認知症支援のイメージカラーのオレンジはなんと柿の色

 

こんにちは。認知症Cafést Online編集スタッフのSです。
本日で9月も終わりです。

9月は世界アルツハイマー月間

9月は私たちのコラム「世界アルツハイマーデーに向けて」でも紹介したとおり、世界アルツハイマー月間でした。

世界アルツハイマーデーの日である21日を中心に、各地でオレンジ色にライトアップされた

認知症支援のイメージカラーであるオレンジ色で、21日を中心に各地でライトアップされました。

 

21日は世界アルツハイマーデーで、この日、公益財団法人認知症の人と家族の会のYouTubeチャンネルでは、日本全国をZoom(ビデオ会議システム)で結んで、各地のライトアップした建物を生中継(ライブ)で、伝えていました。

注:認知症の人と家族の会のYouTubeチャンネルから、9/21の全国各地のライトアップの生中継の動画のページをスクリーンショットしました。この画像をクリックすると動画のページに飛びます。

なぜ、認知症支援のイメージカラーはオレンジ色なのか?

では、なぜ、認知症支援や啓発のイメージカラーはオレンジ色なのでしょうか?

ネットで検索すると、元ネタあるいは原典の資料にたどり着くことはできなかったものの、なぜ、オレンジ色なのかについての情報を記しているページは幾つもあり、同じ内容でした。

 

一例を挙げると、町永俊雄さん(ジャーナリスト)は、認知症フォーラム.comのサイト内のコラム「オレンジ色を灯せ 〜世界アルツハイマーデーに寄せて〜」(2018.10.02)の中で次のように書いておられます。

 

なんで、オレンジ色なのかって。そういえばオレンジリングもそうだ。私も知らない。で、調べました。
それはかの陶工柿右衛門の赤絵磁器からきておる。あの夕暮れの柿の深くて豊かな柿色を苦心の末再現した柿右衛門の赤絵は大いに世界を驚かせ、日本の磁器が世界に輸出されることになったんだって。知ってた?
「ボーッと生きてるんじゃねえよ」

 

「ボーっと生きてるんじゃねえよ」が効いてますね(笑)

認知症支援のイメージカラーはなんと柿の色

江戸時代に活躍した陶工、酒井田柿右衛門が作った赤絵磁器は、夕暮れの柿の深くて豊かな柿色を、磁器の上に実現させたいと考え、苦心の末成功させたということなのだそうです。
そして、この磁器は海外に輸出されて高い評価を受けたのだとのこと。

 

このように認知症支援・啓発が、日本から世界に広く知れ渡ることを願い、柿の色(≒オレンジ色)にされたのだと。
ということで、認知症支援のイメージカラーのオレンジはなんと柿の色ということでした。

酸っぱい VS 渋い、甘い

オレンジというと酸っぱい味覚のイメージが広がりますが、柿と聞いたら、急にその味覚のイメージが渋くなったり、甘くなったりしますね。

 

脱線になりますが、昔、こちらのコラム「河内晩柑とベリー類」で、グレープフルーツに似た苦みのある河内晩柑(かわちばんかん)のジュースで、中高年の方の認知機能の一部である記憶力を維持する効果が見られたことを紹介しました。

 

河内晩柑は柑橘類(かんきつるい)ですね。
なので、渋かったり、甘かったりというよりも、酸っぱい方が認知機能の維持には効果があるのかなと思ったりするのですが(笑)…。

酒井田柿右衛門のエピソードは実話なのか?

話を戻しまして、夕日に映えた柿の色を見て、その色を磁器の上に実現させたいと思ったいうエピソードは実話なのかが気になってネット検索を続けました。

国語の教科書で、この内容で伝記物語として描かれていたのは本当である

このエピソード自体が実話かどうかは分からなかったのですが、歌舞伎の演目になっていたり、国語の教科書で取り上げられていたりというのは本当のことのようでした。
国語の教科書や読み物のなかで、失敗を繰り返しても諦めず、苦労の末「夕日に照らされ輝く柿の実の色」を焼物に再現した発明家の成功物語(←出典はこちらのページとして描かれていたようです。
歌舞伎は、『名工柿右衛門』として、片岡仁左衛門の名演で大正元年(1912年)初演以来繰り返し上演され人気を博しました。また、大正11年(1922年)から終戦(1945年)まで小学五年生が、友納友次郎著の『陶工柿右衛門』という読本を学びました。(←出典は同じくこちらのページです)

酒井田柿右衛門が編み出した磁器が欧州の王侯貴族の間で重宝されたことも本当である

佐賀の有田での磁器である有田焼(注:江戸時代には伊万里焼もしくは肥前焼と呼ばれた)の17世紀初頭(1616年)からの400年の歴史の中で、次のことは事実のようです。

 

・1646年頃、初代の酒井田柿右衛門(現在の十五代まで続いている)が磁器への赤絵付けに成功したこと

・1650年代末にオランダ東インド会社により欧州に輸出されたこと

17世紀後半の欧州各地の王侯貴族の間で、柿右衛門様式磁器が流行したこと

・17~18世紀の欧州で、遥か遠い異国である東洋から運ばれてきた磁器が、「白き黄金」と呼ばれるほど貴重なものであったこと

 

いやあ、酒井田柿右衛門が赤絵付けに成功させた磁器が、欧州の王侯貴族の間で重宝されるとはなんともドラマティックですね。実話かどうか分からない、夕日に映えた柿の色をヒントに赤絵付けにたどり着いたというエピソードよりもはるかに壮大に感じられます。初代の酒井田柿右衛門が想像することもできなかった展開であることでしょう。

 

こういう壮大な展開への期待が、現代の認知症支援・啓発というテーマにおいて、柿の色を由来とするオレンジ色に込められているということなのですね。

最後に

確かにボーっと生きてきたかもしれない

認知症支援のイメージカラーのオレンジ色の由来をたどることから、有田焼や酒井田柿右衛門の歴史に入り込むこととなり、「江戸時代は鎖国をしていた」とか、「(鎖国の中)長崎の出島でオランダ、中国、朝鮮と貿易を続けた」とか、昔、歴史で習ったことが蘇ってきました。

 

貿易が制限されていたなかで、酒井田柿右衛門が佐賀の地で成功させた赤絵付けの磁器が長崎から欧州に渡り、愛好されたということになりますね。
酒井田柿右衛門にまつわる以上のお話はこの数日で知った雑学ですが、それと小中学生の頃に習った知識が結びついて、脳が活性化してきております。
確かにボーっと生きてきたかもしれないと思います(笑)。

佐賀の有田へ行きたくなった

有田焼についてネットでいろいろ見ていたら、佐賀の有田へ行きたくなりました。

 

9月21日の世界アルツハイマーデーの日は、東京都民の私は、東京の赤坂を散策しておりました。
国による「Go To トラベル事業」が始まっておりましたが、東京都在住の者の旅行は除外されておりまして、都民は東京を散策するしかなかったのです。
ただ、10月1日以降は、東京都民も対象にしてもらえるようですね。

 

このタイミングで筆の勢いで、佐賀の有田まで行ってしまうのかは未定ですけど(笑)、「Go to トラベル」したいですね。

(終)

注:写真は筆者が東京・赤坂の日枝神社にて9月21日に撮影

 

<参考>

1. 世界アルツハイマーデー及び月間(令和2(2020)年度)|厚生労働省のサイト

2. 認知症支援のイメージカラーはなぜオレンジ色?|おすそわけマーケットプレイス ツクツク!! 2018.05.08

3. 海外の認知症施策紹介 Vol.5 世界アルツハイマー月間(著者は太田一実氏, 作成日付は不明)|湘南健康大学 湘南から「日本の未来をデザインする」 認知症情報発信サイト

4. なぜ認知症支援のイメージカラーはオレンジなのでしょうか(著者は杉浦みさえ氏)|Amebaブログ Big Tree ~キラキラしたケアマネでいられるために~ 2020.09.12

5. 秋の味覚「柿」。どうして甘かったり渋かったりするの?|日々是活き行きー暮らし歳時記 2019年10月31日

6. 柿右衛門窯にある「柿」を語れれば、焼き物ツウに。(著者は南雲朋美氏)|DIVEintoDEEPERJapan 2016.02.12

7. 初代柿右衛門の伝記物語(Hatena Blogのid jafmama氏)|本棚・陶磁と文学 aficionado’s bookshelf 2019.04.10

8. 有田焼(ありたやき)とは|有田観光協会 ありたさんぽ

9. 有田焼創業400年事業について|ARITA EPISODE2

10. 1646年ー赤絵付けの成功|ARITA EPISODE2

11. 1650年ー欧州への輸出の始まり|ARITA EPISODE2

12. 柿右衛門とその歴史<江戸前期>|柿右衛門文化財団・日本

13. 【公式】柿右衛門窯

14. 旅行者向けGo to トラベル事業公式サイト

 

 

40代からユマニチュードの技法を学んでいこうー未来にも今のこの時代にも役立つー

注:学会のホームページ(ページはこちら)より画像を入手しました。

日本ユマニチュード学会のオンラインイベントに参加

こんにちは。認知症Cafést編集スタッフのSです。

 

この前の土曜日(26日)は画像にて示した、日本ユマニチュード学会のオンラインイベントに参加しました。
会員ではないのですが、午前中の市民公開講座は、事前登録をすれば拝聴できました。

市民公開講座のタイトル

市民公開講座のタイトルは

「~福岡市から始まり広がる認知症フレンドリーシティ~」 です。

福岡市の取り組みー認知症フレンドリーシティとしてー

「ユマニチュード」というケア技法の名前を冠する学会で、「認知症フレンドリーシティ」という「まちづくり」の話をするのかと少し距離を感じもしたのですが、福岡市のホームページ内で紹介されているこちらの動画「福岡100 認知症フレンドリーシティ」では、次のように堂々と発信されています。

福岡市では、認知症の人と心をつなぐ、フランス生まれのコミュニケーション技法「ユマニチュード」を取り入れ、市民みんなが認知症の人にやさしくなれるまちを目指します。

 

注:「福岡チャンネル by Fukuoka city」というYouTubeチャネルのページをスクリーンショットして、画像化しました。この画像をクリックすると上記動画のページに行くことができます。

「ユマニチュード」は「認知症フレンドリーシティ」の中核にある

ですから、「ユマニチュード」と「まちづくり」は距離がある概念ではないどころか、「認知症フレンドリーシティ」のまちづくりの中核に、「ユマニチュード」が位置付けられていることが分かります。
福岡市の認知症に関するページ(←リンクあり)に行きますと、上位に「ユマニチュード」という見出しの項目があり、目に飛び込んできます。力を入れていることが伝わります。

福岡市の「ユマニチュード」の取り組み

福岡市では「ユマニチュード」に関して、実際に以下の取り組みをしています。

 

・市民向け、小中学生向け、家族介護者向けにユマニチュードに関する講座を行っている

・地域住民にユマニチュードの基礎を教える伝道師としての役割を持つ地域リーダーを養成している

・ユマニチュードを動画で学べるアプリ「CareWiz(ケアウィズ)」(株式会社エクサウィザーズが開発)を市民に紹介している

 

 

市民公開講座に参加して思ったこと①
:家族介護者が登場するのが良い

パネルディスカッションに、家族介護者向けのユマニチュードの講座を受けた、認知症の妻を在宅で介護している男性(大津省一さん)が、ユマニチュードの実践の報告者として登場しました。

 

在宅で認知症の人を介護する家族において、ユマニチュードの実践により負担軽減等の効果があったというのが公開講座全体でのメッセージの1つでした。
福岡市での「認知症フレンドリーシティ」の取り組みが、家族の負担軽減をも目指したものである(効果検証も行っている)ということが重要なことではないかと思います。

 

大津さんが言われていた言葉のメモをここで転記しておきます。

 

・認知症の本人(妻)は、視野が狭くなっている、集中力が落ちている。見えていないし、聞こえていない。

・目を見て、手を握って、話せば、伝わる。安心してもらえる。

 

 

市民公開講座に参加して思ったこと②
:ユマニチュードの技法を40代から学んでいこう

印象に残った地域リーダーの方の言葉

パネルディスカッションでは、ユマニチュードの基礎に関する地域住民への伝道師である地域リーダの方(松原弘美さん)も実践報告をされていました。
その中で、次のようなお話が印象に残りました。

 

・公民館でユマニチュードの基礎について話をすれば誰も素晴らしいと言ってくれる。

・聞き手としては親の介護を終えた世代の人たちが多く、ユマニチュードの技法は素晴らしいのだが、誰に自分は見てもらえるのだろうかとの感想を頂く。

・30~40代の男女にユマニチュードの話を聞いてもらいたい。

 

 

40代からユマニチュードの技法を学んでいこう

「30代~40代の男女にユマニチュードの話を聞いてもらいたい」という地域リーダーの松原さんのメッセージを聞き、「ここをぜひ伝えよう」と思いました。

 

当サイト(関連サイトを含む)では、将来に備えて、認知機能の検査を40代、50代から受けていきませんかと伝えてきました。
また、将来の認知症罹患に関する中年期のリスク要因についてもお伝えし、中年期からリスクを低減させる取り組み(≒セルフケア)を行うきっかけになればと思ってきました。

 

未来への備えには、これら以外に、家族の誰かを介護することに対する備えも含まれるだろうと思います。

今のこの時代にも役立つ

ウィズコロナの時代と言われるようになりました。
ソーシャルディスタンスという考え方とともに、「人と距離を取りましょう」と言われます。
社会生活においてマスクで口元を隠さなければならない状況です。

 

そういう今のこの時代にも、「ユマニチュードは有効なのではないか」と、地域リーダーの松原さんは言われました。
「マスクで口元を隠しても目を合わせる」、「マスクの下は笑顔でいる」などの具体的方法も合わせて述べられました。

 

このように、ユマニチュードを、ケア技法という以上に、コミュニケーションの技法と一般化・普遍化して捉える視点が、公開講座全体を通して感じられました。

 

認知機能が低下した人と自分との間に絆をつなぐ技法の話は、確かに、普段の人付き合いを見直したり、大切な人との絆を深めたりするきっかけを与えてくれるように思います。(終)

 

<認知症Cafést内関連記事>

1. シリーズ「ユマニチュード」第1回~注目のフランス発認知症ケア~

2. シリーズ「ユマニチュード」第2回~ケアの基本柱『見る』『話しかける』~

3. シリーズ「ユマニチュード」第3回~ケアの基本柱『触れる』『立つ』~

4. 意識のない方とも対話はできる~ユマニチュードの講演会に参加して~

5. フランス発認知症ケア「ユマニチュード」の定量化を試みているレポートから①ーBPSDの削減に寄与ー

6. フランス発認知症ケア「ユマニチュード」の定量化を試みているレポートから②ー「マルチモーダル」とは何か?ー

7. あたまの健康チェック

8. あたまの健康チェックの普及についてー営業推進を担う立場からー

9. 認知症予防は若いころから

10. 予防できる認知症、9つの要因について

11. 百寿者の科学と40代から出来ること

<参考>

A. ユマニチュードとは(2020年6月9日更新)|福岡市ホームページ

B. 出前講座に関するトップページ(2020年8月14日更新)|福岡市ホームページ

C. ケア技法「ユマニチュード」…「優しさ」伝え 笑顔に(著者は竹井陽平氏)|読売新聞オンライン ヨミドクター 2019年11月30日

D. 在宅介護者の負担を減らせ!「ユマニチュード」アプリ登場(著者は伊藤 瑳恵氏)|日経BP Beyond Health 2020.06.17

E. 簡易認知機能スケール あたまの健康チェック|株式会社ミレニア

 

 

自粛生活に自炊はいかが?うつ病や認知症の予防効果も…

 

こんにちは。認知症Cafést編集スタッフのマツです。
なんだか「あっ!!」と言っている間に秋ですね。ここ数日は都内の最低気温も20度以下になりましたが、皆さんのお住いの地域はいかがでしょうか。

料理・自炊と認知症

昨晩は今シーズン初の鍋を作りました。

 

コロナ禍のテレワークで自宅で引きこもっていると、鬱(うつ)になりやすいという報道を良く見かけます。
うつ病の症状の中には認知症に類似したものもあり、認知症と診断されてしまったり、本物の認知症を発症するきっかけにもなったりします(詳細は既報の記事「新型認知症~認知症の入り口になるうつ病性仮性認知症~を参照)

 

私も一人暮らしのテレワーク生活で、ついつい気持ちまで引きこもりがちになってしまったり、能率が下がったりしてしまいます。
そんな中、料理をすると良いと聞き、外食ばかりだった私も最近はなるべく自炊をするようにしています。

料理・自炊の利点

料理をしてわかったことは、普段の仕事とは違う意味で手際を考えなければならないということです。特に我が家のキッチンは自炊に向かない狭いタイプなので、材料を冷蔵庫から出して切る順番、複数のメニューを作る際にどれから取り掛かるべきかなど、ちゃんと考えないと煩雑になってしまいます。
また、手元にある素材で作れる料理、目的の料理を作るために何を買いに行くべきかなど、自炊を続けるためにはいろんなことを考えないといけません。

 

確かにこちらの記事(参考でタイトル等を示しています)では、

料理をすると、脳の働きが活発になると研究でも明らかになっている。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が大阪ガスと共同で調べたところ、安静時にほとんど働いていない脳の前頭前野が「献立を考える」「包丁で切る」「いためる」「盛りつける」のいずれの場面でも活性化することが分かったという。

と書かれていて、脳の働きを活性化させていることが分かります。

 

それゆえ、料理ができて食べるときの達成感や満足感は、(その美味しさにかかわらず)外食や出前で食べるときの比ではありません。
以前とあるセミナーに参加したとき、うつ病を予防するには自分にプラスな感情(ポジティブな感情)を感じ続けることが大事だという話を聞いたことがありますが、確かにそうだと思えるほど、自炊を続けていると気分がすっきりとしてきます。

まとめ

自炊を続けると聞くと面倒だと思う人が多いと思いますが、私も毎食自炊しているわけではありません。冷静に考えてみると、外食や出前と半々かもしれません。
それでも、定期的に料理を続けていると気分が良いし、きっとうつ病や認知症の予防にもなるのではないかと感じました。

 

 

 

地域包括支援センターや勤務先に介護の相談をしてみようー「となりのかいご」のセミナーに参加してー

注:画像はpeatix当該イベントのページより一部を画像化(プリントスクリーン)したものです。

 

昨夜、こちらのオンラインセミナーを受講しました。
NPO法人「となりのかいご」の代表理事、川内潤さんのお話を聞きました。

川内潤さんの経歴

このイベントページに掲載されている川内さんの経歴は以下の通りです。

1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。2014年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。

 

NPO法人「となりのかいご」

川内さんが代表理事を務めるNPO法人「となりのかいご」は、介護に一生懸命だからこそ虐待してしまうプロセスを断ち切るため、介護支援コンサルティング、研修事業を、大企業、中小企業、行政団体の社員に提供している団体です。

セミナーのタイトルとテーマ

セミナーのタイトルは、上の画像内に示されていますが、
「コロナで、高齢の親と離れていても仕事を辞めずに介護をする方法」です。
「介護と仕事の両立」がテーマでした。
川内さんは、この両立支援の領域で企業から声がかかって、企業内のセミナー、企業内での個別相談の実績を積んでいる(現在進行形で)ということです。「介護と仕事の両立支援」が広く社会的なニーズとして存在しているということではないでしょうか。

人に話す、相談することの大切さ

今回のセミナーで川内さんは、介護と仕事の両立のため、言い換えれば、仕事を辞めずに介護をしていくために、人に話す、相談することの大切さを口酸っぱく強調されていました。

人に話す、相談することのポイント

参加者に配布された資料の中での

 

  • 「私が相談していいのかな」という人こそ早めに相談したほうがいい
  • 早めに相談すれば、介護体制をつくる いい準備ができる

 

これらの言葉にポイントは集約されています。

介護についての相談先の実態

介護についての相談先の実態について川内さんが紹介されていた調査結果に注目しました。

 

三菱UFJリサーチ&コンサルティング会社が、20131に厚生労働省から受託して行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」の結果です。

注:後の参考にて関連ページへのリンクを貼っておきます

調査方法

・インターネット上でのモニター調査

 

調査対象

・40歳代~50歳代の就労者(正社員)
→男性1,000人、女性1,000人 計2,000人
・40歳代~50歳代の介護をきっかけに離職した者(離職前は正社員)
→男性・女性 計1,000人
(有効回答は994人)

 

介護についての相談先の質問に対する回答者

・就労者(正社員)のうち、現在介護を担っていると回答した251名(男性144名、女性107名)

・介護をきっかけに離職した994名

 

介護についての相談先の結果(複数回答)

 

注1(表中の「*1」) MSWは病院の医療ソーシャルワーカーのことです。

注2  離職者の回答は離職する前の状況について尋ねたものです。

注3 このグラフはカフェスト編集スタッフが作成しました。

コメント

勤務先に相談する人が少ないのではないか?

この表を見て少しショックであったのは、勤務先に相談している人が少ないという点です。職場の理解がなければ介護と仕事の両立は難しいのではないでしょうか。
ただ、2013年1月時点の結果ですので、
現在、同様の調査があれば、勤務先に相談している人が増えていることを期待したいと思います。

就労者と離職者の違い

セミナーでは上記の介護についての相談先についての調査結果が紹介されましたが、関心を持ちまして、もとの調査と結果に当たってみたところ、さらに、最も助けてもらった人についても質問しておりましたので、その結果をこちらに記したいと思います。
相談先についての質問は複数回答でしたが、最も助けてもらった人については単数回答です。

 

■就労者251名(現在介護をしている):最も助けてもらった人

1位 ケアマネージャー 31.1%
2位 家族・親族 23.9%
3位 いない 17.1%

 

■離職者994名(介護をきっかけに退職):最も助けてもらった人

1位 家族・親族 30.1%
2位 ケアマネージャー 18.0%
3位 いない 17.1%

 

介護についての相談先や、最も助けてもらった人の回答から、仮説として見えてくることは、

 

・ケアマネージャーを頼れるかどうか

(あるいは)

・この人は信頼できると思えるケアマネージャーに出会えるかどうか

 

これらが、「介護をしながらの就労継続」と、「介護による離職」とを分ける要因となっている可能性です。

地域包括支援センターに相談してみよう

今回のセミナーでは、川内さんは、さきほどの介護についての相談先の結果をもとに、
ケアマネや地域包括支援センターにもっと相談をしようという立場でお話をされていました。

 

地域包括支援センターへの相談に関して、「行うことリスト」も示されました。

 

〇探す
「地域包括支援センター(及び)親が住んでいる町名」(2語で検索)で検索

 

〇相談する
訪問の必要なし!まずは昼休みに電話でOK

 

〇地域の情報も調べる
⾃分での情報収集も大切

 

 

このように具体的に示してくださったのは、とても分かりやすく思います。

 

また、参加者との質疑応答の中で、「ケアマネジャーから提案されたプランについて疑問があったり、ご自分の方針に沿っていないと感じたりした場合は、地域包括支援センターにも相談してみてください」という趣旨の見解を述べられていたことは印象に残りました。
そうすれば、疑問が解決したり、代替案が得られたりする可能性が増すと思います。

終わりに

参加者に配布された資料の中での、地域包括支援センターについての説明ー地域の高齢者を主に対象とした保健福祉に関する総合的な相談窓口ーとともに、「地域包括支援センターに相談してみよう」という川内さんのメッセージをカフェストの読者の皆様にお届けします。
そして、「勤務先にも相談してみよう」というメッセージを追加してみたく思っています。

(終)

 

(文:星野 周也)

 

介護施設とWi-Fi

 

 

こんにちは、認知症Cafést Online編集スタッフのUです。

介護業界でもICT機器の導入が早急な課題

新型コロナウイルスの影響で介護業界でもICT機器の導入が早急な課題となっています。
介護現場では手書きの記録類や熟練スタッフの経験値に頼った手法が主流となっており、人手不足な昨今、様々なセンサーやICT機器の導入が必要不可欠なことは周知の事実です。
そこでそれらの機器を操作するためのタブレットやスマートフォンが必要になり、さらに通信環境としてWi-Fiが必要になります。

 

介護施設にも早急にWi-Fi導入を!

何だか、まどろっこしい話になってしまいましたが、ほとんどの介護施設にはWi-Fiがないのです。
個人情報保護の問題や費用面など様々な事情があると考えられますが、新しい機器を導入する際の障壁となっているのが現状です。

 

新型コロナウイルスの影響で家族との面会も制限される中、早急にWi-Fiを導入し、せめてタブレットなどでオンラインによる面会ができたらいいなと思います。

さいごにー通信と通話は違うのに(笑)ー

我が家もWi-Fiを導入しておりますが、娘がスマートフォンを使い始めたころの外出時に、「ギガがないから連絡できなかった」との事。いわゆるパケット通信制限ですが・・・⁉
通信と通話は違うと思うんですけど…(笑)。
もはや娘にとってスマートフォンは電話機ではないようです。

(終)

 

 

テレイグジスタンスロボットの未来に注目

 

こんにちは、編集スタッフのmimiです。

 

近年進化が目覚ましいロボット技術「テレイグジスタンス」
この技術が、日本のこの先100年の課題である少子高齢化による労働力不足の解消、働き方改革、共生社会の実現に多大な貢献をするのではないかと考えています。

テレイグジスタンスロボットとは何か

簡単に言うと、遠隔操作できるロボット手術ロボット“ダ・ヴィンチ”がその代表例ですが、従来のロボットはとても特殊な環境下でのみ利用可能なものでした。

しかしながら、ロボット技術、インターネット環境が普及・進化したことで、より身近な場所でテレイグジスタンスロボットを使うことができる環境が整ってきました。

 

テレイグジスタンスロボットの開発を手掛けるTelexistence(株)のCOO 彦坂雄一郎氏はこのように述べています。

「人間の身体能力の瞬間移動を可能にする技術」です。遠隔地にいるロボットが自分のアバター(分身)となり、まるで自分が現地にいるかのように、物を見たり、感じたり、動かしたりすることができます。

 

テレイグジスタンスは、1980年に東京大学名誉教授で弊社会長の舘暲(たち・すすむ)先生が考案したものです。私たちは世界を“目”で見ているようでいて、実際は“脳”で物事を見ています。ですから、脳内で世界を再構成するために必要なデータを与えることができれば、あたかも“自分で体験している”というような感覚、仮想現実での体験を作り出せると考えたんです。

出典:5Gが実現する次世代テクノロジー「テレイグジスタンス」とは? | BAE

テレイグジスタンスロボットが社会に与える影響

自分なりにですが、働き手/産業/サービスの受け手それぞれにとってどんなWinがあるのかを考えてみたところ、いわゆる三方よしな技術だと感じました。

三方よしな技術

■働き手にとってのWin:
障害者や環境(子育て中、介護中)に制限のある人の就労機会の増加(場所にとらわれない働き方の選択肢が広がる)、生きがいづくり
■産業にとってのWin:
人手不足の解消、持続可能なサービス提供
■サービスの受け手にとってのWin:
安定したサービスを受け続けられる、ニーズに合ったサービスを受けやすくなる、質の高いサービスを受ける機会を得やすくなる(手術ロボットなど)

ロボットを操る人は、世界各地のどこからでもアクセスできる

従来のリモートワークは、基本オンライン上で完結するため、PCで完結する頭脳労働や事務作業に限られていましたが、テレイグジスタンスロボットは、オンラインのものがオフラインに作用することができる~オンラインでつながった先の空間にある物質に働きかけることができる、というのが最大の特長です。

 

これにより、今までは“その空間に人が存在しないとできなかった”作業例えばカフェの店員、掃除、荷物の積み下ろしなどの作業~が“その空間に人が存在しなくてもできる”作業に変化します。ロボットを操る人は、世界各地のどこからでもアクセスでき、例えば沖縄で作業が完了したらすぐに数千キロ離れた北海道で働く、というようなことも可能になります。

 

次に、具体的なロボット事例を2例ご紹介します。

ロボット紹介1:テレイグジスタンスロボットでコンビニの商品陳列作業

コンビニ大手のファミリーマートが、今夏Telexistence(株)と共同でコンビニの商品陳列業務の実証実験を行っているそうです。

 

都心のコンビニ従業員は今や日本人のほうが少ない印象ですし、全国的に常に人手不足が叫ばれており、これまでのサービスを継続するには限界があります。セルフレジに続きテレイグジスタンス技術が、少しでも“その店舗に常に存在する必要のある人数”を減らし、人手不足の解消とサービス継続への鍵となるかもしれません。

参考:コンビニの商品陳列業務は遠隔作業ロボットで Telexistenceが小売店舗向けに「Model-T」を開発 今夏に都内のファミリーマートで実証実験 | ロボスタ

 

ロボット紹介2~誰もが制限なく社会参加できる「分身ロボット・OriHime」

オリィ研究所

子育てや単身赴任、入院など距離や身体的問題によって行きたいところに 行けない人のもう一つの身体、それが「OriHime」です。 「誰かの役に立つことをあきらめない」 「寝たきりで声を失っても会話できる」 「今の自分に合った働き方ができる」 OriHimeは、距離も障害も昨日までの常識も乗り越えるための分身ロボットです。

参考:分身ロボット「Orihime」|オリィ研究所

 

研究開発をおこなうオリィ研究所は、「孤独の解消」というテーマで人間サイズや手のひらサイズの分身ロボットの開発・実用化をおこなってきました。

人間サイズの分身ロボット

数年前より“あらゆる人たちに、社会参加、仲間たちと働く自由を。”というコンセプトで、
人間サイズの分身ロボットOriHime-Dがウエイターをつとめる「分身ロボットカフェDAWN」を実験的に開設し、2020年、「アバターギルド」という形で障がい者の就労支援の枠組みができました。

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)、SMA(脊髄性筋萎縮症)など、難病や肢体不自由などの障害で、ベッド上から動くことができないけれども体の一部の筋肉は動かせる、という方々が、視線入力やマウスポインタ等でPCから遠隔でロボットを操作し働いています。カフェ店員の他、企業の受付、販売員などとして全国各地で活躍中だそうです。

手のひらサイズのOriHimeロボット

そのほか、手のひらサイズのOriHimeロボットで

 

  • モスバーガーにおける「ゆっくりレジ」の実験導入
  • 川田テクノロジーズのロボットと協働による「テレバリスタプロジェクト」

 

など他企業との連携に活発に取り組んでおり、今後も注目の企業です。

まとめ

コロナ禍で働き方、社会の在り方が大幅に見直しを図られていますが、テレイグジスタンスロボットの実用化が進むことで、さらに働き方が変化し、複数の社会課題が解決できるかもしれない、そんな明るい予感を感じさせます。
10年、20年後の社会がどう変わるのか、とても楽しみになる注目の技術です。

(終)