倒され、怪我をされたというエピソードは身につまされました。

 

私自身が現在、転倒不安を抱えて生きているわけではありませんが、高齢者が転倒をして怪我をするというエピソードは、身内でも、介護職として仕事をしていたときにも、見聞きしてきたことです。

 

この前、自宅近くの幹線道路の真ん中で転んで倒れてしまったんだ。顔をひどく打ってね。通りかかった女性が家まで送ってくれた。これぞ地域ケア。

(読売新聞)

 

あっと思ったときには転んでいた。それで、歯が欠けてしまってね。

(朝日新聞)

 

ここに書かれている状況は年を重ねれば、いつか行く道なのでしょう。
転びやすくなるのだろうと思いますし、倒れる前にとっさに手を出して、顔への衝撃を緩和したりするのが難しくなるのだろうと思います。

 

しかし、転倒や怪我を悲観的に受け止めて語るというようなスタンスは、長谷川さんのお言葉からは感じられません。私情を差し挟まず、中立的に状況を述べられていると思います。

 

一方、地域の人に支えてもらっているという共生の視点を当事者の立場から語っておられて、「これでいいのだ」と思わせてくれます。つまり、自身の能力や機能が衰えても、通りがかりの人や地域の人に補ってもらって地域生活を送ればいいというポジティブな期待を与えてくれています。

予防について

これは読売新聞のみでありますが、長谷川さんに予防についての見解を伺っています。

 

認知症の大綱が月にまとまる前、政府が予防の数値目標を定めようとしたところ、「予防が強調され過ぎると努力を怠ったから認知症になったと誤解されかねない」と、当事者らから懸念の声があがりました。

 

この引用は当事者からの懸念を伝える記者側のコメントです。
これに対して、長谷川さんは、

 

そうだと思う。ただ、血管性のタイプは、血圧が高くならないよう予防するのが大事。

 

と述べられています。

 

生活習慣病の予防という考えは広く社会に浸透しているのではないでしょうか。それに比べれば、歴史の浅い認知症予防という言葉や考えは、当然ながらまだまだ馴染みのものとは言えません。

 

しかし、長谷川さんが言われているとおり、脳血管性認知症の原因である脳血管疾患は生活習慣病として位置づけられており、このことは脳血管性認知症がもとを辿れば生活習慣病と捉えられることを示しています。そして、健康日本21という二十一世紀における第二次国民健康づくり運動において、年齢調整死亡率の減少、高血圧の改善、脂質異常症の減少などの項目を掲げて、数値目標が定められています。

 

どのような健康状態(健康診断結果)や生活習慣の人で、あるいは、どのような周囲の人々との関係を築いている人で、認知症の罹患率が高いのか低いのかという健康科学(疫学)の知見は価値があるものとと思いますが、このような知見に対する向き合い方が揺れている時期なのだと思います。また、認知症になることの不安や恐れも依然として高いのではないでしょうか。

 

以前の記事(←リンクあり)でも紹介したとおり、認知症有病率に関連する要因の1つとして年齢(年齢が上がるほど有病率が増す)が挙げられています。この結果からは、長生きができたから認知症になりやすくなったと言えるはずです。これも科学の知見です。同じく科学に基づくとしても、努力を怠ったから認知症になったと捉えるのか、長生きの証として認知症を捉えるのか、そこには天と地ほどの差があると思います。

体験入居について

これは、朝日新聞のみでありますが、長谷川さんが、近所の有料老人ホームへ泊3日の体験入居をされたお話が取り上げられています。

 

すばらしかったよ。職員がうんと訓練、トレーニングされているね。ご飯どきになると、スタッフが食堂に連れて行ってくれる。おっくうだなと感じるんだけど、上手に僕の気持ちをのせてくれるんです。お風呂も最高だよ。髪の毛なんかごしごし洗ってくれてね。王侯貴族のような気持ちです。

 

「ほめすぎ」と思うものの、有料老人ホームで働いてきた経験がある立場からすると、介護職がほめられることは嬉しいです。

 

「王侯貴族のような気持ち」とあり、それでは自立支援型の介護とは言えないのではないかという意見もありそうです。それに対しては牽強付会の意見ではありますが、「上手に僕の気持ちをのせて」という部分に着目して、本人の気持ちに沿った支援がなされているとしましょう(笑)。

 

今後の施設入居の状況も想定して準備されているという点が、読者の方には、きっかけを与えてくれるのではないかと期待したいと思います。有料老人ホームに限らず、特別養護老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅など入居系の施設あるいは住宅(もともと住んでいた自宅を出て、その施設や住宅を拠点に、必要なサービスを受けながら暮らす)を見学していただき、知っていただきたいと思いますし、そこでの生活が自分の価値観や嗜好に合うものか検討していただきたく思います。

信仰について

昨年も長谷川さんのお話をお聞きし、記事(←リンクあり)にしました。そのときの話でも、今回の読売、朝日の記事でも、キリスト教徒である長谷川さんからは繰り返し神様の存在が語られます。神様が心に深く入り込んでいると理解できます。

 

絆といえば、誰一人として同じ絆を持っていない。だから尊い。だから強い。でも考えようによっては弱いよね。それが破れたらアウトだから。破れないよう、包んで守ってくれている大きな存在があるように思う。神様、かな。

(読売新聞)

 

死んだらこうなるって確実に教えてくれた人は過去に1人もいない。僕は心臓の病気もあるから、本当に死を考えたら不安でいっぱいだよね。神様は、その不安や恐怖を和らげるために、私を認知症にしてくれているんじゃないか、ならば、神の手に任せようと。

(朝日新聞)

注:「認知症になり死への不安や恐怖が和らげられている」、「認知症は神様がボクのために用意してくれたものかもしれない」という視点は、読売新聞でも語られています。

 

 

長谷川さんのお話を聞いていると、信仰について考えさせられます。私は、仏壇には手を合わせますし、墓参りもしますが、決して信心深いとは言えません。一方、長谷川さんにとって信仰は世界観、死生観と結びついています。信仰は必要なものでしょうか。

 

認知症の人と家族の会の顧問を務めておられた医師の三宅貴夫氏(故人)は、高齢者と信仰について次のように語っています。

 

わが国の宗教の主流をなす仏教は死へのかかわりが弱いようです。亡くなる前から僧侶が病院や介護施設に出入りしていると「縁起が悪い」と避ける傾向があります。これでは高齢者の支えになりません。

欧米ではキリスト教と医療のかかわりは長く、深いと聞いています。死への準備として、神父など聖職者といわれる人が日常的に病院や施設を訪れています。

日本でも、仏教であれ、神道であれ、キリスト教であれ、信仰を持つ高齢者は、それを心の支えとし、死への過程の導きとして、何かしら生きる強さを感じさせることがあります。

 

私は、今のところは、仏教やキリスト教などの教えを導きに、心の安寧やら統合やらに到達するというイメージはありません。ただし、このような宗教の教えには意識をせずとも深層では影響を受けているかもしれません。

 

それゆえに、宗教の教えを意識して辿るというようなことをせずに、生きる支えを得て、そのような悟りに近い状態を目指していくことが課題なのではないでしょうか。

 

長谷川さんは、「認知症になり、死への不安や恐怖が和らげられている」と言われました。40手前の私には、謹んで耳を傾けるほかありません。ただし、認知症にも救いの面があるというような感覚は、認知症のことを勉強してきたり、身内や介護の現場で認知症の方と関わってきたりしたなかで持ち合わせることができるようにはなりました。
しかし、今、私自身の死への不安や恐怖から免れているとはとてもいいがたいのですが、現場での経験を含めて勉強してきたことを支えに向き合っていきたいと思います。(終)

 

介護現場革新プラン ~自治体の取り組みについて~

 

本日は認知症Cafest Online編集スタッフのKが、Editor‘s Tweetをお届けします!

厚生労働省による介護現場革新会議、「介護現場革新プラン」

前回のEditor‘s Tweetでは「介護現場革新プラン」について書かせていただきましたが、今回はその続きとなります。

 

 

令和元年度生産性向上事業におけるパイロット事業実施自治体として、宮城県、福島県、北九州市、神奈川県、三重県、熊本県、横浜市の7つの自治体が、令和元年6月6日に行われた介護現場革新会議(第4回)で事例発表を行いました。
この7自治体では、介護職員(介護現場)の負担軽減やケアの質の向上を図るために様々な取り組みを行っております。

※参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00017.html

介護ロボットやICTの導入事例―服薬支援ロボ、AIケアプラン―

その中で、今回は神奈川県の事例発表の内容をお伝えします。
神奈川県では、必要な人が安心して介護を受けられるよう、『多様な人材の確保』『資質の向上』『労働環境等の改善』の3つの柱で、介護人材の養成・確保を推進しています。

 

特に介護ロボット・機器の導入やICT導入などの先進的な取り組みを行っています。
国の総合特区制度を活用し、生活支援ロボットの実用化や普及を推進しており、在宅や施設などでの服薬管理、服薬支援を行うロボットの推進、市町村支援にAIを導入し、AIを活用したケアプラン点検なども試行しています。

※服薬支援ロボ:https://www.saintcare-carebot.com/product/fukuyaku/product01.html
※AIケアプラン:https://www.cd-inc.co.jp/

 

他にも様々な取り組みを通して、介護現場でも働き手の不足の中、『笑顔あふれる介護現場』になることを目指しています。介護ロボットやICTの利活用がそんな社会につながるとよいですね。

 

今後も、『介護現場革新会議』の取り組みなどはツイートでご紹介していきますので、ご期待ください!

 

☆☆イベント情報☆☆ てんのうだいおれんじカフェ(10/23、我孫子)

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのSです。
地域での認知症関連のイベント情報をご案内します。

 

千葉県我孫子で開催される『てんのうだいおれんじカフェ』のご案内です。
「みんなで地域を支え合える住みよいまち作り」がこのオレンジカフェのコンセプトです。毎月第4水曜日に開催しています。
今月は遺品整理と福祉住環境整理(福祉整理)のプロフェッショナルが来られるそうです。

 

 

てんのうだい おれんじカフェ(10/23、我孫子)

 

開催日
令和元年10月23日(水) 17時~20時
プログラム 17時15分~18時30分
食事 18時30分~
場所
セントケア我孫子デイサービス(千葉県我孫子市天王台4-5-1 シャトー天王台1F)
内容
「今すぐできる整理術」
講師
石見 良教 氏(遺品整理のあんしんネット | 東京都大田区の遺品整理・福祉整理専門会社
料金
実費(軽食・飲み物代500円)
持ち物
上履き

 

どなたでもお気軽にお立ち寄りください!
お好きな時間に、お一人でも、グループでもお気軽にご参加ください。

 

オレンジカフェのお手伝いをしてくれる方も募集中です!

 

問い合わせ先

田中直通/090-3427-7466
セントケア我孫子デイサービス/04-7181-7580

 

 

 

 

ラグビーワールドカップ日本チームに見た、認知症が日本社会にもたらす可能性

 

こんにちは。編集スタッフのマツです。

ラグビーのワールドカップ、日本チームの好調が報じられていますね。
開催国だからという強みもあるのでしょうが、世界ランクで上位のチームに勝利する日本チームにはやはり感動します。

 

ラグビーの多様性

私はラグビーに明るくないのですが、毎日の報道を見ていて、私のように「日本チームに外国の方が多く参加しているのはなぜ?」と感じた方も多くいるのではないでしょうか。
調べてみると、今回の日本代表31名のうち、15名が外国の方でした()。実にほぼ半数が外国の方ということになります。
そして、この数字は他の国と比較しても決して高いわけではありませんでした。

※15名の中には日本に帰化した8名を含みます。

 

本論からは逸脱するため詳細は割愛しますが、その理由は、他のスポーツではその国の国籍を持つ人を代表にするのに対して、ラグビーではその国に居住する人を代表にするという、考え方の違いからきているようです。
いずれにせよ、生まれも文化も異なる人たちがチームになって同じ目標に向かって突き進む姿は、これからそう遠くない日本社会のあるべき姿の一つなのではないでしょうか。

多様性とイノベーション

我々はとかく、自分たちの習慣や文化に疑問を持たないものです。「そういうものだから」「みんなそうしているから」というだけで、漫然と続けていることも多いのではないでしょうか。
しかしそこに、海外の方のような新しい習慣や文化を持つ人が入ると、その漫然とした習慣や文化に疑問を投げかけてくれるようになります。その結果、不必要な習慣を見直したり、それまでには思いもつかなかったような新しい方法を発見する(=イノベーション)ことにもつながります。

 

前回の東京オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、その後の我々の暮らしにピクトグラム(主に鉄道駅や空港などの公共空間で使用される絵文字で、非常口のサインなど言葉ではなく視覚的な図で表現したもの)が根付いたこともこれに当てはまります。外国の方の話ではありませんが、ウォシュレット(シャワー式便座)が発明されたきっかけは、障害のために自分で用が足せない人の「自分で用を足したい」という思いからでした。
上述のラグビーでも、戦術や練習方法に磨きがかかったことだろうことは想像に難くありません。

社会の多様性と認知症の可能性

今、認知症に対する社会のとらえ方が大きく変わりつつあります。今後の我々の生活の中で、認知症とともに歩まれる方(認知症の当事者)がもっと身近な存在になります。
「他人事だ」、「対応が面倒だ」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし上述のように、ぜひこれを「好機」ととらえてみてほしいのです。

 

いろいろな習慣や文化を持つ人として新たに認知症とともに歩まれる方が加わったととらえれば、我々の生活が必ず豊かなものになる。認知症とともに歩まれる方々は、そのきっかけをくれる人たちということになるわけです。

 

 

☆☆イベント情報☆☆ やさか町オレンジカフェ(10/18)

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのSです。

地域での認知症関連のイベント情報

今回は『やさか町オレンジカフェ』のご案内です。
このカフェは認知症の人や介護をするご家族の居場所となるとともに、医療・介護の専門職と、お茶を飲みながらお悩み事などのご相談に応じます。

 

 

 

やさか町オレンジカフェ

 

開催日
10月18日(金) 13時30分~15時30分
場所
セントケア八坂東 小規模多機能
静岡県静岡市清水区八坂東二丁目7-1
内容
『楽しく運動(コグ二サイズ)』と懇談
料金
無料(飲み物付き)
どなたでもお気軽にお立ち寄りください!

問い合わせ先

セントケア八坂東(TEL: 054-371-5960)

 

 

フランス発認知症ケア「ユマニチュード」の定量化を試みているレポートから①―BPSDの削減に寄与―

 

フランス発認知症ケアの「ユマニチュード」に関して紹介した認知症caféstでの過去記事は安定して高アクセスされており、ユマニチュードに対する世の人の関心の高さがうかがい知れます。今回は、ユマニチュードの実践をビデオで撮ってその特徴を数値で示すことを試みたケースレポートについて2回にわたりご紹介します。

ユマニチュードに関するCaféstの記事

・シリーズ「ユマニチュード」第1回~注目のフランス発認知症ケア~

・シリーズ「ユマニチュード」第2回~ケアの基本柱『見る』『話しかける』~

・シリーズ「ユマニチュード」第3回~ケアの基本柱『触れる』『立つ』~

・意識のない方とも対話はできる~ユマニチュードの講演会に参加して~

ケースレポートへのリンク

Miwako Honda, Mio Ito, Shogo Ishikawa, Yoichi Takebayshi, and Lawrence Tierney Jr, “Reduction of Behavioral Psychological Symptoms of Dementia by Multimodal Comprehensive Care for Vulnerable Geriatric Patients in an Acute Care Hospital: A Case Series”, Case Reports in Medicine, 2016. | Hindawi Publishing Corporation

このケースレポートでの分析対象者と分析方法

 

・対象者は急性期病院に入院している介護拒否が見られる認知症患者3名

・40人いる看護師のうち4名がユマニチュードの講義と実技の指導を受けた

・この講義を受けていない看護師による従来通りのやり方でケアがうまくいかなかったとき、講義を受けた看護師に代わり、ユマニチュードのケアを行う

・従来通りのやり方(以下、「従来型のケア」と呼ぶ)とユマニチュードのケアを比較できるように、一連の状況をビデオで記録

・ビデオの内容は「見る」、「話す」、「触れる」という観点で分析

・さらに、認知症患者に攻撃的な行動が見られたかどうかやケアが受け入れられていたどうかについても検討(これらは4人の経験豊富なケア専門職が状況を見て判定を行う)

・患者あるいは家族より書面での同意を得た上で以上の分析を実施

 

分析結果

1つの事例の結果の報告

ケースレポートでは3事例取り上げられ、細かく状況が記述されています。このうち1事例を紹介します。
対象者は以下のような方です。

 

急性期病院に入院中の93歳のアルツハイマー病の女性。腹壁の皮膚に膿瘍(うみ)が見つかり、静脈への抗生物質投与が開始になった。ADLは全介助で、認知症が進行している。コミュニケーション能力が低下しているため、認知症のスクリーニング検査MMSE(注:記憶力、計算力、言語力、見当識等の程度を測る)を実施できない。抗精神病薬が2種類処方されている。おむつ交換時に拒否が見られ、看護師に対して攻撃的になっていくため、ケアが困難である。

 

ビデオ分析の結果は以下の通り(下表)です。

従来型のケア ユマニチュード
全体 360.7 100.0 127.6 100.0
見る 0 0 5.5 4.3
話す 98.8 27.4 53.7 42.1
触れる 0 0 56.1 44.0
攻撃的言動 88.4 24.5 0 0

表:この表はレポートにもとづき、編集スタッフで作成

 

この表は次のように見ます。

 

・従来型のケアは全体で360.7秒かかり、ユマニチュードのケアでは127.6秒かかった。

・従来型のケアでかかった全体の時間(360.7秒)を100%としたとき、「見る」には0秒(0%)、「話す」には98.8秒(27.4%)、「触れる」には0秒(0%)かけられていた。一方、ユマニチュードでは全体の時間(127.6秒)を100%としたとき、「見る」には5.5秒(4.3%)、「話す」には53.7秒(42.1%)、「触れる」には56.1秒(44.0%)かけられていた。

・従来型のケアを行っているとき88.4秒(24.5%)は患者に攻撃的な言動が見られた。一方、ユマニチュードでは攻撃的な言動は0秒(0%)であった。すなわち、そのような言動は見られなかった。

 

3事例を平均した結果

結果は以下の通り(下表)です。

 

単位

従来型のケア ユマニチュード
全体 227.2 228.1
見る 0.6 12.5
話す 15.7 54.8
触れる 0.1 44.5
攻撃的言動 38.6 0.1

表:この表はレポートにもとづき、編集スタッフで作成

 

この表からは次のことが読み取れます。

 

・従来型のケアは全体で227.2秒かかり、ユマニチュードでは228.1秒かかった。

・従来型のケアでかかった全体の時間(227.2秒)のうち、「見る」には0.6%、「話す」には15.7%、「触れる」には0.1%の時間がかけられていた。一方、ユマニチュードでは全体の時間(228.1秒)のうち、「見る」に12.5%、「話す」に54.8%、「触れる」に44.5%の時間がかけられていた。つまり、「見る」、「話す」、「触れる」のそれぞれにおいて、ユマニチュードで多くの割合の時間がかけられていたことになる。

・従来型のケアの時間では38.6%の時間で患者に攻撃的な言動が見られたのに対し、ユマニチュードでは0.1%の時間で攻撃的な言動が見られた。

 

コメント1 急性期病院での医療・看護・ケアについて

従来型のケアとユマニチュードのケアの違いがくっきりと描かれています。これほどまでに違いがあるのでしょうか。
急性期病院での医療・看護・ケアの状況を確認する必要があるのではないかと考えたところ、次の立場表明があることを知りました。

 

「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」日本老年看護学会の立場表明2016(2016年8月23日公開)| 一般社団法人日本老年看護学会(リンクあり)

 

多岐にわたり重要な考察が含まれている文書と思いましたが、ここでは「これほどまでに違いが出るのか?」という問いに関連する情報を幾つかピックアップしてみます。

 

 

・医療全体の状況として「効率・スピードを求める大命題”治療優先“の医療の元、本人の意思確認の形骸化や身体拘束が当たり前となっている

・急性期病院に認知症高齢者が入院し治療を受けるのが常態化したのはここ数年のことで、認知症患者の看護の経験に乏しい

・認知症高齢者は自分の意思を持ちながらもコミュニケーション障害によってそれを伝えられず、何もできない人、わからない人とステレオタイプ化されて認識されてきた

・急性期病院では認知症看護に関する学習よりも身体疾患や処理に関する教育が優先されている

 

 

 

生々しい記述と思いますが、上記の急性期病院でのスタンスとの対照を意識しながら、介護(特に認知症の方への関わり)のスタンスを幾つか列挙するならば、「時間をかけて」、「丁寧に」、「(言語以外の)非言語コミュニケーションも活用」などのキーワードが思い浮かびます。そもそも双方がまるで相容れないことが確認できます。

 

認知症高齢者がほとんどいない状況で、急性期病院で「効率・スピード」を優先するならば、「見る」、「話す」、「触れる」は必要がなかったということでしょう。「見る」、「話す」、「触れる」という関わりが非効率と考えられていたことになります。しかし、認知症高齢者に受け入れてもらえるには、このような関わりができなければならないということが劇的にこのレポートでは描かれています。

コメント2 ユマニチュードの技法と哲学

復習になりますが、ユマニチュードにおいて、「見る」とは、認知症の方の視野が狭くなっている状況下で、正面から話しかけ、目を合わせる機会を多くつくることであり、それにより、認知症の方に「自分が存在しているし、ここにいてよい存在なのだ」と思ってもらえることを目指しています。「話す」とは、相手にとって気持ちが良い言葉かけや、ポジティブな言葉で説明をしながらケアをすることであり、それにより、認知症の方に「自分が大事にされている」と思ってもらえることを目指しています。「触れる」とは、手のひらをつかって、包み込むように、優しく、ゆっくり触れていくこと(スキンシップ)であり、それにより親密感や絆を深め、安心感を抱いていただけることを目指しています。このように、技法と哲学をセットにして理解することが本質的であると思います。

コメント3 尊厳の保持につながる関わり

今回の結果からは、ユマニチュードが、「見る」、「話す」、「触れる」に時間をかけている技法であること、それにより認知症患者の攻撃的言動が減っていることが読み取れます。それは、ユマニチュードのケアの提供により、暴力、暴言などBPSDとも周辺症状とも言われる認知症の方の感情的な反応や行動上の反応の削減に寄与できることを示唆するものです。

 

数値化されることでユマニチュードのケアがどのようなものかの特徴が「見える化」されたのではないでしょうか。認知症の方に「自分がここにいてよい存在なのだ」とか、「自分は大事にされている」とか思ってもらえることは、介護保険法の理念にも掲げられている、「尊厳の保持」につながる関わりに他なりません。したがって、ユマニチュードのケアの「見える化」により尊厳の保持につながる関わりの方法が具体化され、手掛かりが得られたと言えるのではないかと思います。

 

ケアの時間の全体で、「見る」、「話す」、「触れる」にどれだけ時間をかけられているかや、どうしたらこれらに時間をかけられるかを振り返られたらいかがでしょうか。(注:このレポートでは取り上げられてはいませんが、ユマニチュードのもう1つの柱「立つ」も当然、意識すべきことであるだろうと思います。)

 

このレポートではもう1点、重要な結果がありますが、それは次回(←リンクあり)に述べます。

 

(文:星野 周也)

<本文で取り上げた以外の認知症Cafést内関連記事>

認知症とは

<その他参考>

認知機能の評価法と認知症の診断|日本老年医学会