矯正治療が将来的に認知症予防につながる!

 

こんにちは。カフェスト編集スタッフのmimiです。

歯科での矯正治療

最近、一般の歯科でも矯正治療を提供しているのを見かけます。

 

従来のイメージでは、矯正=審美的な意味合い、もしくは、重度の不正咬合(こうごう)などの場合に行うもので、主に子どもが行うものでした。
しかしながら、今は成人後も矯正を行うケースがあり、さらに、矯正を行うことが将来的に認知症予防にまでつながるという話がありましたのでお届けします!

そもそも・・認知症と歯の関係

「8020運動」という言葉を耳にされた方も多いのではないでしょうか。厚労省と日本医師会による、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。ちなみに永久歯は、親知らずを除くと28本です。

 

「80」は年齢でもあり、一生涯の象徴でもあります。「20本」は「自分の歯で食べられる」ために必要な歯の数を意味します。今までに行われた歯の本数と食品を噛む(咀嚼)能力に関する調査によれば、だいたい20本以上の歯が残っていれば、硬い食品でもほぼ満足に噛めることが科学的に明らかになっています。

 

また、このような研究事例もあります。

神奈川歯科大学の研究で、歯の残存数が20本以上ある人と、歯がなく義歯(入れ歯、インプラントなど)もつけていない人とでは、認知症になるリスクが1.9倍と大きな差異が見られました。咀嚼力が低いと感じている人も、1.5倍のリスクがあることがわかりました。
歯がなくなることで脳への刺激が減り、それが脳の活性化を低下させることで、認知症の発症率が高まるといわれています。

参考:山本龍生/神奈川歯科大学/歯を失って義歯を使わなければ認知症のリスクが最大 1.9 倍に~厚労省研究班が健康な高齢者 4425 名を追跡して明らかに~/JAGESプレスリリースNO. 12-033

歯周病がアルツハイマー型認知症に関連する可能性も

最新の研究では、アルツハイマー型認知症と歯周病の罹患に正の相関があること、マウスでの実験で、歯周病原因菌であるジンジバリス菌を全身投与したマウスの肝臓に脳内老人斑成分であるアミロイド βが産生されていることが分かり、その関連に注目が集まっています。(参考:世界発ヒト歯周病の歯茎で脳内老人斑成分が産生されていることが判明 〜歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与解明の新展開〜|日本の研究.com 2019.11.14付 

なぜ矯正が認知症予防につながるのか?

矯正の審美的効果以外の効果として、下記が挙げられます。

 

  • 歯磨きしやすく汚れが残りにくい歯並びにすることで、虫歯・歯周病を予防
  • 長期的に安定した噛み合わせ
  • 正しい噛み合わせになることで一本一本の歯の寿命が長くなる

(結果的に、肩こりや頭痛などが改善することもあるそうです)

 

ここから、このように認知症予防につながります。

 

  • 歯周病を予防することでアルツハイマー型認知症を予防できる可能性がある
  • 安定的なかみ合わせでしっかり咀嚼し脳に刺激を与えられる
  • 正しい噛み合わせになることで歯が抜けることを防ぎ、咀嚼力を維持する

 

義歯の調整も効果的

すでに義歯にされている方でも、噛み合わせを最適にすることで認知症の進行を遅らせる可能性があります。義歯は一度作ったあとも、顔の周りの筋肉の変化などで合わなくなるケースが多々あります。定期的に歯科診療を受け調整し、咀嚼力を保つことが大切です。

まとめ

厚労省の患者調査(平成29年)によると、矯正患者約1万8千人のうち約4割が20歳以上。50歳以上のケースも3%超あり、中には80代という報告もありました。大人の矯正も珍しいものではなくなっているようです。

 

歯の健康を保ち、いつまでもご飯を美味しく食べ、心身ともに充実した暮らしを送りたいですね!

 

 

春の低気圧には注意せよ!ー自律神経のバランスを整えるケア―

 

3月になり、認知症Caféstの「春は認知症の症状が悪化する?」の記事がアクセスされています。
ありがとうございます。

春は認知症の症状が悪化する?」の記事から

この記事では

 

3月から4月にかけての季節を「木の芽時(コノメドキ)」という

・この時期は「身体的・精神的に一番バランスを崩しやすい時期」と言われている

 

と書き、バランスを崩しやすい理由について以下のように記しました。

 

理由のひとつは春の安定しない気温の差です。ずっと低かった気温が急に温かくなったり、また寒くなったりと、身体にとってストレスになります。それにより自律神経のバランスが崩れ、精神的に不安定になってしまいます。

 

春は発達した低気圧が一年で最も多い季節

同じく春の天気の特徴として、「発達した低気圧が1年で最も多い」という点が挙げられます。

 

実は、カフェスト編集スタッフの私は、低気圧のときに頭痛を典型症状とする体調悪化の傾向があります。
それゆえ、春の低気圧には用心をしていかなければならないと思っています。

先週の土日の体調悪化と「頭痛ーる」というアプリ

用心をしていなければならないと思っていながら、先週の土日(3/14、3/15)は頭痛に見舞われ、何かをする気にならず、布団に横たわっていました。

 

注:画像はi-stockから

 

この体調悪化を温度と気圧のデータとともに、振り返りをしてみたいと思います。
温度と気圧のデータは「頭痛―る」という気圧予報のアプリから取得しました。(注:この1週間くらいの過去の数字を振り返りのデータとして取得しました。ただし、その値が予報値のデータなのか、実績値のデータなのかについては記載がないので、そのいずれかの数字ということで理解すればよいと思います。大きくずれはないだろうと思います。)

 

この数カ月なのですが、このアプリをダウンロードして、気圧、温度と体調の関係を確認しています。それで確かに、気圧が下がるときに頭痛が起こるという説が自分には当てはまっているのではないかと思うようになりました。
そして、低気圧に対する心身の備えのために、「頭痛―る」での気圧予報を熱心に見て、活用している次第です。

先週の土日の体調悪化を温度と気圧のデータで振り返る

さて、このアプリで表示される数値のデータから、3/93/16の温度と気圧の推移をグラフにしてみました。

3/9~3/16の温度と気圧の推移
温度は左の目盛でオレンジ実線/気圧は右の目盛で水色点線

注:グラフでの9日の箇所を参考にしていただきたいですが、各日、0時、9時、12時、18時の4時点のデータを取得しました。

このグラフから分かること

このグラフから、私が頭痛に見舞われた3/14、3/15の特徴として

 

・気圧が下がり続けている

・温度の急激な変化

(14日は温度が急激に下がり、15日は急激に上がる)

 

が挙げられます。

 

また、このデータからは、10日も急激に気圧が低下していることも確認できます。それでも、このときは体調を崩すことはありませんでした。
この日、温度は上がり続けるという動きをしました。

 

以上より、14~15日は、気圧が下がるという変化に加えて、温度が急激に下がるという変化があったことがダブルパンチとなって、ノックアウト状態になったようだということが分かります。
15日は温度が上がる変化ではあるのですが、前日(14日)の雪も見られるほどの温度低下からの上昇の動きであり、それは身体には負担になっていたようです。

対策の基本―温度や気圧の変化に負けないために―

温度や気圧の変化に負けないための対策の基本は自律神経のバランスを整えることです。

 

普段から、13⾷をしっかりと⾷べ、睡眠を⼗分にとり、適度な運動を⾏うなど、規則正しい⽣活リズムで過ごすことが⼤切だ。メリハリのきいた規則正しい⽣活を送ることは、体に適度なストレスを与えるため、環境の変化に応じて⾃律神経が働きやすくなる。

出典:「爆弾低気圧」級に発達か。頭が痛い、古傷が痛む…低気圧襲来で起こる「気象病」の基礎知識|BUSINESS INSIDER JAPAN 2020310日付

 

言われてみればそうだと頷くことであろうと思いますが、基本事項として確認しました。

痛みのタイプを知る―交感神経の活性化なのか、副交感神経の活性化なのか?―

温度や気圧の変化による頭痛には、交感神経の活性化に伴う痛みと、副交感神経の活性化に伴う痛みとがあるそうです。
心身状態や反応に対するコントロールを越えて交感神経や副交感神経が活性化することにより痛みが伴うということでしょう。

注:自律神経には昼間や活動しているときに活発になる「交感神経」と、夜間やリラックスしているときに活発になる「副交感神経」の2種類があります。

 

したがって、対策を考えるには、痛みのタイプを知ることが重要です。(注:参考記事は同上

 

低気圧が近づく(気圧が下がる)
副交感神経が活発になり、血管が拡張して、片頭痛が起こりやすい
低気圧が去る(気圧が上がる)
交感神経が活発になり、血管が収縮して、緊張性頭痛が起こりやすい

 

低気圧に伴う頭痛と言っても、低気圧が近づき気圧が下がることに伴う頭痛と、低気圧が去り気圧が上がることに伴う頭痛に大別されることが確認できます。
それは上記の表で確認できるように、副交感神経が心身症状のコントロールを越えて活発化しやすいのか、あるいは、交換神経が活発化しやすいのかの違いでもあります。

 

この区別に対して、

 

副交感神経が活発化しやすい人
体を軽く動かしたり活動的になることで交感神経の働きを促す
交感神経が活発化しやすい人
体を温めるなどリラックスして副交感神経の働きを促す

 

対策も「活動的になる」ことがいい場合と「リラックスする」ことがいい場合とに分かれます。逆の方向になっていることに注意が必要ではないかと思います。

 

表で示したように、交感神経と副交感神経は相補的な関係にあり、これが「自律神経のバランス」という概念の実体(の1つ)と思います。

終わりに

低気圧と体調の関係

一つの記事に従って、気圧と交感神経、副交感神経との関係を単純化して、図式化したものの、少し突き詰めて考えていくと不明点も残り、仮説として捉えるのが良いと思っています。
もっとも、自律神経のバランスというのが交感神経と副交感神経の相補的な関係に基づくということや、この関係が気温や気圧などの変化により揺さぶられ心身症状が現れるということは概論としては正しいと思います。
しかし、これらがどういうメカニズムなのかについて納得するためには、気圧、血圧、交感神経、副交感神経の関係性について、さらに理解を進める必要があると思いました。

 

プロスキーヤーであり、登山家であり、医学博士である三浦豪太氏は、体と気圧の関係について、こう述べられています。標高が高いと気圧が低くなるという関係に基づく発言です。

気圧は体にとって重要だ。体は酸素を利用してエネルギーを作っている。そのため、肺を循環する血液の酸素濃度は、外気よりも低い。そこに酸素の圧力差が生じて、体の中に酸素を効率よく取り入れることができる。

しかし、高山では外気の酸素圧と体の中の酸素圧差が小さくなり、酸素が体に取り入れにくくなるため、高山病が引き起こされる。

 

ご自身の登山の経験と合わせて語られていて、説得力を感じます。
まだ、自分は情報収集の途上にある思います。今後さらに、より深い理解と納得を目指していきたいと思います。

 

低気圧とケア(介護)

先週の土日は頭痛に見舞われてしまったわけですが、「頭痛ーる」というアプリを使い始めて、低気圧の予報に対しては、しっかり食べて、よく眠るという静養重視の方針を特に心がけ、功を奏してきたと思います。手応えを感じていました。

 

今回の記事を書きながら、体を動かすことで頭痛が解消されたという経験も覚えがあるので、今後は、静養という静の対策のみならず、体を動かすという動の対策を取るべきタイミングについての検討もしたく思っております。

 

今回は私個人のセルフケアの観点が強い記事となりましたが、天気(気圧)と体調の関係についての知識を頭の片隅に入れておくことで、介護や認知症のケアにも応用できるであろうと思います。

 

(文:星野 周也)

 

 

こんにゃくがアルツハイマー病発症予防に有効

 

本日は認知症Cafést Online編集スタッフのKが、Editor’s Tweetをお届けします!

こんにゃく

今回は『こんにゃく』についてご紹介いたします。
こんにゃくは超低カロリー&食物繊維が豊富で、「お腹の砂おろし」や「胃腸のほうき」などと呼ばれ、グルコマンナンという水溶性食物繊維による整腸作用があることでも有名です。最近では、パスタなどの麺類、米類の代わりに使用され、ダイエット食としても活躍しています!

 

こんにゃく芋由来セラミド経口投与のマウスに対する効果

そんな『こんにゃく』ですが、最近の研究でアルツハイマー病発症予防に有効との発表がありました。北海道大学大学院先端生命科学研究院産業創出部門の五十嵐招聘客員教授、湯山特任准教授らの研究グループは、植物(こんにゃく)由来のセラミドがアミロイドβ(ベータ)ペプチド(Aβ)蓄積を軽減させることが疾患モデルマウスを用いた実験で発見したと発表しました。

 

具体的には、脳内でアミロイドβ(ベータ)が過剰に発現しているマウスに対して、こんにゃく芋から精製したセラミドを2週間経口投与する試験を実施したところ

 

・大脳皮質や海馬領域でアミロイドβ濃度の減少

・大脳皮質や海馬領域でアミロイド斑の減少

・海馬領域でシナプス障害の抑制

・短期記憶の改善

 

という結果が得られました。

 

アミロイドβを取り除けば、認知症の症状が改善するという立場に立つ研究ですね。

 

同グループは、今回の結果から、認知症予防目的の機能性食品素材や新薬開発につながる可能性があると発表しています。今後さらに、ヒト介入試験による植物性セラミドの認知機能改善効果の検証を実施していく予定とのことです。

 

 

父の死に際して~認知症について考えたこと~

 

こんにちは。認知症Cafést Online編集スタッフのマツです。

父の葬儀で

以前の記事でも取り上げたことがありましたが、私の父は一昨年の夏に認知症と診断され、療養型の病院に入院していました。 その父が先月、肺炎のため他界しました。76歳の誕生日を迎えたばかりでした。

 

正直、それほど深い悲しみや感情の揺らぎはありませんでした。バタバタとした葬儀の中で感じたのも、親類縁者の中で涙を流していないのが私一人だけだということに気づき、きっと私は根が冷たいんだろうなと自嘲したということくらいでした(勿論、遠方から駆けつけてくれた親類に対する感謝の気持ちは強く感じていましたが)。

 

そして葬儀から1か月ほど過ぎた今、改めて認知症について感じることがありましたので、本日はそのことを書かせていただきます。

認知症の症状と進行

父は8年ほど前まで、小さな住宅設備の会社を営んでいました。文字通り健康だけが取り柄というような人でしたが、10年ほど前から足腰の不調を訴えるようになり、次第に1日中ゴロゴロするようになりました。

 

ほどなく朝からの飲酒が始まり、社会的なつながりも絶えました。町内の集まりや趣味の柔道の行事も欠席し、心配して様子を見に訪れた知人にも会わないということが多くなりました。
また聴力の低下が進み、特に飲酒時には会話ができないほど聞こえが悪かったようです。

 

5・6年ほど前からは、会話の端々に不審な面が目立ち始めました。数分前に伝えたことを忘れる、日にちを間違えるといったことが多くなりました。

 

2年半ほど前に母が体調不良で入退院を繰り返すようになると、父の病状は顕著に悪化しました。排泄を失敗したまま着替えないでいることもしばしばで、母の面倒をみていた私に対する暴言暴力も現れ始めました。また私が全盲であることに付け込んで、うそをついて酒代をだまし取ったこともありました。

 

私も母の面倒との両立に耐え兼ね、1年半ほど前に父を専門医に連れて行き、その日のうちに入院ということになりました。

診断結果

私は当初、アルコール依存症の面から父への対策を検討し、行政などへの相談を試みました。しかし、入院先の主治医の診断はアルコール性認知症というものでした。

 

つまり、一連の症状の直接的な原因がアルコールというより、アルコールによって認知症が引き起こされ、その症状の一つである“抑えが効かなくなる”ことによってアルコールの摂取が続いたということでした。
こうして書いてみると、負のスパイラルだったわけですね。

認知症がもたらすもの

父が他界して1か月。私が感じることは認知症は家族や親しい人からの愛情を奪ってしまうのかもしれないということです。

 

 

私は、特に父が入院するまでの2年間ほどのことを、忘れることができません。病院の受診を進める家族の言葉を無視し続け、あまつさえ暴力までふるい、人の弱みに付け込んで金銭をだまし取る……。

 

真面目と健康だけが取り柄だったような父を、認知症(あるいはアルコール)が一変させてしまいました。勿論、病気の症状としてそのような行為が行われていることは、頭では理解できます。しかし、信条としては到底納得できません。愛情をもって接し介護するなんて、到底できませんでした。葬儀のときにも、涙どころか安堵してさえいました。

 

認知症になるということは、単に物忘れや徘徊といった諸症状が起きるということだけでなく、家族や親しい人から愛されなくなってしまう…愛されなくなるようなことをしてしまうということなのかもしれないなーというのが、強く感じたことでした。

もし、早期に診断を受けていたら…

しかしこうして時系列にしてみると、父はMCIや仮性認知症ではなかったのか、少なくとも早期に医師の診察を受けていたらそういう診断になったのではないかと思える点もあります。

 

そして、以前の記事でも取り上げたように、MCIや仮性認知症なら回復の余地もあったはずです。(もっとも、父自身が極度の医者嫌いだったこと、病院代として渡したお金を酒代にしてしまう人だったことからして、早期の受診は無理だったとは思いますが…)

 

 

3月のオレンジカフェは中止―新型コロナウィルスは世界各地で感染が広がる―

 

こんにちは。
認知症Cafést Online編集スタッフのSです。

新型コロナウィルスは世界各地で感染拡大

11日(昨日)、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が、「新型コロナウィルスはパンデミックと言える」と述べて世界的な大流行になっているとの認識を示しました。

 

日本時間12日午前2時現在で、113の国・地域で感染者数は12万4101人に達し、うち4566人が死亡しています。

参考

WHO「新型コロナウィルスはパンデミックといえる」|NHK NEWS WEB 2020年3月12日付

新型コロナウィルス、現在の感染者・死者数(12日午前2時時点)|AFPBB News 2020年3月12日付

国内の新型コロナウィルス感染の現状

厚生労働省の関連サイトでは、国内では11日現在、感染者数568人、死者数12人となっています。(注:クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」を除いた数字です。「ダイヤモンドプリンセス号」に関しては10日18時時点で、PCR検査陽性者696人、死者7人と報告されています。)

3月のオレンジカフェは中止

このような状況下で、今月(2020年3月)のオレンジカフェは中止と聞いております。
ご確認をお願いします。

 

・オレンジカフェ(埼玉県春日部市)|場所:福祉の街 小規模多機能春日部

 

・やさか町オレンジカフェ(静岡県静岡市)|場所:セントケア八坂東 小規模多機能

 

・てんのうだいオレンジカフェ(千葉県我孫子市)|場所:セントケア我孫子デイサービス

 

・オレンジカフェふじみん(埼玉県ふじみ野市)|場所:福祉の街 グループホーム鶴ケ岡

 

総理大臣官邸からのイベントについてのコメント

3月10日、総理大臣官邸で第19回新型コロナウィルス感染症対策本部が開催されました。

 

イベントについては以下のコメントが出されております。

 

 政府としては、先般決定された基本方針において、イベントの開催の必要性について主催者等に検討をお願いし、またそれを踏まえて、全国規模のイベントについては中止、延期、規模縮小等の対応を要請したところですが、専門家会議の判断が示されるまでの間、今後概ね10日間程度はこれまでの取組を継続いただくよう御協力をお願い申し上げます。
 また、専門家会議においては、換気が悪く、多くの人が密集し、近距離での会話や発声が行われたという3つが同時に重なった場で、より多くの人が感染していたとの知見も示されております。
 国民の皆様におかれましては、こうした場所や場面をできるだけ避けていただくよう、お願いいたします。

 

このコメントのなかで、「換気が悪く、多くの人が密集し、近距離での会話や発声が行われたという3つが同時に重なった場で、より多くの人が感染していたとの知見」はしっかりと受け止めるべき点と思います。ひとりひとり感染拡大防止のための行動に注意深くつなげていきましょう。(終)

 

 

AIは自立支援の介護を変えることができるか?―動画や言語のデータ分析と介護―

 

みんなの認知症情報学会の会員向けのメールマガジンに、興味深い記事のリンクがありました。
こちらでも紹介したいと思います。(注:編集スタッフの星野は会員です。)

AIと介護に関する加藤忠相氏と石川翔吾氏のトークセッション

その記事(注:全体に公開されています。)はこちらです。

トークセッション「AI×超高齢社会 ~データでかわる? 介護の現場」開催報告|日本科学未来館

 

昨年12月15日に日本科学未来館の主催で行われた、株式会社あおいけあ(注:神奈川県藤沢市の高齢者向け介護福祉サービス。小規模多機能型居宅介護・デイサービス・グループホーム)代表取締役の加藤忠相氏と、静岡大学のAI研究者の石川翔吾氏のトークセッションの模様を伝えてくれており、AIと介護の関係が主要な論点となっています。

自立支援の介護

あおいけあの加藤忠相さんのお話は、何度かお聞きしたことがあります。

 

加藤さんは、自分たちが目指すべき介護として、自立支援の介護ということを口酸っぱく言われます。
介護保険法の条文や社会福祉の歴史に基づき、このことを語られるので、説得力や重みが違います。

 

まず、加藤さんは、自立支援の介護について語るときに、介護保険法 第2条 第2項の前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。を引用します。

 

この条文について、『在宅医療カレッジ 地域共生社会を支える多職種の学び21講』という本のなかでは、以下のように考えを述べられています。

 

「軽減又は悪化の防止」が僕らの仕事だと定義されてます。そのうえで、ケアする人とは何か?健康に問題のある人に対して以下のことを行なう職業人だと、僕は思っています。まず「①回復をめざす」。よくするわけです。そして「②現在の機能を保つ」。悪化の防止、維持です。しかし、高齢になってくるにつれだんだん落ちてきます。その場合は、「③最後まで寄り添う」。

世の中にはお年寄りを囲い込んで、ただ弱っていくのを見守っているのも同然に思える事業所もあります。そんなことをして介護保険でお金をもらったらいけないと僕は思います。ちゃんと自立の支援、回復できること・機能を発揮できることをケアする人が支援して、はじめて介護報酬がもらえるのではないでしょうか。

 

 

また、自立の支援に関しては、

 

2000年の介護保険法によって、介護の概念は、それまでの「療養上の世話」(1963年 老人福祉法)から、「自立の支援」にフルモデルチェンジしました。

 

と言われています。

AIは自立支援の介護を変えることができるのか?

加藤忠相氏と石川翔吾氏のトークセッションの記事では、納得できるところ、期待できるところ、まだ課題が残るではないかと感じるところがありました。
AIは加藤さんが言う自立支援の介護を変えることができるのでしょうか?

納得できるところ―多様な解釈を提供するAIという点は思想的には納得できる―

お二人は、AIで「効率化」は追求しないと言われています。

 

この見解の背景にあるのが、AI研究の1つの立場で、深層学習などの技術を利用して、「一つの正解」にいかに効率よくたどり着けるかを重視するものです。

 

しかし、石川さんは、「あおいけあ」での介護現場を見るなかで、介護の達人と言われる人は、「一つの正解」を出しているのではなく、利用者一人ひとりに合わせた多様な介護を提供していると考えるようになります。そして、「多様な解釈」を提供する(「考える」)AIが介護の現場で役に立つのではないかという発想に至ったようです。

 

(加藤さんの発言)

私たちの介護は、生活を支えています。皆さんも、仕事以外の生活の中で生産性や効率は求めていませんよね。今日はお茶をおいしくいれることができたとか、紅茶がきれいだったとか、そういうことを感じることのほうが豊かです。

 

(石川さんの発言)

AI研究は二極化していると思います。一つは、生産性や効率性を追い求める方向です。しかし、私たちの社会は最適化問題(正しい答えを最小の手順で解く方法)なのでしょうか。正しい生き方みたいなことが定義されているわけではありません。そこで介護の現場のように、一般解を得るのではなく、多様な個人を理解できるパーソナライゼーション(個人化)に向かうAI研究もあるべきです。2種類のAI研究がうまく融合して、人間同士がうまくコミュニケーションができる世界が理想です。

 

「一つの正解」ではなく、「多様な解釈」を提供するAIを目指すというのは、思想的には納得し、共感しました。

期待できるところ―介護の様子の映像解析は期待できる―

石川さんは、利用者と介護者のコミュニケーションに注目し、介護の現場で大切とされている「見る」「話す」「触れる」をどれくらい行っているかを測るツールを開発されたと言います。

(注:「見る」、「話す」、「触れる」はユマニチュードの技法に基づいていると思います。)

 

これは、介護場面の動画を撮影してAIで映像解析するということと思いますが、この点は一番イメージを持つことができ、期待できる点と思います。

 

行為は自分では外から見ることができませんから、客観的に自分の姿を確認でき、映像解析して得られた数値と合わせて、振り返りができるのは画期的です。よりよいケアを求める介護職にとっては、これらは行動変容を促す貴重なデータになるだろうと思います。

まだ課題が残るのではないかと感じるところ―記録の構造化については一部不明点がある―

「多様な解釈を提供するAI」とは言いますが、その具体的な成り立ちについては不明であると感じます。

 

記事では介護記録のAIでの分析例が記されています。

 

介護記録に書かれていることを、性格や得意なことなど個人に関わる情報(パーソナル情報)と、食事や入浴などその日の行動に関わる情報(日常生活動作)に分け、それぞれを構造化してどのような情報がどの程度集まっているか、ひと目でわかるようにしたのです。こうすることで、介護者が何を重視して介護するのか見やすくなりました。

 

 

また、単語の樹形図のような画像(下図)があり、データの構造が見えることで、何が介護に大事なのか誰でも分かると記されています。

注:画像は記事から入手

 

データの構造が見えることは了解しました。確かに、樹形図のように単語間の関係が視覚化されていると思います。しかし、そこから「何が介護に大事なのか」が見えてくるという点については、まだ疑問に思っています。

 

少しまとめますと、動画データの分析結果の利用については期待できると思いましたが、言語データの分析結果の利用についてはまだ課題が残るのではないかと思いました。

 

なお、介護記録についての以下の考えが、この議論ー介護記録の構造化により、何が介護に大事なのかが分かる―の前提にあり、重要なことですので、引用しておきます。

 

利用者に関する情報は「介護記録」として残ります。そこに書かれている情報を介護者が見て、この利用者は何が好きで何ができる人なのか、どうしてもできないこととして、介護者が本当に手助けすべきことは何か、ということを考え、その人のための介護を行っているのです。

 

介護記録のような言語データの分析(テキストマイニング)で分かることとは?

言語データの分析で分かること

介護記録のような言語データの分析(注:テキストマイニングと言われます)で分かることについて、私も実際に何点かのネット記事(注:後述の参考に記す)で確認してみました。

 

それらによれば、言語データの分析ソフトは、単語の出現頻度や共起(ある文章中で、ある単語が現れるときに、その前後で別の単語が頻繁に出現すること)の関係性などを算出してくれるそうです。

 

そのうえで、私が大事だと思ったのは、言語データ(テキスト)以外の外部変数も併せて分析しているという点です。外部変数は、私の理解ですと、言語データを集計したり、分類したり、検索したりするためのラベルやフラグの機能を有しています。
外部変数として例に挙げられていたのは、そのテキストを書いた人の属性―管理職なのか一般社員なのかなど―、業績、上司からの評価などでした。

 

この外部変数を加えることで、管理職と一般社員の間での頻出単語の比較などができるようになります。上司からの評価の高い社員と低い社員の間での言語データ上での違いの検討も可能になるでしょう。このようなことは、介護記録のような言語データの分析から、意味のある結果が得られる場合の1つの形だろうと思います。
実際に、加藤さんと石川さんのトークセッションの記事でも、加藤さんが経営する「あおいけあ」の記録では、他の介護施設の記録と比べて、利用者の性格や得意なこと、好きなことに関する情報が多かったと書かれています。

テキストマイニングと介護の仕事

テキストマイニングの「マイニング」は鉱山から鉱石を掘り出すという意味の「mine」という英語から来ています。テキストをマイニングするというのは比喩表現と思いますが、文字情報の集まりから有用な情報を掘り出すということでしょう。

 

私見にはなりますが、「掘り出す」という意味の「マイニング」は介護の仕事の一側面の比喩表現としても適当なのではないかと思います。

なぜかと言えば、以前の記事で記したとおり、介護の仕事は“detective(探偵)”(注:英国ハマートンコート認知症ケア・アカデミー施設長のヒューゴ・デ・ウァール氏による表現)のような側面があります。すなわち、その人の心身を活性化させるトリガーを探り当てていく関わりがあり、その人の表面上の言動から、隠されているトリガーを「掘り出す」ような関わりなのです。

 

特に認知症が進行した方で、意味をやりとりする会話が難しくなっている場合は、こうすれば生き生きとするのではないかと仮説を立てて、試してみるというような関わりが求められます。仮説検証という点はサイエンスに似ていると思います。

 

「介護は探偵のような関わり」と定義してみて、私が介護現場で働いていたときのある経験が、連想的に思い出されます。

 

食事量・水分量が低下し、先が心配された、明治生まれで100歳前後のご長寿の女性でした。ケアマネジャーがいろいろな飲み物を積極的に試していました。そうしたら、カルピスだけは口に合うのか、がぶがぶと飲まれることが判明し、カルピスをきっかけに、他の食事も受け付けてくれるようになり、見違えるように元気になられました。
表情が変わり、イキイキとされました。食事介助の拒否も見られていたのに、自らスプーンを持って、全量を召し上がられるようになりました。

 

思い出深い事例です。
加藤さんは、ケアの仕事として、「①回復を目ざす」、「②現在の機能を保つ」、「③最後まで寄り添う」を挙げられていました。この事例からは、自立支援の介護を考えるにあたり、「①回復を目指す」という点を忘れてはならないというメッセージが得られます。当然の目標とは思うもの、要介護状態が進行している人を前に、この事例のように、さまざまなものを試すという、具体的で粘り強いアクションにつながるかというと、必ずしもそうとは言えず、ケアの仕事をする人の間で差が出るところではないかと思います。

介護従事者それぞれのさまざまな試行(関わり)が描けると、多様性を表現できるのではないか?

上記の「カルピスだけはがぶがぶ飲んでくれた」という女性の事例をもとに、認知症が進行した方に対する、探偵のような関わりをしている場合の記録のありようについて考えてみると、「〇〇(カルピス)だったら飲んでくれるかもしれない」という仮説があって、「飲んでくれた」、「飲んでくれなかった」という結果があるという構造になると思います。「食事量・水分量が低下している」という課題や「どうしたら食事量・水分量が増えるか?」というケアをする上での問いも意識する必要があるだろうと思います。

 

「状態の改善(回復をめざす)」、「機能の発揮」など自立支援を目指す、さまざまな試行(関わり)―介護に従事する人それぞれ(介護職や看護職など)のさまざまな試行(関わり)―が描けるようになると、ケアの多様性が見えてくるのではないかと思います。そうすれば、「一つの正解」ではなく、「多様な解釈」が描けるのではないかと思います。
しかし、この私の指摘も依然として抽象度が高く、このためにどんな外部変数を設定すればいいか、どういう分析をAIで行ってもらえばよいかなどについて、具体的に示せているわけではありません。

 

今後、さらに、情報収集に努めてまいりたいと思います。

 

(文:星野 周也)